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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
学園からの郵便
しおりを挟む五日後ーー。
グリード公爵家の玄関ホールには私と殿下、お父様に執事のクライシス、私付きのアンナと護衛のジークの六人がソワソワしながら待っていた。
当然、学園から来る合否結果をね。
シルキー様は大丈夫だって太鼓判を押してくれた。筆記試験も出来てると思う。けど、やっぱり届かないと安心出来ないよ。
面接の時に少し暴走しちゃったし。だって……魔法具のことを聞かれたから、少し熱くなっちゃって。先生相手につい意見しちゃったんだよね。あ~~ほんとに馬鹿だわ。昔からこういう所変わんない。熱中すると周りが見えなくなるの。やった後に後悔するなら、始めなからすんなって話よね。
糞女神を手足をもぎ、引きずり出すための布石なのに。
あ~~ほんとに、私って馬鹿!!
「マリエール。大丈夫だ。あんなに勉強頑張ってたじゃないか。大丈夫」
殿下が私の手を力一杯握る。少し強いくらい。でもその熱い手が、何故か安心出来る。
私を幾度となく殺してきた手が、今は安心なものになってるなんて、本当に不思議よね……
「殿下。ありがとうございます」
「!! ……マ、マリエール」
殿下が驚いている。口を開けたままで。あまりにも間抜けな顔に、私は自然と笑みが浮かんだ。
「どうかしましたか?」
「いや……久し振りに見たから」
「何をです?」
「マリエールの笑顔」
私の笑顔? 今更何を? 今まで、殿下に向かって笑ったことあったでしょ。
「何言ってるんですか? 何度も笑ってますよ」
「いやない。自然な笑みは今までなかった。いつもどこか無理してるような、そんな笑みだけだ」
「そうでしたか?」
「そうだ!! これから、もっと笑え。俺がいつも側にいるから。今度こそ、その笑顔を必ず護る」
今度こそーー
その言葉の重さに気付いているのは私だけね。他の皆は屑一家の件だと思ってる筈。
「……マリエール?」
ほんとに貴方はあの頃と変わらない。いつも表面上は自信満々で、平民だったのに俺様で。でも本当は、誰よりも繊細で、傷付くのが怖くて自信がなさそうだった。そんな自分をより良く見せたくて俺様を装ってた。そうせざる得なかった環境だった。
今思えば、貴方のそのアンバランスさに私は惹かれたのね。
今も……
「なら、今度こそ護って下さい。カイン殿下」
笑みを浮かべながら、私は心の中で誓う。
貴方の笑顔は私が護るとーー。
殿下は一瞬泣きそうな表情を見せた。そして、私を力一杯抱き締めた。その腕が少し震えていたのは、私だけが知っていればいいことだ。
慌ててお父様が殿下を引き剥がした時は、いつもの表情に戻っていた。
その時。
和気あいあいな空間に、余所者の声が割って入ってきた。
「……あの…………そろそろ宜しいでしょうか? ……学園からの郵便です」
おずおずと声を掛ける郵便屋さん。
どうやらちょっと前からいたみたい。まぁこの雰囲気に割って入るのは勇気がいるよね。っていうか、見られたの……ちょっと恥ずかしい。
「ありがとうございます」
そう言って受け取ったのはクライシス。何事もなかったかのように。さすがだわ。そのまま私に手渡してくれた。
「……私が開けるの?」
少し緊張で手が震える。
「当然だ。マリエール宛に来た郵便だぞ」
お父様が答える。肩に手を乗せて。なんか、護られてる感じだ。ううん、護ってくれてるんだね。
「じゃあ、今から開けますわ」
皆の視線が私の手元に注がれる。私は中央のリボンを解いた。
そして広げる。
書状にはこう書かれてあった。
マリエール=グリード様。
当学園は貴殿の入学を認めます。
つきましては、三月十五日にクラス編成を発表致しますので、御家族と共に必ず来校して下さい。
アルセイ=サウスト
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