好きだと言わずにいられない。

古城乃鸚哥

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壊れた音

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 奏一は驚いた。眞音の、そんな弱音を聞くのは初めてだった。いつも自分に絶大な自信を持っていて、それを納得させるだけの実力を持ち努力をしていた眞音。そんな彼を、奏一は尊敬したし憧れていたし、その友人であることが誇らしかった。
「どうして」
 それ以上言葉が出てこない奏一に、眞音は視線を落として目を合わせない。
「それはな、オレ自身、自分がこんなに揺らぐとは思わなかったからだ。オレはもっと、しゃんとしたヤツだと思ってた、……そう、ありたかったよ」
 だから、そうでない今の自分が腹立たしくて仕方ない、と眞音は言った。心底悔しそうにいう眞音に、奏一がかけられる言葉などない。一体、何が彼をそうさせたのか、瑠璃のことでないならば自分の言動か?それとも瑠璃自身と何かあったのか。彼女からは、告白は断られたと聞かされていた。それとも、まったくべつの、なにかなのか。
「眞音、なにがそんなに……何に、追い詰められたんだ」
 奏一は、ただ純粋に彼の力になりたい、眞音の負担をなんとか軽くしたいと考えていた。だが、その意を振り払うかのように眞音は頭を振る。
「奏一、オレはまだ、立ち直ってない、おまえと冷静に話が、できない。試験日のロマンスみたいなモンだ。散々だったろ、あれ。だけどあれが今のオレ、だ。オレは今普通じゃないんだよ」
 少し放っておいてくれ、と眞音は言った。だが、奏一は素直に頷けなかった。
「俺には、何もできないのか?それは確かに、俺は、頼りないかもしれないが」
「何もするな」
 眞音は強い口調で奏一を遮った。
「何も、しようとするな。それが、一番、オレのためになる」
「本当に、そうなのか?」
 小さく伺うように、奏一は問う。眞音は笑わない。いつもなら、他人の不安や心配事を吹き飛ばすような強い笑みを返す彼は、そこにいない。それを思えば確かに、今の眞音は普段の彼とは違うのかもしれない。だけれども、そこで引き下がるのが、本当に友情だろうか。眞音の一番近くで、一番心を交わしてきた自負のある自分が、何もできないなんて。
「しつこいな、おまえ。おまえの話がそれで終わりなら、オレはもう帰るぞ」
 言いながらやおら立ち上がる眞音に、奏一はなおも食い下がる。
「俺の、せいなのか」
 その言葉は、眞音の足を止める力を持っていたようだった。しかし、横目だけ向けた眞音は冷たかった。
「そうだと言えば満足か」
 今度こそ言葉を失った奏一は、彼を追いかけることはできなかった。眞音は数歩先で思い直したように立ち止まり、絞り出すように呟いた。
「時間をくれ。また前のように、お前と過ごすのは、……今すぐは無理だ」


 そうしてそのまま眞音と別れた奏一だが、夏季休暇が明けても、眞音と会うことはなかった。夏休み中に転校になってしまったのだと、始業式の日に担任から聞かされた。

 眞音とは、それっきりだった。
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