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三章 ケリュネオン参戦編
アクア、運命の出会いをする
単行本六巻収録箇所のダイジェストその2になります。
********************************************
街が浮ついている。
学園祭という一大イベントを前にして、夏休みが終わったロッツガルドは休み中とは違う意味でいつもと異なる雰囲気の中にあった。
私こと森鬼アクアもまた、その雰囲気の中、皆と一緒に学園祭に向けた準備を粛々と進めている。
といっても、私はクズノハ商会の店員であり、準備もまた学園祭でこの街を訪れる訪問客や財布の紐が緩んだ学園生に向けたものだ。
正直、いつもよりも忙しくなるのはあまり嬉しいとは思わなかったけれど、若様は臨時ボーナスとして私達にとっての至高の果実を配布すると言って下さった。
やる気は十分。
まだまだ亜空でも十分に流通していないアレは、それだけの価値がある。
相棒のエリスとともに全力を尽くす所存だ。
森鬼にとってあの果実は等しく憧れの存在であり、そこは変わり者のエリスも他の森鬼となんら変わらない。
「アクア、どうしてカットフルーツの中にはバナナがないんだろう。ちなみにアレとは言うまでもなく黄金色のブーメラン、バナナ様のことだぞ」
そのエリスが商品である果物のカップを手に呟いた。
意味不明な説明を添えて。
「……忘れたの、エリス? 貴女が、そこからバナナだけ器用に抜き出して他の果物を詰め変えたからでしょ」
「……本当に、何故あれがばれたのか。大体重量的には何の問題もないどころか客はおおいに得をする仕様だというのに」
「客が得をするってことは、つまり商会は薄利になるってことでしょ!」
「しかし若は大して利益にこだわってない。大体ヒューマンなんぞにバナナはもったいない。奴らは林檎でもかじってればいい」
「もったいないというのには賛成だけど……」
「アクアもばっちり食べたくせに。言っておくが同罪だぞ」
「ぐ……」
「ああ、バナナ。臨時ボーナス、先払いにならないかな。若しくはカットフルーツの中に復活しないかな。今度は一片だけは残す事を検討してもいいと思ってるのに」
「ぬ、抜くのは確定なんだ。ところでエリス。貴女棚の陳列の変更と外回りの仕事は」
「もう終わった。今は新人のエルドワ君が棚を増やしてくれるのを待ってるとこ。ついでに常連が何人か懲りずに来てたから接客もしてきた」
……。
言ってることは滅茶苦茶なのに、仕事は本当に手早い。
しかも何故か接客でも苦情があまりない。
相性が悪そうな客は私にばんばん流してくるというのもあるけど、凄いのも確か。
私も真面目に全力でやってるつもりだけど、気付けばエリスは隣か一歩先にいる。
以前は理不尽に思えた事もあったけど、今はもう慣れた。
これがエリスなんだと。
時に悪気がなく、時に悪気しかない娘だけど、一緒に育って一緒にあの地獄のキャンプを乗り越えた仲でもある。
紛れもなく相棒だ。
ただ、この間若様に頼まれて学生の護衛についた事といい、何故かエリスは美味しい思いをよくしているのも確か。
あの時の報酬もバナナだったというし、何とも……。
「ん。エリスのファンが来たみたいよ」
若様の講義を受けている生徒たちだ。
夏休みといい、今といい、最近よく来るようになった。
エリスの話を聞きたいみたいだ。
先日レベル上げの最中に亜竜に遭遇した所をエリスに救われて以来、餌付けされた獣のごとく懐いている。
巴様とコモエ姫の悪夢のキャンプで鍛えられている私達としては、優しく手ほどきを受けている学生達の姿はひたすらぬるく見えて仕方ないが、まあ世間一般としては彼らの講義程度が普通なのかもしれない。
識様もたまにしか重傷を癒やす回復魔術を使っておられないと聞くしね。
「じきに商品もはけるし、武勇伝でも聞かせてやろうかのう」
「巴様の真似? 知らないわよ」
「若も識様も神殿に呼び出されてお留守。今は私達が商会のア・タ・マ♪」
「……他の客の迷惑にならないようにね」
どうせ言っても聞かない。
それに先日神殿から使いが来て、今日は若様も識様も女神の神殿に出向いている。
なんでもうちで扱っている傷薬と解毒薬の製法を教えに行くらしい。
……調べるまでもなく思惑は透けて見える。
が、あちらの狙いも企みも全て無駄に終わるのもまた明らかに見えている。
あの薬をまともな成功率で調合できる人材にかかる費用、荒野から取り寄せる原材料の価格、代替品を近場で調達するにしてもそれで増える工程で失敗率も上がってさらにコストが嵩む。
同じ物は作れるだろうが値段は真似出来ない。
ちょっとした嫌がらせ程度の効果が精々だろう。
この間神殿のトップが不慮の事故と天罰で亡くなった影響で、内部で権力闘争でも起きているんだろうか。
それとも、学園祭で神殿のトップもロッツガルドに来るから点数稼ぎ?
相手が若様だと、空回りは確定だろうし、ご苦労な事だ。
「さて、今日はもう忙しくもならないだろうけど、エリスの分まで働かないと」
この選択が、数少ない私の美味しい経験に繋がるとは、この時の私は夢にも思わなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ふおおおお……!
柄にもない心底からの叫びがとめどなくこみ上げてくる。
喉を潤す未知なる美味。
基本はミルクの白、されどわずかに琥珀色をまとい、黄色みも帯びている。
よく冷え、とろりとした食感の液体が舌に絡み喉を通る度に恍惚とした幸せが顔を否応なく笑顔にさせる。
こと戦闘において私は若様を尊敬している。
だが、まさか。
調理においても尊敬することになるとは。
バナナは結局、そのまま食する事が最高だと私は常々感じていた。
同胞が考え出す色々な料理やデザートは、勿論美味しくはあるが素材そのままの味に勝るものはなかった。
なのに……。
このバナナミルクなるデザートは……!
元となるバナナの味を活かしながら、同時にミルクの良さも活かしている。
互いに相乗効果を生む組み合わせ、エリスに言わせるのならマリアージュと叫んだだろう。
良い組み合わせを指す言葉なんだと以前教えてくれた。
エリス語だ。
何故か若様もわかることが多い謎の言葉。
果物と、獣の乳。
流石は若様だ。
途轍もない発想。
これがあれば森鬼は後千年は戦える。
森鬼で最初にこの味を経験出来た事。
最高の一日だった。
後でエリスにも分けてあげたけど、彼女も私と同じ重度の恍惚状態になっていた。
元はといえば、神殿から戻られたお二人にエリスと学生の無駄話を密告したのがコレに出会った切っ掛けだった。
一時的にエリスから恨まれはした。
でも今はわだかまりもなくにこやかに互いにバナミルに出会った幸福を喜べるのだ。
素晴らしい。
後日、学園祭初日のお疲れ様会とかで若様と識様行きつけのお店であるゴテツでクズノハ商会の食事会をした時にも若様に拝み倒して持ち込ませてもらった。
実に幸せだ。
珍しくそこでは巴様と澪様までお酒に酔っていらっしゃった。
私としては鍋を皆でつつきながら傍らにはバナミルがある。
それだけで十分だったけど。
学園祭、悪くない。
年に一度といわず半年に一回くらいあってもいいかも。
……にしても、ちょっと混沌としてきた。
ゴテツの奥にある個室を借り切っての今日の宴。
巴様と澪様と識様がそれぞれ酔っ払いになっているせいもあって相当なカオスが渦巻いている。
あ、若様がこちらに避難してきた。
「や、楽しんでるかな、アクアは」
「勿論です、若様。こんな宴を開いて頂けて……」
「ああ、いいよいいよそういうのは。楽しんでくれてればね。ただ、その。鍋にバナナミルクはどう?」
なにやら複雑な表情で私の手にあるグラスをみつめる若様。
どうもなにも、最高です。
「最高に合います! 多分、食事にはお茶よりも合うんじゃないかと!」
「……ん、アクアも酔っ払うんだってことはわかった。でエリスは何してるの? 焼いた肉とグラスを交互に見つめて唸ってるけど」
ええと。
今夜はまだあまりお酒は飲んでない。
若様は何故そんなことを言うんだろう。
エルドワは結構なペースで飲んでいるけど、私とエリスはまだあまりお酒に手を伸ばしていない。
「どうして塩と香辛料をきかせた肉と甘い飲み物がこんなにも合うのか不思議がっているようです」
「……もうここもアルコールの海に沈んでたか。じゃ、そういうことで。安全地帯はどこだよ」
「あ、若様?」
天井を見つめた若様はそう言って別の場所に移動していった。
そういえば、今日客の一人から店の看板に書かれた文字についてなにやら聞かれたんだった。
特にトラブルにもならなかったから報告するまでもない事だけど……ちょっと気になっていたんだった。
いずれ機会を見て若様にお伝えしておこう。
確かあれは若様の提案で書かれたものだったから、客には主の指示によるものです、といった内容で返答した。
葛葉と書いてクズノハ、と読むんだっけ。
「アクア!」
「っ、なにエリス」
「気付いた」
「何に」
「学園祭はまだ始まったばかり」
「うん」
「つまり若様から新たなレシピがまた生まれる可能性がある!」
「!?」
「もし、コレと並ぶものが登場するなら、これは森鬼にとって革命」
「……そうね。確かに」
「これは一応皆にも伝えておくべき」
「エリス、冴えてる」
「任せて」
本当にそんなものが存在するのか。
半信半疑ではあったものの。
あの若様だけに期待せざるを得ない。
なんにせよ、明日からに向けて力漲る食事会だ。
来るがいい、客どもよ。
最終日まで見事裁ききってみせよう。
私は人知れずそんな決心を固めたのだった。
************************************************
森鬼がバナナミルクに続いて出会う衝撃のレシピは「まる○とバナナ」ならぬ「マルゴットバナーヌ」です。
単行本の発売は5/21頃になる予定です。よろしくお願い致します。
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街が浮ついている。
学園祭という一大イベントを前にして、夏休みが終わったロッツガルドは休み中とは違う意味でいつもと異なる雰囲気の中にあった。
私こと森鬼アクアもまた、その雰囲気の中、皆と一緒に学園祭に向けた準備を粛々と進めている。
といっても、私はクズノハ商会の店員であり、準備もまた学園祭でこの街を訪れる訪問客や財布の紐が緩んだ学園生に向けたものだ。
正直、いつもよりも忙しくなるのはあまり嬉しいとは思わなかったけれど、若様は臨時ボーナスとして私達にとっての至高の果実を配布すると言って下さった。
やる気は十分。
まだまだ亜空でも十分に流通していないアレは、それだけの価値がある。
相棒のエリスとともに全力を尽くす所存だ。
森鬼にとってあの果実は等しく憧れの存在であり、そこは変わり者のエリスも他の森鬼となんら変わらない。
「アクア、どうしてカットフルーツの中にはバナナがないんだろう。ちなみにアレとは言うまでもなく黄金色のブーメラン、バナナ様のことだぞ」
そのエリスが商品である果物のカップを手に呟いた。
意味不明な説明を添えて。
「……忘れたの、エリス? 貴女が、そこからバナナだけ器用に抜き出して他の果物を詰め変えたからでしょ」
「……本当に、何故あれがばれたのか。大体重量的には何の問題もないどころか客はおおいに得をする仕様だというのに」
「客が得をするってことは、つまり商会は薄利になるってことでしょ!」
「しかし若は大して利益にこだわってない。大体ヒューマンなんぞにバナナはもったいない。奴らは林檎でもかじってればいい」
「もったいないというのには賛成だけど……」
「アクアもばっちり食べたくせに。言っておくが同罪だぞ」
「ぐ……」
「ああ、バナナ。臨時ボーナス、先払いにならないかな。若しくはカットフルーツの中に復活しないかな。今度は一片だけは残す事を検討してもいいと思ってるのに」
「ぬ、抜くのは確定なんだ。ところでエリス。貴女棚の陳列の変更と外回りの仕事は」
「もう終わった。今は新人のエルドワ君が棚を増やしてくれるのを待ってるとこ。ついでに常連が何人か懲りずに来てたから接客もしてきた」
……。
言ってることは滅茶苦茶なのに、仕事は本当に手早い。
しかも何故か接客でも苦情があまりない。
相性が悪そうな客は私にばんばん流してくるというのもあるけど、凄いのも確か。
私も真面目に全力でやってるつもりだけど、気付けばエリスは隣か一歩先にいる。
以前は理不尽に思えた事もあったけど、今はもう慣れた。
これがエリスなんだと。
時に悪気がなく、時に悪気しかない娘だけど、一緒に育って一緒にあの地獄のキャンプを乗り越えた仲でもある。
紛れもなく相棒だ。
ただ、この間若様に頼まれて学生の護衛についた事といい、何故かエリスは美味しい思いをよくしているのも確か。
あの時の報酬もバナナだったというし、何とも……。
「ん。エリスのファンが来たみたいよ」
若様の講義を受けている生徒たちだ。
夏休みといい、今といい、最近よく来るようになった。
エリスの話を聞きたいみたいだ。
先日レベル上げの最中に亜竜に遭遇した所をエリスに救われて以来、餌付けされた獣のごとく懐いている。
巴様とコモエ姫の悪夢のキャンプで鍛えられている私達としては、優しく手ほどきを受けている学生達の姿はひたすらぬるく見えて仕方ないが、まあ世間一般としては彼らの講義程度が普通なのかもしれない。
識様もたまにしか重傷を癒やす回復魔術を使っておられないと聞くしね。
「じきに商品もはけるし、武勇伝でも聞かせてやろうかのう」
「巴様の真似? 知らないわよ」
「若も識様も神殿に呼び出されてお留守。今は私達が商会のア・タ・マ♪」
「……他の客の迷惑にならないようにね」
どうせ言っても聞かない。
それに先日神殿から使いが来て、今日は若様も識様も女神の神殿に出向いている。
なんでもうちで扱っている傷薬と解毒薬の製法を教えに行くらしい。
……調べるまでもなく思惑は透けて見える。
が、あちらの狙いも企みも全て無駄に終わるのもまた明らかに見えている。
あの薬をまともな成功率で調合できる人材にかかる費用、荒野から取り寄せる原材料の価格、代替品を近場で調達するにしてもそれで増える工程で失敗率も上がってさらにコストが嵩む。
同じ物は作れるだろうが値段は真似出来ない。
ちょっとした嫌がらせ程度の効果が精々だろう。
この間神殿のトップが不慮の事故と天罰で亡くなった影響で、内部で権力闘争でも起きているんだろうか。
それとも、学園祭で神殿のトップもロッツガルドに来るから点数稼ぎ?
相手が若様だと、空回りは確定だろうし、ご苦労な事だ。
「さて、今日はもう忙しくもならないだろうけど、エリスの分まで働かないと」
この選択が、数少ない私の美味しい経験に繋がるとは、この時の私は夢にも思わなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ふおおおお……!
柄にもない心底からの叫びがとめどなくこみ上げてくる。
喉を潤す未知なる美味。
基本はミルクの白、されどわずかに琥珀色をまとい、黄色みも帯びている。
よく冷え、とろりとした食感の液体が舌に絡み喉を通る度に恍惚とした幸せが顔を否応なく笑顔にさせる。
こと戦闘において私は若様を尊敬している。
だが、まさか。
調理においても尊敬することになるとは。
バナナは結局、そのまま食する事が最高だと私は常々感じていた。
同胞が考え出す色々な料理やデザートは、勿論美味しくはあるが素材そのままの味に勝るものはなかった。
なのに……。
このバナナミルクなるデザートは……!
元となるバナナの味を活かしながら、同時にミルクの良さも活かしている。
互いに相乗効果を生む組み合わせ、エリスに言わせるのならマリアージュと叫んだだろう。
良い組み合わせを指す言葉なんだと以前教えてくれた。
エリス語だ。
何故か若様もわかることが多い謎の言葉。
果物と、獣の乳。
流石は若様だ。
途轍もない発想。
これがあれば森鬼は後千年は戦える。
森鬼で最初にこの味を経験出来た事。
最高の一日だった。
後でエリスにも分けてあげたけど、彼女も私と同じ重度の恍惚状態になっていた。
元はといえば、神殿から戻られたお二人にエリスと学生の無駄話を密告したのがコレに出会った切っ掛けだった。
一時的にエリスから恨まれはした。
でも今はわだかまりもなくにこやかに互いにバナミルに出会った幸福を喜べるのだ。
素晴らしい。
後日、学園祭初日のお疲れ様会とかで若様と識様行きつけのお店であるゴテツでクズノハ商会の食事会をした時にも若様に拝み倒して持ち込ませてもらった。
実に幸せだ。
珍しくそこでは巴様と澪様までお酒に酔っていらっしゃった。
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それだけで十分だったけど。
学園祭、悪くない。
年に一度といわず半年に一回くらいあってもいいかも。
……にしても、ちょっと混沌としてきた。
ゴテツの奥にある個室を借り切っての今日の宴。
巴様と澪様と識様がそれぞれ酔っ払いになっているせいもあって相当なカオスが渦巻いている。
あ、若様がこちらに避難してきた。
「や、楽しんでるかな、アクアは」
「勿論です、若様。こんな宴を開いて頂けて……」
「ああ、いいよいいよそういうのは。楽しんでくれてればね。ただ、その。鍋にバナナミルクはどう?」
なにやら複雑な表情で私の手にあるグラスをみつめる若様。
どうもなにも、最高です。
「最高に合います! 多分、食事にはお茶よりも合うんじゃないかと!」
「……ん、アクアも酔っ払うんだってことはわかった。でエリスは何してるの? 焼いた肉とグラスを交互に見つめて唸ってるけど」
ええと。
今夜はまだあまりお酒は飲んでない。
若様は何故そんなことを言うんだろう。
エルドワは結構なペースで飲んでいるけど、私とエリスはまだあまりお酒に手を伸ばしていない。
「どうして塩と香辛料をきかせた肉と甘い飲み物がこんなにも合うのか不思議がっているようです」
「……もうここもアルコールの海に沈んでたか。じゃ、そういうことで。安全地帯はどこだよ」
「あ、若様?」
天井を見つめた若様はそう言って別の場所に移動していった。
そういえば、今日客の一人から店の看板に書かれた文字についてなにやら聞かれたんだった。
特にトラブルにもならなかったから報告するまでもない事だけど……ちょっと気になっていたんだった。
いずれ機会を見て若様にお伝えしておこう。
確かあれは若様の提案で書かれたものだったから、客には主の指示によるものです、といった内容で返答した。
葛葉と書いてクズノハ、と読むんだっけ。
「アクア!」
「っ、なにエリス」
「気付いた」
「何に」
「学園祭はまだ始まったばかり」
「うん」
「つまり若様から新たなレシピがまた生まれる可能性がある!」
「!?」
「もし、コレと並ぶものが登場するなら、これは森鬼にとって革命」
「……そうね。確かに」
「これは一応皆にも伝えておくべき」
「エリス、冴えてる」
「任せて」
本当にそんなものが存在するのか。
半信半疑ではあったものの。
あの若様だけに期待せざるを得ない。
なんにせよ、明日からに向けて力漲る食事会だ。
来るがいい、客どもよ。
最終日まで見事裁ききってみせよう。
私は人知れずそんな決心を固めたのだった。
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森鬼がバナナミルクに続いて出会う衝撃のレシピは「まる○とバナナ」ならぬ「マルゴットバナーヌ」です。
単行本の発売は5/21頃になる予定です。よろしくお願い致します。
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