『マインド・パレスの逆襲 〜精神科医は姑の「呪い」を解かない〜』

『マインド・パレスの逆襲 〜精神科医は姑の「呪い」を解かない〜』

合鍵で開く音は
祈りではなく
侵入だった

「あなたのため」
その言葉はいつも
刃の形をしている

静かに置かれたゴミ袋の中で
わたしの記憶が
名前もなく捨てられていた

怒りは簡単だ
叫べばいい
壊せばいい

でもそれでは
あなたの物語になる

だからわたしは
沈黙を選ぶ

あなたの言葉を
そのまま返す
温度もつけずに

鏡に向かって
怒り続ける人を
見たことがあるだろうか

わたしは知っている
それがどんなに
消耗することかを

優しさは
万能ではない

理解は
赦しではない

境界線は
愛よりも先に引かれるべきものだ

あなたは言う
「家族でしょう?」

わたしは答える
家族だからこそ
鍵は閉めるのだと

あなたは泣く
「あなたのためだったのに」

わたしは知っている
その“ため”の中に
わたしはいなかった

診察室ではない場所で
わたしはあなたを診ない

名前もつけない
救いもしない

ただ
わたしの世界から
あなたを外すだけ

マインド・パレスは
他人の土足を許さない

そこにあるのは
静かな秩序と
選び直された記憶

最後の通知が光る

「ごめんなさい」

その続きを
知る必要はもうない

指先ひとつで
物語を終わらせる

赦しではない
復讐でもない

ただの回復だ

わたしの人生が
わたしのもとへ
戻ってくる音がする



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