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5巻
5-1
1 お散歩
さて、王都から出てきたが、どっちに向かおうかな。
従魔達に意見を聞いたものの、見事に分かれたな。
ヴォルフとアクアは林か草原方面で、マナとライは森のほうにある泉付近。
真逆とは言わないが、方角が90度違うな。
そんなわけで行き先は、俺の意見がどちらかによるようだが……これじゃあ聞いた意味があまりないな、最終的に俺の判断になるとは。
うーん、どうしようかな。
あ、そうだ!
「林と森、どっちのほうが近いんだ?」
みんなに聞くと、『近いのは泉』と答えてくれた。
そっちに行くことにしよう。
若干アクアがぐずったが、ご飯が遅くなると伝えると泉に行くと言いだした。
……アクア、チョロいな!
そんなわけで、今は泉に向かって歩いている。
だけど、さっきからちょくちょく、角のある兎の魔物であるホーンラビットの姿を見かけるんだよな。
まあ、近づいてきたら倒すんだが、どうにも様子を見ながらついてきてるだけなんだよな。
放っておいたらそのうち諦めてどっか行くだろう。
◇
気にしないようにしていると、泉が見えてきた。
とりあえず拠点になりそうな場所を探して結界を張る。
すると、アクアを残してみんなどこかに行ってしまった。どこに行ったのかは知らないけど、飯はどうするんだろうな。
とにかく作ること自体は始めておこう。
まあ軽く周りを見て、適当に探索にでも行ったんだろうと当たりをつけて、昼食準備に取りかかる。
まずは、ハンバーグ作りから。
ボウルに入れた生パン粉に牛乳をかけ、ふやかしておく。
その間に、フライパンにサラダ油を入れて熱し、この世界の玉ねぎであるオニオを入れてしんなりするまで炒める。
次に、パン粉を入れておいたボウルに合挽き肉をどっさり入れ、300グラムくらいで一個分として、それを三十個程度用意する。
そこへ、卵三十個、ふやかしておいた生パン粉(生パン粉大スプーンで八十杯、牛乳を大スプーンで六十杯)、それに塩、胡椒を適量入れる。
オニオの粗熱が取れたところで、他の材料とも混ぜ合わせてよく練り、等分。
それから、手のひらで空気を抜きながら丸め、成形していく。
それが終わったら、フライパンにサラダ油を入れて熱し、成形したそれらのタネを敷き詰めて、焼き色がついたら裏返す。
そして、フタをしてから、じっくり中まで火を通していく。
火が通ったら、器に盛る。
続いて、ソースを作るために、同じフライパンに赤ワインを入れて、軽く炙ってアルコールを飛ばし、万能テリヤキのたれを加えて煮詰める。
最後、仕上げに本みりんを加えて、再び軽く煮詰める。
できたソースをハンバーグにかけて、お好みの野菜を付け合わせる。
このときに、ちょっとした俺流のコツがある。
肉の焼き上がりは透明な肉汁が出るのが目安なんだけど、保温して火を通すのがポイントなんだよな。
ま、いずれにせよ、この料理は表に出せない。俺が元いた世界の調味料、ふんだんに使っているからな。
あとは、卵サラダに、マヨネーズをかけて和えるか。
スープはどうしようかなぁ。なしでいいか。
あとは足りなければ、最悪、焼き肉ができるように、肉のスライスを量産しておこう。
ちなみに、アクアが手(触手か? 羽か?)を伸ばしてきたので、「欲しかったらちゃんと言うように」と軽く注意して、少しだけ肉を軽く焼いて与えた。
そのあたりで、時間にして三十分くらいかな、みんな戻ってきた。
急いで仕上げをして、みんなの皿に、とりあえず三個のハンバーグを載っけていった。
好評のようで、アクアとヴォルフはおかわりしていたが、始終和やかに昼食を終える。
食後、俺は料理を作り溜めするために、ここに残る。
ライとマナ、ヴォルフとアクアで、それぞれペアになってもらって、適当に散策しててもらうことになった。
ペアの根拠は、飛べる組と、地上組だな。
とりあえず夕方に家に帰るとして、それなりに時間があるから、ここぞとばかりに作り倒す!
焼き肉、ステーキ、牛丼(肉とオニオを煮込んだやつ)、トンカツ、トンテキ、豚のしょうが焼き、唐揚げ、玉子焼き、サーモンバター醤油、カキフライ、白身魚のフライ、フライドポテト、ビーフシチュー、クリームシチュー、ハヤシライス、カレー……
まだまだ作っておきたいが、そろそろ時間かな?
スキルのおかげで作れたけど、正直、地球にいたときなら、料理を一、二品作ったら時間になっていただろうな。
さて、みんなに声をかけるか。念話で呼びかける。
『おーい、そろそろ帰るぞー!』
『わかりました、戻ります』
『わかったわ~』
『ぬっ? もう少し待ってくれ』
『まつのー』
えーと、ライ、マナは戻ってくるようだな。
だが、ヴォルフは待ってほしいとのこと。あとアクアもか。
あいつら何をしているんだ? 聞いたほうが早いか。
『ヴォルフとアクアは何してるんだ?』
『魔物を狩っているぞ』
『狩っているって……どうやって持ってくるんだ?』
『むっ……考えていなかったな。取りに来てくれぬか?』
『取りに来いって言われてもな……いや、空間転移でどうにかなるか。とりあえず、ライ達と合流したら試してみるから、待っててくれ』
『ああ、わかった。終わったのでいつでも大丈夫だ』
ただの散歩のはずだったのに何をやっているんだ。
まあ、肉系の在庫がそろそろ危なかったから助かるか。
おっと、ライ、マナが戻ってきた。
さっそく俺に触れててもらい、肩に乗ってもらう。で、ヴォルフをイメージして空間転移をしてみた。
初の試みだがうまくいくかな?
初の試みだったけど、無事にヴォルフのもとに飛ぶことができた。
俺が、規格外の空間転移してきたのを見て、ヴォルフがなんとも言えない顔をしているが、スルーだ!
気にしてはいけないんだ!
だいたい、散歩のはずが狩りをしだしたヴォルフが悪い。
俺は悪くないはずだ。たぶん。
とりあえず、今日の飯は奮発しておこう。
それはさておきだ。ヴォルフのことよりも、この目の前の光景をどうすれば良いんだろうな。
確かに、肉が減って心許ないから、そろそろ狩りに出ようとは思っていた。
けどな?
いくらなんでもこれはないと思うんだ、俺は。
見れば見るほど、現実を見たくなくなるんだよな。
はぁ、見ていてもどうにもならないし、回収するか。
オークが、一、二、三……百一、百二、百三っと。
ふぅやっとオークが終わった。
そう、オークがここまでの数がいるってことは、もちろん上位種もいるんだよ。
もう面倒だから、上位種はまとめて数えよう。種類? 知るか。上位種だけでも、二十超えてるし。
ふぅふぅ、やっとオーク種の回収が終わった。
さて、これで帰れたら良いんだけど、まだあるんだよ!
オーガと、これはなんだ?
【鑑定】してみるか。
・シーフカメレオン(死骸) ×1 Bランク魔物。
鶏肉に近い肉質だが、旨味は比較にならない。
ただでさえ見つけにくいカメレオン種が
隠蔽スキルを覚えた上位種。
それと、蛇の魔物であるサーペント種が何匹いるんだ?
あとは、牛系かな? 牛の魔物のブルーブルに似てるし。
ん? 牛系の魔物を退けたら、これも亜種か上位種?
姿はオーガだけど、色も体格も違うからどちらかで間違いないだろう。
えっ? 調べないのかって?
そんな時間の余裕があるとでも?
やるべきことはまだ残っているんだ!
刻々と夕焼け色が強まっているのに!
あらかた、ここに積み上がっていた魔物は回収できた。
他にないな、とヴォルフに確認してさっさと帰ることにする。
回収した魔物の整理は後日だ! 一応、近いうちにギルドに数匹は解体に出すが……肉確保のためにな。
まったく予想外の出来事で、予定が狂ったな。
今日の飯は奮発する予定だったが、作ってる時間はない……ことはないが、チビッ子達(アクア、ライ)が待ちきれないだろうからなぁ。
出来合いの物で済ませるとしよう。
今日は、さっき大量生産した料理で、一番量を仕込んだ(ヴォルフの五体分)牛丼にしよう。
最初は普通に食べ、二杯目からは卵を入れて、さらにおかわりしたときには、ネギとか、チーズ入れるとか、汁だくにするとか。
そんなふうにできるし、みんなも満足するだろう。
そうと決まれば、早く王都に戻るとしようか。
泉付近の森の縁を歩きながら、王都に向かっていると、ホーンラビットがまた見えてきた。
こいつ、さっきからちょくちょく見かけていた個体かな。
まあ、実害があるわけじゃないし、倒す必要もないか。
気にせず横を歩いて進んでいくと、ついてきてる……
憑いてきてると言い換えてもいいが……
なんなんだ!?
よくよく見ると、何か必死な様子だ。
だけど、どうすればいいんだかわからないし、このまま帰るわけにもいかなくなったな。
厄介事の予感がしなくもないが、最悪、空間転移で、王都で俺が借りてる借家の庭にでも飛べばいいか。隠蔽とか使って騒ぎにならないようにして……
俺がじっとホーンラビットを見ていると、ホーンラビットは駆け出して数歩ほど進む。
だが、すぐにこちらの様子を窺い、俺が近づくとまた駆け出して、数歩分進むとこちらの様子を窺ってくる。
何回も繰り返してくるので、ついていくことにした。
ヴォルフもマナも特に警戒していないから、危険はないだろうしな。
それよりも、ついていったら何があるのか興味が出てきたぞ!
2 待っていたのは
ホーンラビットについていくこと十分ほど。
急に急ぎだしたので、引き離されないように走ってついていく。
そして、水場が近くにある場所に来たとき、信じられない光景を見た。
そこには、倒れている女がいたのだ。
死んでいるのかと思ったが、ホーンラビットが擦り寄っているところを見ると、生きているのかもしれない。
【鑑定】をかけて見ると、次のようだった。
名 前: シェフィー
種 族: 人族
年 齢: 19
職 業: テイマー
H P: 17/124
M P: 5/225
体 力: 124
力 : 121
魔 力: 225
敏 捷: 140
器 用: 185
知 力: 149
スキル: 【水魔法3】【風魔法5】【治癒魔法2】【従魔術6】【短剣術4】【鞭術5】
【魔力操作3】【魔力回復増加1】
状 態: 毒(中度)、魔力欠乏
これは……いや、考えるのはあとだな。
まずは助けよう!
上級ポーションを使っていったん魔力欠乏と毒を治して、あとはあまり使わないから忘れがちだが、俺は最上級の治癒魔法を持っているのだから、この場に相応しい回復魔法があるはず……えーっと、あれ? これじゃないな。
うーん、あった!
エクストラヒール!
これでいけるか?
鑑定、【鑑定】っと。
名 前: シェフィー
種 族: 人族
年 齢: 19
職 業: テイマー
H P: 115/124
M P: 192/225
体 力: 124
力 : 121
魔 力: 225
敏 捷: 140
器 用: 185
知 力: 149
スキル: 【水魔法3】【風魔法5】【治癒魔法2】【従魔術6】【短剣術4】【鞭術5】
【魔力操作3】【魔力回復増加1】
従 魔: ホーンラビット
状 態: なし
装 備: 短剣、バックラー、革の軽鎧、革のブーツ、
風のバンダナ(頭部周辺に風の防御(小)を発生する)
うん、これで助かるな。
あとは、気がつくまでここで待っておくか。それとも、状態的には大丈夫だろうから、背負って町に連れていこうか。
悩みどころだけど、俺の決断は後者だ。
シェフィーを俺が背負い、ホーンラビットについてくるように声をかけて歩きだす。
ヴォルフには周辺警戒と、ライには上空から見てもらって、極力戦闘を避ける道を教えてもらう。
アクアはみんながお仕事モードになったのをなんとなく感じるのか、食事の催促をすることがなかった。
◇
スムーズに歩いて、町の近くまで来れたな。
思ったより早めに戻れたから助かった。
それよりも、ここまでいっさい目を覚ますような素振りもなかったな。
ホーンラビットは後ろをついてきているが……可愛いものだ。
門が閉まる直前に帰ってこられた。門では少しひと悶着があったが、俺のギルドランクが役に立った。
というか、揉め事を回避できたの初めてかも!
チョッと感動したな。
とりあえず門をくぐり抜け、冒険者ギルドに向かう。
無論、ホーンラビットもついてきている。
俺が背負っている者を見て事態を重く見たのか、受付嬢がギルマスを呼んできた。
「いったい何があったのかな?」
「従魔達が運動不足だったから、散歩がてら王都の外に出て過ごしていたんだ。そしたらこのホーンラビットが俺の周りをチョロチョロしてきて、近寄ったら歩きだしてな、この女のところまで案内してくれたというわけだ。だがこの女、状態が悪いみたいで、毒に侵されていたんだ。それで、ポーションを与えて連れ帰ってきた」
「そうなの それで助かるのかしら?」
「たぶんな。少なくとも、高品質解毒ポーションと、中品質マジックポーションと、中品質HPポーション(本当はエクストラヒールだが……言う必要はないだろう)を使ったからな」
「それ、は、また随分と奮発したものだね」
「目の前で死なれるよりはマシだろうからな」
「なんの慰めにもならないだろうけど、ギルマスとして感謝します」
「自己満足だ。気にしなくていいさ」
「まあ、経緯はわかったけど、このあとはどうするの?」
「そうだな……放ってもおけないし、拠点にしている借家に連れていくか。あそこなら、ファスティ領主の所から来ている人間もいるから、この女を診ることはできるし」
「そう、じゃあ早く横にさせてあげて。何かあれば報告を頼みます」
「わかった。俺が来れなくても伝言は入れるようにする」
俺はそう言って、ギルドから出てきた。
さて、借家に戻るとしますか。
◇
さてと、家に着いたな。
戸を開けて中に入ると、俺と一緒にこの王都に来ているファスティ領主の側務めである、アンディとバイロンが廊下で話していた。
こちらに気づくと、すぐに挨拶してくる。
「ノート様、お疲れ様でした」
「ノート様、おかえりなさいませ」
「アンディやバイロンもお疲れ様。今日このあとは、どっちが残るんだ?」
ちなみに、側務めの二人は交代で俺の借家に滞在することになっている。俺の監視というか、お守りみたいなものだな。
「それでしたら、私になります」
とバイロン。
「そうか、頼むな。それで? 子供達は?」
俺が借家に住まわせてる子供のアラン、セレナについて尋ねると、アンディが口を挟む。
「それよりも、その後ろの方は?」
「おっと、そうだった。アンディ、戻るならファスティ領主に一応伝言を頼みたい。今日、王都の外に散歩がてら出かけたのだが、その際な、こっちのホーンラビットが周りをチョロチョロしていたんだ」
俺はホーンラビットに視線を向ける。
「近づくと離れて、追いかけるのをやめるとまたこちらに寄ってきてと繰り返してな……そんな感じであとを追ってみると、この女性が倒れていたんだ」
俺は背負ったままの女性をくいっと見せる。
「なるほど……それで、どうしたのでしょう?」
「(……【鑑定】したことは、一応濁しておくか)。それで様子を見ると、毒の症状と意識がなくてな、魔力欠乏もしくは死にかけていると思ったから、高品質ポーションのHPポーションと、マジックポーションと、解毒ポーションを使ってみたんだ。状態は安定したと思うが、この通り意識が戻っていない。それでな、ギルドに報告後、連れ帰ったんだ。どこの誰ともわからないし、滞在している場所もわからなかったからな」
アンディが頷いて言う。
「領主邸に戻って、それを伝えよ……ということですか」
「そうなるな。場合によってはそちらに送るつもりだ。もしかしたら、俺と行動をともにすることになるかもしれんとも、なんとなく思っているが……。いずれにせよ、彼女は従魔を連れているから従魔術師だろうし、自衛もある程度はできるだろう。まあしかし、それもこれも目を覚ますまでは未定だな」
「わかりました。そのようにファスティ領主様にお伝えしておきます」
そう言うと、ちょうど出るタイミングだったようで、アンディは出ていった。
そのあとすぐに、入れ替わるようにマークがやって来た。
女性を見て驚いたように何か言っていたが、俺は「先に寝かせてくる」と、女性をあごで示してから言って離れる。
空いている部屋に入り、ベッドに女性を横にして寝かせる。
それから、健気についてくるホーンラビットの手足を拭いてベッドに乗せてやった。
とりあえず水差しとコップをベッドサイドに置き、棚にあったベルを近くに置く。
そして、部屋から出て食堂に向かう。
感想 1,114
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