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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
やるしかないでしょ
しおりを挟む約束通り、午前中私は殿下を尋ねた。今日は王太子妃教育はお休みです。
「で、何を思い付いたんだ?」
前置きもなく殿下はそう訊いてきた。勿論、防音魔法を張ってからね。侍女も下がらせている。まだ子供だから許されてるけど、もう少ししたら、さすがに二人っきりは駄目よね。いくら婚約者同士でも。となると、この件に関しての会話は全て夢の中ってことになるわね。
「私も今年から学園に通うことにしたわ」
要点を先に述べた。
「学園に?」
十二歳からの六年間、貴族の子息や令嬢は学園に通わなければならない。
殿下は去年から通っている。そして、ポーター公爵家の令嬢ディア様は今年入学する。私の入学は二年後だ。
つまり、二年の空白が生まれるわけね。
ディア様が糞女神の信者かどうかは分からないし、もしかしたら違う人かもしれない。確かめるのは入学出来た後だけどね。
どちらにせよ、私ならまず間違いなく、この二年間に色々仕掛けるわ。だから、糞女神の信者たちもここで仕掛けてくる筈。絶対の好機だもん。
だってこのままだと、私と殿下は同じ学び舎に学ばないからね。私が入学した年に、殿下は高等部に進学するし。反対に、ディア様は二年一緒の学び舎に通う。この差はマジで大きい。私にとって致命傷な程にね。
ましてや、殿下を除いて次に高位ときている。誰も表立って意見出来ない。そこが学園でもね。まさに無双状態よね。
それを阻止する方法は一つだけ。
唯一無二の方法。
公爵令嬢であり、殿下の婚約者である私の登場だ。これで、奴らも表立っては動きにくくなる。
素直に考えれば三つのグループに分かれるわね。ディア様に付く者。私に付く者。そして、冷静に状況を見極める者。十二歳とはいえ、通っているのは貴族だからね。
一応、学園は飛び級を推進しているから、そこら辺は大丈夫。と言いながら、落ちたら笑いモンよね。復活出来ないわ。でもやるしかないでしょ。
「ええ。カイン殿下が留年出来ない以上、私が踏ん張るしかないでしょ。だって、二年の空白は私たちにとって不利しかならないもの。何としても入学してみせるわ。任せて」
ここが踏ん張りどころだ。
少し考えた後、殿下は賛成してくれた。
「……分かった。応援しよう。しかし、一か月しかないのは厳しいな……」
確かに、そこが一番の問題よね。なんせ時間がない。
「そこで、カイン殿下にお願いが。私に家庭教師を紹介して下さい。本当は、公爵家に頼むのが筋だと思うけど、紹介されるまでの空白時間が勿体ないの」
すると、殿下はにっこりと笑うと言った。
「なら、俺の家庭教師を貸そうか。あいつなら、大丈夫だろう。ただ、凄く厳しいぞ」
「それは構いませんわ。ドンと来いです」
「なら、今日から王宮に泊まり込みだな」
とても嬉しそうに、満面な笑みを浮かべながら言われた。
「公爵家に連れて帰るから必要ないでしょ」
泊まり込むつもりなんて更々ないわ。
「いや、連れて帰られては困る。俺の家庭教師でもあるからな。俺はどっちでもいいぞ。マリエールが王宮に泊まり込むか、俺が公爵家に泊まり込むか。その時は、公爵家から学園に登校するけどな。どうする?」
訊かなくても答えは一択しかないでしょ。私は渋々答えた。
「…………分かりました」と。
そう答えるしかないでしょ。
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