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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

狙いは私よね?

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 いつもと同じ様にAクラスに行く途中だった。

 今にして思い返すと、最初の異変は廊下が水浸しだったことから始まってたと思う。まぁあの時は、ただの悪戯だと思ってたわ。それか、誰かが誤ってこぼしてしまったのだと。

 なので、この時は私が狙いだとも思わなかった。だって、この廊下を使う人間なんて多くいるでしょ。だから、然程気にも止めていなかったわ。

 暫くして、今度は廊下にろうが塗られていた。太陽光に反射してたからすぐに異変に気付いたわ。

 さすがに蝋が塗られているのは悪戯では済まないでしょ。転んで頭を打ったら、最悪死ぬかもしれない。当然、先生に連絡したわ。先生も悪質性を考慮して調べると言った。

 この時点で、殿下は薄々気付いていたみたい。私が狙われてるとーー

 だからか、殿下は私に暫く学園を休むように打診してきた。当然、私は拒否したわ。だって、そんなこと出来る訳ないでしょ。まだ私が狙われたって決まった訳じゃないのに。あくまで可能性の話だ。高いけど。それに仮にそうだったとしても、敵前逃亡なんて絶対に嫌。

 全く折れない私に、殿下がとうとう折れた。溜め息を吐きながら言う。

「……分かった。なら、マリエールに護衛を付ける。それならいいな」

 護衛ね……

「ええ。いいわ」

 特に必要ないと思うけど。最低限自分の身は自分で守れるしね。でもそれを言うと、殿下のことだから無理矢理休ませるに決まってる。最悪周りを巻き込んでの監禁か。なので、ここで妥協しとかないとね。

 それに、まぁ妥当の判断だし。

 勿論、護衛って暗部の方でしょ。影からの護衛プラス隣に立つわけね。でもいいのかな? 一応暗部でしょ。人前に顔を晒していいの? そう尋ねたら、認識阻害魔法を常に掛けてる状態らしいから大丈夫なんだって。だから、別に隣に立ってもいいらしい。顔が認識されないだけで、隣にいるのは分かるからね。ということは、部分的か……まぁ私には効かないけどね。それに、学園内でさすがにジークは目立つから仕方ないわ。それにこれが抑止力になってくれればいいしね。

 さすがの私も、全部を全部、叩き潰そうなんて考えてないよ。時には道を外れることも間違いを犯してしまう時もあるでしょ。人間なんだから。途中で気付いてくれて、反省してくれたらいい。

 そう思ってたんだけど……こういう願いって裏切られることが多いんだよね。

 護衛が付いてから、暫くは何も起きなかった。だけど、

「…………さすがにこれは……アウトよね」

「完全にアウトです」

 階段に蝋が塗られていた。それも一段だけじゃなくて三段も。これは完全に殺意があってのことよね。怪我人がいなくて幸いだわ。

 すぐに暗部の一人が消えた。殿下に知らせに行ったのか。それとも先生に知らせに行ったのか。学園長かもしれない。

「私を狙ったのかしら?」

 階段の一番上で呑気な声で呟く。

 その可能性が濃厚よね。私が一番最初に通り掛かったみたいだし。さすがに三段も塗られてたら、絶対怪我人が出てるか、騒ぎが起きてる筈だからね。

「それは犯人を捕らえたら、自ずと分かることです」

 反対に護衛さんは固い声で答える。

「確かにそうだけど。出来れば、廊下で蝋を塗るまでに留めておいてほしかったわ」

 本音がポロリと出る。

「それもアウトですけどね」

「だけど、退学にならずにはすむでしょ」

 停学一か月ぐらいに厳重注意ぐらいですむよね。

「蝋を塗った時点で退学ですよ」

 返ってきた答えは意外だった。

「それ、厳しくない?」

 思わず尋ねてしまった。

「甘いくらいです」

「そうなの?」

「そうです」

「じゃあ、頭上から植木鉢が落ちてくるのは?」

 試しに訊いてみた。

「勿論、一族諸共死刑ですね」

 可愛い顔でとんでもないことを言う護衛さんです。表情一つ変わらない。見習いたいくらいだわ。

「じゃあ、私も死刑になるわね。だって、植木鉢を落としてきたのはソフィアだからね」

 そう答えると、ほんの一瞬、護衛さんの眉間に皺が寄った。それがちょっと嬉しい。

「被害者は死刑にはなりませんよ」

「それは一安心ね」

 そんな会話をしていたら、殿下と学園長が慌てて飛んできた。

 大声で私の名前を連呼で叫ぶのは止めて下さい、殿下。恥ずかしいですから。




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