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幼少期〜伯爵家の実状について〜
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全てはファランダール王立学園に入学し、ヒロインや攻略対象を愛でるためにーーー。
一日たりとも無駄には出来ない。
人はいつ死んでしまうかわからないのだ。これは身を以て経験しているし、今回は運良く異世界デビュー出来たものの、次もこううまくいくとは限らない。
きっと、こんなめくるめく胸熱展開は二度と起こりえないだろう。
そのことを噛み締めながら、ミーティアは自身の目的を達成する為、正確に現状を把握しなければと決意を固めていた。
屋敷の中がそこはかとなく静かで、行き交う使用人が少なく、日々の食事のグレードが軒並みダウンしているのは明らかだが、具体的に我が家の財政がどうなっているのか調べる必要がある。
その為、つい先日まではファランダールの歴史について書かれている本を読んでいたが、今、ミーティアの手元にあるのはマッコール伯爵家に関する資料だ。
マッコール伯爵家の起源は案外古かった。
神の子『ファラン』が地上へ降り立ち、国を形成していく為に七人の賢者の力を求め、賢者たちも喜んでその力を貸し、ファランダールは発展していった。
今も権勢を誇る三大侯爵家と、四大伯爵家の祖先がその七人である。
そして、その四大伯爵家の中にマッコール伯爵家もなぜか入っているのだ。本来なら、由緒正しい家であり、領地だってそれなりにあるはずだった。
(なんなの、これは、、、)
乳母のニナは心配そうにミーティアを見ていたが、ニナの視線を物ともせず、資料に目を走らせる。
『この娘は祖先である賢者「ローランド」が遣わしたに違いない、このまま見聞を広め、勉学に励めばきっとローランドをも凌ぐに違いない』と親バカ全開で父様が喜んでいても。
『でもあなた、ミーティアは女の子なんですのよ』と母様が心配そうに眉を顰めていたことをニナは知っている。だが、家の主人が認めている以上、ミーティアが色々と調べものをしていても、誰も止めることは出来ない。
ミーティアは領地に関する資料を読んでいて、愕然とした。
なんと、領地の半分以上が借金のために抵当に入っているではないか。それもこれも、現マッコール伯爵家当主である父、ニール・ディラン・マッコールの、人に頼まれると嫌とは言えない性格によるものであることは容易に想像出来た。
七賢者の一人を始祖に持つ、由緒ある家柄であるにも関わらず、王都の屋敷を売り払って領地でひっそりと暮らしているのである。
これは小一時間問い詰めねば気が収まらんと、この時間は書斎にいるであろう父の許へ急いだ。
ノックもそこそこに書斎に入ると、父が羽ペンを持ち上げてこちらを見ていた。
「どうした?ミーティア」
父は微笑んで羽ペンを置くと、ミーティアのそばまでやってきて抱き上げてくれた。
「おとうさま、おとうさまにおたずねしたいことがありますの」
「なんだい?」
父はニコニコとミーティアを抱いたまま、来客用のソファに腰かけた。
「わがやはどうして、しゃっきんまみれなのですか?」
「……み、ミーティア?なぜ、それを?」
ニールの顔が微妙に引き攣っていたが、ミーティアはそれに構わず続ける。
「おとうさま、このままではりょうちすらなくなってしまいますよ?りょうちがなくなってしまったら、どのようにおかねをかえしていくおつもりなのですか?!」
たどたどしくも、正論をぶち上げたミーティアの顔を見て、しばし絶句する父、ニール。
「おとうさま、このままではロビンがつぐのはただのしょうごうのみですわよ?」
よく言えば楽天的、正直に言えばどんぶり勘定の父は何も言い返せないようだ。
「わたくしによいかんがえがありますの、おとうさま、きょうりょくしてくださいますか?」
まじまじとミーティアを見返した父は、大きく頷いた。
「もちろんだとも、ローランドの遣わした娘よ、遠慮なく言っておくれ」
こうして、父ニールはミーティアの下僕となったのである。
一日たりとも無駄には出来ない。
人はいつ死んでしまうかわからないのだ。これは身を以て経験しているし、今回は運良く異世界デビュー出来たものの、次もこううまくいくとは限らない。
きっと、こんなめくるめく胸熱展開は二度と起こりえないだろう。
そのことを噛み締めながら、ミーティアは自身の目的を達成する為、正確に現状を把握しなければと決意を固めていた。
屋敷の中がそこはかとなく静かで、行き交う使用人が少なく、日々の食事のグレードが軒並みダウンしているのは明らかだが、具体的に我が家の財政がどうなっているのか調べる必要がある。
その為、つい先日まではファランダールの歴史について書かれている本を読んでいたが、今、ミーティアの手元にあるのはマッコール伯爵家に関する資料だ。
マッコール伯爵家の起源は案外古かった。
神の子『ファラン』が地上へ降り立ち、国を形成していく為に七人の賢者の力を求め、賢者たちも喜んでその力を貸し、ファランダールは発展していった。
今も権勢を誇る三大侯爵家と、四大伯爵家の祖先がその七人である。
そして、その四大伯爵家の中にマッコール伯爵家もなぜか入っているのだ。本来なら、由緒正しい家であり、領地だってそれなりにあるはずだった。
(なんなの、これは、、、)
乳母のニナは心配そうにミーティアを見ていたが、ニナの視線を物ともせず、資料に目を走らせる。
『この娘は祖先である賢者「ローランド」が遣わしたに違いない、このまま見聞を広め、勉学に励めばきっとローランドをも凌ぐに違いない』と親バカ全開で父様が喜んでいても。
『でもあなた、ミーティアは女の子なんですのよ』と母様が心配そうに眉を顰めていたことをニナは知っている。だが、家の主人が認めている以上、ミーティアが色々と調べものをしていても、誰も止めることは出来ない。
ミーティアは領地に関する資料を読んでいて、愕然とした。
なんと、領地の半分以上が借金のために抵当に入っているではないか。それもこれも、現マッコール伯爵家当主である父、ニール・ディラン・マッコールの、人に頼まれると嫌とは言えない性格によるものであることは容易に想像出来た。
七賢者の一人を始祖に持つ、由緒ある家柄であるにも関わらず、王都の屋敷を売り払って領地でひっそりと暮らしているのである。
これは小一時間問い詰めねば気が収まらんと、この時間は書斎にいるであろう父の許へ急いだ。
ノックもそこそこに書斎に入ると、父が羽ペンを持ち上げてこちらを見ていた。
「どうした?ミーティア」
父は微笑んで羽ペンを置くと、ミーティアのそばまでやってきて抱き上げてくれた。
「おとうさま、おとうさまにおたずねしたいことがありますの」
「なんだい?」
父はニコニコとミーティアを抱いたまま、来客用のソファに腰かけた。
「わがやはどうして、しゃっきんまみれなのですか?」
「……み、ミーティア?なぜ、それを?」
ニールの顔が微妙に引き攣っていたが、ミーティアはそれに構わず続ける。
「おとうさま、このままではりょうちすらなくなってしまいますよ?りょうちがなくなってしまったら、どのようにおかねをかえしていくおつもりなのですか?!」
たどたどしくも、正論をぶち上げたミーティアの顔を見て、しばし絶句する父、ニール。
「おとうさま、このままではロビンがつぐのはただのしょうごうのみですわよ?」
よく言えば楽天的、正直に言えばどんぶり勘定の父は何も言い返せないようだ。
「わたくしによいかんがえがありますの、おとうさま、きょうりょくしてくださいますか?」
まじまじとミーティアを見返した父は、大きく頷いた。
「もちろんだとも、ローランドの遣わした娘よ、遠慮なく言っておくれ」
こうして、父ニールはミーティアの下僕となったのである。
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