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第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです
会いに来ました
しおりを挟む王妃様はあんなことを言ってたけど、頷けるわけないじゃない。
そもそも、殿下が私のことを想ってるなんて信じられないわよ。初めて会った時から最低な態度を取り続けてて、どこにそんな要素あったのよ。
それに、殿下はソフィアのことが好きだった筈。あんなにいつもベタベタしてたじゃない。会う度にプレゼントも渡してたし、一か月後に開催される新年祭のためにドレスも贈ってたよね。
それに引き換え、私は会う度に冷たい言葉を吐かれてた。そんな態度を取り続けてたのに、好意があるって言われても、どこ見て言ってんのよって思うよね。いくら王妃様でもね。実際見たら、十人中十人が、ソフィアに好意があると思うわ。絶対。
でも、王妃様に頼まれた手前、会いに行かないわけにはいかないじゃない。だから、渋々だけど会いに来たわ。まぁまた何か言われたら、次は無しってことでいいよね。絶対、頼まれても行かないわ。
殿下の部屋の前に来ると、既に王妃様から連絡があったのか、警備と監視をしていた騎士が何も言わずに扉を開けてくれた。
荒れてるわね。空気が淀んでるわ。まずは、この空気入れ換えよう。話はそれからね。
「誰が開けていいと言った」
私を侍女だと勘違いしたのか、ふて寝をしたまま殿下は怒る。構わず私は窓を開けた。
「こんな臭い中、お話なんて出来ませんわ」
その声で侍女じゃないって分かったんだろう。殿下は物凄い勢いで飛び起きた。
「マリエール!!」
声で私って分かったんだ。目が合ったわね。あっ、逸らされた。そういえば、殿下とまともに目を合わせたことなかったわね。
「おはようございます、殿下。もう昼を過ぎてますけど」
「どっ、どうしてここにいる!?」
目を逸らされたまま悪態をつかれても、全然怖くはありませんよ。
「一度、ゆっくりとお話しようと思いまして」
「話なんて俺にはない!! とっとと出て行け!!」
下手に出れば。どこに向かって怒鳴ってるの? とことん、私と目を合わす気ないみたいね。そこまでされると、イラッとくるんだけど。ふ~ん。そんな態度をとり続けるをだ。だったら、私にも考えがあるわ。
まだ子供だから許されるよね。ベッドに上り、殿下の前に座る。すると、殿下は慌てて後ろに下がろうとする。だけどさせなかった。パジャマの襟首を掴み自分の方に向ける。殿下は驚いたのか目を見開く。だが、すぐに顔を横に向ける。
そこまで、私の顔を見たくないのか。ちょっとショックだわ。これのどこが、好意があるの? いいわ。お構いなしに、私は言いたいことを告げる。
「殿下。人の目を見て言って下さい。何故いつも、目を逸らすんです? そんなに私が嫌ですか? 今でも平凡な奴だと蔑みますか?」と。
自分で言ってて落ち込んできたわ~~。でも、これでも変わらないなら駄目なんじゃない。
「そんなこと、思ったことがない!! 俺はっ」
そう声を荒げた殿下としっかり目が合った。それも至近距離で。
初めてだった。目が離せなかった。吸い込まれるように、殿下の目を見詰める。掴む手が緩む。殿下は私の手を乱暴に振り払い逃げた。逃げたといっても、同じ室内だけど。
殿下のベッドの上で固まる私。思考がまるで追いつかない。
「まさか……嘘よね…………」
心の呟きが口に出る。無意識に殿下に視線を向けていた。
また目が合った。
殿下は慌てて顔をそむける。
その姿がある人と重なって見えた。こんな呪いが掛かる前の、懐かしいあの人の姿にーー。
「…………アレク」
そう呟くと、殿下の体がビクッと震えた。
認めるしかない。殿下はアレクだ。
そして殿下は、自分がアレクだと知っているーー。
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