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アニラジを聴いて笑ってる僕らは、誰かが起こした人身事故のニュースに泣いたりもする。(上り線)
11、アニソンではよくあること
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「……その気持ち悪い人形はちゃんと神社とかでお焚きあげしたんだろうな?」
「そこですか!?」
親友の思い出話を聞き終えた柿内君は、かなり最初の方に出てきたどうでもいい所にツッコむ。
「たぶん、したと思うけど」
「そうか、ならいい。で、その時聴いた曲が」
「そう、この曲。………すごいよ。何回も探してそのたびに諦めてたのに」
言って響季がマウスで再生ボタンを押すと、流れてきた曲が脳内にあった歌詞とメロディをするするとなぞっていく。
今までどこに貼り付けてたのかもわからない、メモ書きのようなそれらを。
そうそう、こんな歌だった、こんな歌詞だった、サビはこうだったと身体が覚えていた。
痺れるほどの疾走感ある歌声とそれに寄り添うほの暗い歌声。どこか90年代を彷彿とさせる、景気が良くも退廃的なメロディ。
間違いない、ゾワゾワと細胞が思い出す。
一度聴いただけなのに身体はしっかり覚えていた。
「よかったぁ。スッキリしたぁ」
フルサイズで聴き終わると、ずっと止めていた息をはあっと吐きながら響季がパソコンチェアに背中を預ける。
ずっとわからなかった曲名が判明した。そこには言いようのない爽快感があった。
そして、今回に限っては粋なおまけもあった。
ずっと探していた曲。その歌い手二人が、今のDOLCE GARDENのうちの二人らしい。
動画の説明を見ると、今はCRISPY―naとGURASSEとして活動しているようだ。
歌い方などは少し違うが、言われてみれば歌声の中に感じる魂は通じるものがある。
「すごい。なにこれ」
火照る頬を両手で包み込みながら、響季が言う。
過去と今、その点と点が繋がった。
アニメソングという、日本で産まれた小さな広い世界で。
その中の一曲を海外のネットラジオ局を経由して聴き、ようやくまた巡り会えたのだ。
振り返ってみれば手のひらで踊らされていたような、そして曲に惹かれたのは運命だったのだと思わされる事実。
この曲に携わった人を調べたら、自分が好きなあの曲も歌った人でした。
それはよくあることだった。
好きが芋づる式に、あるいは数珠つなぎのように連鎖する。
狭く広いアニソンではそれが顕著に起きる。それがファンには嬉しくてたまらない。
更に長きに渡って自分のハートを鷲掴みにしてきた人達のライブが見れるという。
我が地元で。無料で。
「すごい…。今日という日を記念日にしよう。毎年アクアパッツァとか作って食べよう。めんどくさそうだけど」
「そうか。原作クラッシュで」
ぞくぞくと興奮に打ち震えている響季の横で、カチカチとマウスを操りながら柿内君が呟く。
別ウインドウを開いて調べてみると、オレンジコーギー・ゴーホームは元々オリジナルアニメ作品だったが、それを実写化する際だいぶ原作をこねくり回したらしい。
まったく別物といえるほどの、それタイトル一緒なだけで全然別もんの作品じゃん、いや別もんって捉えたら悪くないけどさあ、的な。
おそらくアニメ作品の実写版ということで、海外ネットラジオでもアニソンにカテゴライズされていたのだろう。
だが作品の評価からするとあまり皆が触れたくないゆえ、関わった歌手ごとおそらく一緒に闇に。しかも主題歌ではなく挿入歌だった。
結果、響季はなかなか辿りつけなかったのかもしれない。
「なるほどだからか」
自分が覚えていなかった理由と、親友が辿り着くまでに随分時間を要した理由について推理し、柿内君が一人納得するが、
「カッキー!一緒に行こうよライブ!」
興奮が抑えられない響季が柿内君の肩を掴んでがくがく揺さぶる。
「だから行けないんだって!」
「あ…、そっか。さっき」
推理はさておき、彼はライブへは行けない。
先程少年があげた悲痛な叫びを響季が思い出す。
「なんかあんの?」
「ああ、うん…。まあな」
理由を訊いてみるが柿内君は言いづらそうにする。
言いたくないなら別にいいけど、という視線を響季は送るが、
「……雑誌の、座談会がな」
ぼそぼそと彼は喋り出した。
結局のところ、彼も言いたくて仕方なかった。どうしても行けないその理由を。
たった一人の親友に少し自慢がしたかった。
「そこですか!?」
親友の思い出話を聞き終えた柿内君は、かなり最初の方に出てきたどうでもいい所にツッコむ。
「たぶん、したと思うけど」
「そうか、ならいい。で、その時聴いた曲が」
「そう、この曲。………すごいよ。何回も探してそのたびに諦めてたのに」
言って響季がマウスで再生ボタンを押すと、流れてきた曲が脳内にあった歌詞とメロディをするするとなぞっていく。
今までどこに貼り付けてたのかもわからない、メモ書きのようなそれらを。
そうそう、こんな歌だった、こんな歌詞だった、サビはこうだったと身体が覚えていた。
痺れるほどの疾走感ある歌声とそれに寄り添うほの暗い歌声。どこか90年代を彷彿とさせる、景気が良くも退廃的なメロディ。
間違いない、ゾワゾワと細胞が思い出す。
一度聴いただけなのに身体はしっかり覚えていた。
「よかったぁ。スッキリしたぁ」
フルサイズで聴き終わると、ずっと止めていた息をはあっと吐きながら響季がパソコンチェアに背中を預ける。
ずっとわからなかった曲名が判明した。そこには言いようのない爽快感があった。
そして、今回に限っては粋なおまけもあった。
ずっと探していた曲。その歌い手二人が、今のDOLCE GARDENのうちの二人らしい。
動画の説明を見ると、今はCRISPY―naとGURASSEとして活動しているようだ。
歌い方などは少し違うが、言われてみれば歌声の中に感じる魂は通じるものがある。
「すごい。なにこれ」
火照る頬を両手で包み込みながら、響季が言う。
過去と今、その点と点が繋がった。
アニメソングという、日本で産まれた小さな広い世界で。
その中の一曲を海外のネットラジオ局を経由して聴き、ようやくまた巡り会えたのだ。
振り返ってみれば手のひらで踊らされていたような、そして曲に惹かれたのは運命だったのだと思わされる事実。
この曲に携わった人を調べたら、自分が好きなあの曲も歌った人でした。
それはよくあることだった。
好きが芋づる式に、あるいは数珠つなぎのように連鎖する。
狭く広いアニソンではそれが顕著に起きる。それがファンには嬉しくてたまらない。
更に長きに渡って自分のハートを鷲掴みにしてきた人達のライブが見れるという。
我が地元で。無料で。
「すごい…。今日という日を記念日にしよう。毎年アクアパッツァとか作って食べよう。めんどくさそうだけど」
「そうか。原作クラッシュで」
ぞくぞくと興奮に打ち震えている響季の横で、カチカチとマウスを操りながら柿内君が呟く。
別ウインドウを開いて調べてみると、オレンジコーギー・ゴーホームは元々オリジナルアニメ作品だったが、それを実写化する際だいぶ原作をこねくり回したらしい。
まったく別物といえるほどの、それタイトル一緒なだけで全然別もんの作品じゃん、いや別もんって捉えたら悪くないけどさあ、的な。
おそらくアニメ作品の実写版ということで、海外ネットラジオでもアニソンにカテゴライズされていたのだろう。
だが作品の評価からするとあまり皆が触れたくないゆえ、関わった歌手ごとおそらく一緒に闇に。しかも主題歌ではなく挿入歌だった。
結果、響季はなかなか辿りつけなかったのかもしれない。
「なるほどだからか」
自分が覚えていなかった理由と、親友が辿り着くまでに随分時間を要した理由について推理し、柿内君が一人納得するが、
「カッキー!一緒に行こうよライブ!」
興奮が抑えられない響季が柿内君の肩を掴んでがくがく揺さぶる。
「だから行けないんだって!」
「あ…、そっか。さっき」
推理はさておき、彼はライブへは行けない。
先程少年があげた悲痛な叫びを響季が思い出す。
「なんかあんの?」
「ああ、うん…。まあな」
理由を訊いてみるが柿内君は言いづらそうにする。
言いたくないなら別にいいけど、という視線を響季は送るが、
「……雑誌の、座談会がな」
ぼそぼそと彼は喋り出した。
結局のところ、彼も言いたくて仕方なかった。どうしても行けないその理由を。
たった一人の親友に少し自慢がしたかった。
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