上 下
16 / 354
第一章 人生、まてしても超ハードモードから始まるようです

会いに来ました

しおりを挟む


 王妃様はあんなことを言ってたけど、頷けるわけないじゃない。

 そもそも、殿下が私のことを想ってるなんて信じられないわよ。初めて会った時から最低な態度を取り続けてて、どこにそんな要素あったのよ。

 それに、殿下はソフィアのことが好きだった筈。あんなにいつもベタベタしてたじゃない。会う度にプレゼントも渡してたし、一か月後に開催される新年祭のためにドレスも贈ってたよね。

 それに引き換え、私は会う度に冷たい言葉を吐かれてた。そんな態度を取り続けてたのに、好意があるって言われても、どこ見て言ってんのよって思うよね。いくら王妃様でもね。実際見たら、十人中十人が、ソフィアに好意があると思うわ。絶対。

 でも、王妃様に頼まれた手前、会いに行かないわけにはいかないじゃない。だから、渋々だけど会いに来たわ。まぁまた何か言われたら、次は無しってことでいいよね。絶対、頼まれても行かないわ。

 殿下の部屋の前に来ると、既に王妃様から連絡があったのか、警備と監視をしていた騎士が何も言わずに扉を開けてくれた。

 荒れてるわね。空気が淀んでるわ。まずは、この空気入れ換えよう。話はそれからね。

「誰が開けていいと言った」

 私を侍女だと勘違いしたのか、ふて寝をしたまま殿下は怒る。構わず私は窓を開けた。

「こんな臭い中、お話なんて出来ませんわ」

 その声で侍女じゃないって分かったんだろう。殿下は物凄い勢いで飛び起きた。

「マリエール!!」

 声で私って分かったんだ。目が合ったわね。あっ、逸らされた。そういえば、殿下とまともに目を合わせたことなかったわね。

「おはようございます、殿下。もう昼を過ぎてますけど」

「どっ、どうしてここにいる!?」

 目を逸らされたまま悪態をつかれても、全然怖くはありませんよ。

「一度、ゆっくりとお話しようと思いまして」

「話なんて俺にはない!! とっとと出て行け!!」

 下手に出れば。どこに向かって怒鳴ってるの? とことん、私と目を合わす気ないみたいね。そこまでされると、イラッとくるんだけど。ふ~ん。そんな態度をとり続けるをだ。だったら、私にも考えがあるわ。

 まだ子供だから許されるよね。ベッドに上り、殿下の前に座る。すると、殿下は慌てて後ろに下がろうとする。だけどさせなかった。パジャマの襟首を掴み自分の方に向ける。殿下は驚いたのか目を見開く。だが、すぐに顔を横に向ける。

 そこまで、私の顔を見たくないのか。ちょっとショックだわ。これのどこが、好意があるの? いいわ。お構いなしに、私は言いたいことを告げる。

「殿下。人の目を見て言って下さい。何故いつも、目を逸らすんです? そんなに私が嫌ですか? 今でも平凡な奴だと蔑みますか?」と。

 自分で言ってて落ち込んできたわ~~。でも、これでも変わらないなら駄目なんじゃない。

「そんなこと、思ったことがない!! 俺はっ」

 そう声を荒げた殿下としっかり目が合った。それも至近距離で。

 初めてだった。目が離せなかった。吸い込まれるように、殿下の目を見詰める。掴む手が緩む。殿下は私の手を乱暴に振り払い逃げた。逃げたといっても、同じ室内だけど。

 殿下のベッドの上で固まる私。思考がまるで追いつかない。

「まさか……嘘よね…………」

 心の呟きが口に出る。無意識に殿下に視線を向けていた。

 また目が合った。

 殿下は慌てて顔をそむける。

 その姿がある人と重なって見えた。こんな呪いが掛かる前の、懐かしいあの人の姿にーー。

「…………アレク」

 そう呟くと、殿下の体がビクッと震えた。

 認めるしかない。殿下はアレクだ。

 そして殿下は、自分がアレクだと知っているーー。





 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:3,011

仲良しな天然双子は、王族に転生しても仲良しで最強です♪

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:302

処理中です...