好きだと言わずにいられない。

古城乃鸚哥

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壊れた音

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 瑠璃の言う通り、奏一と眞音は仲は良かったが、確かに色恋沙汰が二人の間で話題に上ることはなかった。そして、そのことについてさして疑問も抱かなかった奏一だった。自分たちには音楽がある。それが、なによりも優先されているものだと思っていた。
「眞音」
 放課後、授業が終わってそのまま下校になる期末試験期間。奏一と眞音は、部活が休みでも自主練習のために練習室へと向かっていた。もとより音楽科生の二人には、学力試験の他に音楽の実技試験もある。眞音が自身の課題曲、レーガーの『ロマンス』についての解釈を言い連ねているところへ、奏一が割って入った。
「なんだよ奏一、なにか反論か?」
 普段は人の言葉を遮ることなどほとんどない奏一に、滑らかな弁舌を止められて眞音は少し不機嫌だ。
「いや。反論はない。でも気になることはある」
 奏一がそんなことを言い出したのは、ほんのちょっとした興味からだった。瑠璃に言われたことが引っかかっていた。
「なんだ、気になることって」
 鼻息も荒く聞いてやるといった態度になった眞音に、奏一は内心苦笑しながらその目を見ながら問うた。
「眞音はわかるか、自分一人で、胸に秘めておくには大きすぎる気持ちって」
探るような奏一の眼差しに、一瞬眞音がたじろいだ気がした。だがすぐに、その気配は消えて強気な声が返ってくる。
「なんだそれ、おまえはオレをバカにしてるのか」
「馬鹿になんかしてない。好きなやつはいるかって話だ」
「言い直すところがバカにしてるっていうんだよ」
「過去の話でもいいけど」
「それがオレの熱弁を遮ってまで聞くこととはな」
 まったく、と息を吐きながら、眞音は到着した練習室の扉を押し開く。
「いいよ、おまえに分かるように答えてやる。ちょっと付き合え」
 そうして、眞音は奏一を一人用の練習室に誘い込んだ。
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