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第五章 能力別対抗試合
予選 8
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2次予選当日ーーー
(相変わらず、観戦する生徒が多いなぁ・・・)
2つに区分けされた魔術演習場の一方に、僕は杖を構えて開始の合図を待っていた。1次の時よりもスペースが広く取られているため、魔術の制御に自信が無い魔術師であれば、端の方に出現した標的に対しては接近する必要もある程の広さだった。
そして周りを見渡すと、1次予選以上に演習場の周囲は、集まった生徒で覆い尽くされていた。既に1予選を敗退している者、自分の2次予選の参考にしようとする者等、周囲に集まって観戦している生徒の思惑は様々なはずだ。
はずなのに・・・
(僕に対しては恨み辛みの籠った視線か・・・そんなにノアである存在が1次予選を突破したことが許せないのかね・・・)
僕は集まった生徒達から向けられる視線に辟易としていた。中にはアッシュ達のように純粋に応援の声と眼差しを送ってくれるものもいるが、ほとんどは野次と恨みの籠ったような視線で埋め尽くされている。
とりあえず周囲の事は気にせず、今までの2次予選の内容を振り返って考えてみると、的は高さ1m半程の大きさがあるので、中央に構えていれば、たとえ演習場の端に出現したとしてもギリギリ目視できる。10分で100個の的の破壊なので、平均すれば6秒に1個のペースで出現するのだろうと考えたが、これまでの予選の様子から、間隔はバラバラで、同時に3つも4つも出現することもあった。
その為、的を出現させる魔術師の魔力の流れに注意を向けていないと、的の把握が難しい内容になっている。
実際に2次予選はかなりの難易度があるようで、今まで1年生は20人ほどの生徒が挑戦したが、70個以上破壊したのはたったの2人だった。それもそのはずで、ジーアが言うには例年決勝まで行く生徒は10人前後らしく、よほどの実力がなければこの2次予選は突破できないらしい。
僕の前に予選を行った生徒も、最初のうちは調子良く的を破壊していたのだが、30個を過ぎた辺りから命中精度が下がりだし、50個付近になると息も絶え絶えで魔力切れを起こしていた。その他の生徒達も同様に、次々出現してくる標的に焦るあまり、余分な魔力を使い過ぎているようで、安定して魔術を発動できていないことが窺えた。
(的を100個壊すくらいならまったく問題ないけど、あの先生みたいに僕目掛けて攻撃してくると面倒だな。まぁ、今回は魔術騎士団の人が担当をするようだし、心配ないか・・・)
前回の予選では、ノアに対して恨みでもあるのかと思うくらい僕に対して憎悪を隠そうとしない先生だった。その為、最後の方では直接僕に危害を加えようとしてきたのだが、さすがに騎士の人がそんな事はしないだろうと思いつつも、少しだけ警戒する。
「それでは始めます!準備は良いですか?」
2次予選では3人の魔術師が協力しながら標的の生成を行うため、僕を遠くから取り囲むような感じで派遣された騎士が配置されている。その内の一人が開始を告げようと、僕に声を掛けてきた。
「大丈夫です!お願いします!」
問題ないことを告げると、騎士達は頷きながら手に持っている杖を構え、魔力を込めつつ杖の先端で地面を鳴らした。
その瞬間、それぞれの騎士の魔力が地面を流れ、僕の立つ位置からはバラバラの離れた場所に、複数の的が出現する事を感じ取った。
(よしっ!1つ残らず破壊して、パーフェクトで決勝に行ってやる!)
魔術杖に魔力を流しつつ意気込む僕は、出現する全ての的を破壊するつもりで、火魔術を用いて片っ端から破壊していった。
◆
side ジョシュ・ロイド
「ふふふ・・・これで奴ももう終わりだろう」
俺様は魔術演習場の予選の様子を見ることができる観覧場所で一人、腕を組ながら暗い笑みを浮かべて、これから慌てふためく事になるだろうエイダ・ファンネルの最後を幻視するよう見つめていた。
何せ今回は奴を処分するのに、二重に策を労している。しかも実家の権勢を利用し、学院に派遣させる魔術騎士は今動員できる最高の腕の者が来ているのだ。この予選でケリがつくもよし、そうでなくても別プランが用意されている。
「くくく、今度こそこれで目障りなあいつも見納めだ」
魔術演習場の周りは、ノアの事を邪魔に思う者達で溢れ返り、俺様にとっては気持ちの良い罵声が時折り奴に向けられている。そんな状況の中、予選の始まりの合図のように魔術騎士達が一斉に標的を生成し出した。
(始まったな・・・まずは奴の魔力を削る事が優先だ。最高強度の土魔術を頼むぞ!)
最初に5つ生成された標的は、奴の火魔術によって呆気なく破壊されていたが、俺様とて奴の力を過小評価しているわけではない、その程度の事をやってくる事は想定内だ。
そもそも奴は学院の教員が生成した第四楷悌の土魔術をものともしないという報告を受けている。そればかりか、今までの報告を合わせて読み解けば、奴は火と風と聖の三つの属性を持っていることになる。
さすがに何かの間違いだろうと再調査を命じたが、実際にその魔術を使う現場を目撃した者が多数居り、間違いない事実だと言う。その時は、ノアごときが3つもの属性を持つと言う、近年稀に見る世界の無駄だと呆れたものだ。
(ふっ!あの騎士達をその辺の魔術師と思うなよ?実戦の場で鍛えられ、研ぎ澄まされてきた精鋭達だ。いくらお前がノアとして規格外だとしても、地力が違うんだよ!)
そう余裕の笑みを浮かべていたが、俺様の思いとは裏腹に奴は標的をどんどんと破壊している。いや、破壊しているだけならいいが、問題はそのペースと正確さだ。
(・・・おかしい。いくらなんでも標的を見つけるのが早過ぎる。それに、全て一撃で破壊するどころか、今だ一撃も外していないだと?)
どれ程優れた魔術師であっても、魔力の流れを読むのは至難の技だと聞く。魔力を持たない俺様には理解できないことだが、魔術師は相手の魔力の流れをうっすらと知覚することができるらしい。
そうして知覚した相手の魔力の状態で、魔術をどこに発動させようとしているかどうか等の判断ができるらしいが、それにはかなりの技量を要するもののはずだ。
(チッ!もしやあいつ、それほどの技量の持ち主だと言うのか!?さすがに、あの標的を見つけるまでの素早さを偶然と思うほど俺様も無能ではないからな・・・)
忌々しくも、奴はそれほどの実力を有していると言うことだ。
(なるほど、なるほど。剣術のみならず、魔術も高い技量を有しているか・・・正面切っては不利のようだな・・・さて、あの店はどう作戦を立ててくるつもりかな?)
高みの見物をしている俺様にとっては、過程などどうでもよかった。奴を消したという結果さえあれば、それまでの愚行は水に流すと伝えてある。しかし、その結果さえ達成できなければあの店、いや、あの店が雇っている屑共には生きる資格などない。その為、失敗が許されない今回は、文字通り奴等も死ぬ気で働くだろう。
(馬鹿とハサミは使いよう、ノアと汚れ仕事もその通りだな!くくく・・・これこそまさに適材適所という言葉に相応しい)
どのみち奴らは俺様の依頼をしくじったという失態を犯している関係上、早々に処分を指示するつもりだったが、あの店主は最後に良い利用法方を思い付いてくれたものだ。
(あのノア共、そんなに捕まったお仲間を助け出したいのかね・・・心配せずとも早いか遅いかだけで、結局全員の行く道は同じだというのに)
守る事など微塵も考えていない約束事をチラつかせただけで、奴等が目の色を変えていたのを思い出す。所詮は人間のなりそこないのノアということだろう。浅慮な事、この上ない。
「それにしても・・・」
しばらくそんな思考に耽っていると、奴の予選も終わりに差し掛かっているようだった。手元の懐中時計を確認すると、開始してから5分あまりだろうか、奴は特に疲れを見せること無く次々と標的を破壊していた。想定通りの展開とはいえ、気分の良いものではないのもまた事実だ。
「チッ!いくら消すと言っても、せめて奴にはちゃんと醜態を晒させてから消えて欲しいものだ!」
私をこうも苛立たせる理由は、周囲かから聞こえてくる奴の評価が変わりつつあるからだった。
「お、おい、あいつ何者だよ?」
「ノアじゃなかったのかよ?何だよあいつ?出現した瞬間に、標的を正確に一撃で破壊してるぞ?」
「ってか、そもそも土魔術に火魔術って相性悪くね?何で一撃で破壊できてんだよ?」
「ね、ねぇ?ノアって実は言うほど能力が低いって訳じゃないの?」
「し、知らないわよ!あの子が特殊なんじゃないの?」
奴の予選開始直前まで罵声を飛ばしていた者達は、自分の目にした景色が信じられないと言わんばかりの表情で、近くの者達とヒソヒソ話していた。その話している内容から、ノア全体の評価だけではなく、奴個人の評価も良くなりつつある現状に怒りがこみ上げてくる。
(チッ!バカ共が!惑わされおって!!ノアという存在である奴を評価するなど、この社会の根幹を疑問視するほどの愚考だぞ!!知能の低い愚か者共が!!!)
この共和国の歴史、成り立ちを知らない能無し共に、ほとほと呆れてしまう。何故ノアという存在がこれほど卑下されるようになったのか、そこには当然の理由があるというのに、目の前の異端児のせいで、その考えに疑問が生じてしまっている。
(やはり奴は危険だ!エレインだけではない、民衆までも混乱に陥れているようだ。罪状はどうするか・・・国家反逆罪?内乱罪?まぁいい、適当な罪状を進言しておくか!)
考えを纏めた俺様は演習場から目を離し、観戦していた場所から静かに歩き出した。怒りから自らの拳を力一杯握りしめると、もう一度演習場に顔を向け、魔術部門の予選が終わった奴が、笑顔で手を上げた視線の先に映る人物を再度確認して、憎しみにうち震えた。
「エレイン・・・お前のその笑顔も心も身体も全て、必ず俺様のものにしてやる!!」
そして、二度と振り返ることなく足早にその場をあとにしたのだった。
(相変わらず、観戦する生徒が多いなぁ・・・)
2つに区分けされた魔術演習場の一方に、僕は杖を構えて開始の合図を待っていた。1次の時よりもスペースが広く取られているため、魔術の制御に自信が無い魔術師であれば、端の方に出現した標的に対しては接近する必要もある程の広さだった。
そして周りを見渡すと、1次予選以上に演習場の周囲は、集まった生徒で覆い尽くされていた。既に1予選を敗退している者、自分の2次予選の参考にしようとする者等、周囲に集まって観戦している生徒の思惑は様々なはずだ。
はずなのに・・・
(僕に対しては恨み辛みの籠った視線か・・・そんなにノアである存在が1次予選を突破したことが許せないのかね・・・)
僕は集まった生徒達から向けられる視線に辟易としていた。中にはアッシュ達のように純粋に応援の声と眼差しを送ってくれるものもいるが、ほとんどは野次と恨みの籠ったような視線で埋め尽くされている。
とりあえず周囲の事は気にせず、今までの2次予選の内容を振り返って考えてみると、的は高さ1m半程の大きさがあるので、中央に構えていれば、たとえ演習場の端に出現したとしてもギリギリ目視できる。10分で100個の的の破壊なので、平均すれば6秒に1個のペースで出現するのだろうと考えたが、これまでの予選の様子から、間隔はバラバラで、同時に3つも4つも出現することもあった。
その為、的を出現させる魔術師の魔力の流れに注意を向けていないと、的の把握が難しい内容になっている。
実際に2次予選はかなりの難易度があるようで、今まで1年生は20人ほどの生徒が挑戦したが、70個以上破壊したのはたったの2人だった。それもそのはずで、ジーアが言うには例年決勝まで行く生徒は10人前後らしく、よほどの実力がなければこの2次予選は突破できないらしい。
僕の前に予選を行った生徒も、最初のうちは調子良く的を破壊していたのだが、30個を過ぎた辺りから命中精度が下がりだし、50個付近になると息も絶え絶えで魔力切れを起こしていた。その他の生徒達も同様に、次々出現してくる標的に焦るあまり、余分な魔力を使い過ぎているようで、安定して魔術を発動できていないことが窺えた。
(的を100個壊すくらいならまったく問題ないけど、あの先生みたいに僕目掛けて攻撃してくると面倒だな。まぁ、今回は魔術騎士団の人が担当をするようだし、心配ないか・・・)
前回の予選では、ノアに対して恨みでもあるのかと思うくらい僕に対して憎悪を隠そうとしない先生だった。その為、最後の方では直接僕に危害を加えようとしてきたのだが、さすがに騎士の人がそんな事はしないだろうと思いつつも、少しだけ警戒する。
「それでは始めます!準備は良いですか?」
2次予選では3人の魔術師が協力しながら標的の生成を行うため、僕を遠くから取り囲むような感じで派遣された騎士が配置されている。その内の一人が開始を告げようと、僕に声を掛けてきた。
「大丈夫です!お願いします!」
問題ないことを告げると、騎士達は頷きながら手に持っている杖を構え、魔力を込めつつ杖の先端で地面を鳴らした。
その瞬間、それぞれの騎士の魔力が地面を流れ、僕の立つ位置からはバラバラの離れた場所に、複数の的が出現する事を感じ取った。
(よしっ!1つ残らず破壊して、パーフェクトで決勝に行ってやる!)
魔術杖に魔力を流しつつ意気込む僕は、出現する全ての的を破壊するつもりで、火魔術を用いて片っ端から破壊していった。
◆
side ジョシュ・ロイド
「ふふふ・・・これで奴ももう終わりだろう」
俺様は魔術演習場の予選の様子を見ることができる観覧場所で一人、腕を組ながら暗い笑みを浮かべて、これから慌てふためく事になるだろうエイダ・ファンネルの最後を幻視するよう見つめていた。
何せ今回は奴を処分するのに、二重に策を労している。しかも実家の権勢を利用し、学院に派遣させる魔術騎士は今動員できる最高の腕の者が来ているのだ。この予選でケリがつくもよし、そうでなくても別プランが用意されている。
「くくく、今度こそこれで目障りなあいつも見納めだ」
魔術演習場の周りは、ノアの事を邪魔に思う者達で溢れ返り、俺様にとっては気持ちの良い罵声が時折り奴に向けられている。そんな状況の中、予選の始まりの合図のように魔術騎士達が一斉に標的を生成し出した。
(始まったな・・・まずは奴の魔力を削る事が優先だ。最高強度の土魔術を頼むぞ!)
最初に5つ生成された標的は、奴の火魔術によって呆気なく破壊されていたが、俺様とて奴の力を過小評価しているわけではない、その程度の事をやってくる事は想定内だ。
そもそも奴は学院の教員が生成した第四楷悌の土魔術をものともしないという報告を受けている。そればかりか、今までの報告を合わせて読み解けば、奴は火と風と聖の三つの属性を持っていることになる。
さすがに何かの間違いだろうと再調査を命じたが、実際にその魔術を使う現場を目撃した者が多数居り、間違いない事実だと言う。その時は、ノアごときが3つもの属性を持つと言う、近年稀に見る世界の無駄だと呆れたものだ。
(ふっ!あの騎士達をその辺の魔術師と思うなよ?実戦の場で鍛えられ、研ぎ澄まされてきた精鋭達だ。いくらお前がノアとして規格外だとしても、地力が違うんだよ!)
そう余裕の笑みを浮かべていたが、俺様の思いとは裏腹に奴は標的をどんどんと破壊している。いや、破壊しているだけならいいが、問題はそのペースと正確さだ。
(・・・おかしい。いくらなんでも標的を見つけるのが早過ぎる。それに、全て一撃で破壊するどころか、今だ一撃も外していないだと?)
どれ程優れた魔術師であっても、魔力の流れを読むのは至難の技だと聞く。魔力を持たない俺様には理解できないことだが、魔術師は相手の魔力の流れをうっすらと知覚することができるらしい。
そうして知覚した相手の魔力の状態で、魔術をどこに発動させようとしているかどうか等の判断ができるらしいが、それにはかなりの技量を要するもののはずだ。
(チッ!もしやあいつ、それほどの技量の持ち主だと言うのか!?さすがに、あの標的を見つけるまでの素早さを偶然と思うほど俺様も無能ではないからな・・・)
忌々しくも、奴はそれほどの実力を有していると言うことだ。
(なるほど、なるほど。剣術のみならず、魔術も高い技量を有しているか・・・正面切っては不利のようだな・・・さて、あの店はどう作戦を立ててくるつもりかな?)
高みの見物をしている俺様にとっては、過程などどうでもよかった。奴を消したという結果さえあれば、それまでの愚行は水に流すと伝えてある。しかし、その結果さえ達成できなければあの店、いや、あの店が雇っている屑共には生きる資格などない。その為、失敗が許されない今回は、文字通り奴等も死ぬ気で働くだろう。
(馬鹿とハサミは使いよう、ノアと汚れ仕事もその通りだな!くくく・・・これこそまさに適材適所という言葉に相応しい)
どのみち奴らは俺様の依頼をしくじったという失態を犯している関係上、早々に処分を指示するつもりだったが、あの店主は最後に良い利用法方を思い付いてくれたものだ。
(あのノア共、そんなに捕まったお仲間を助け出したいのかね・・・心配せずとも早いか遅いかだけで、結局全員の行く道は同じだというのに)
守る事など微塵も考えていない約束事をチラつかせただけで、奴等が目の色を変えていたのを思い出す。所詮は人間のなりそこないのノアということだろう。浅慮な事、この上ない。
「それにしても・・・」
しばらくそんな思考に耽っていると、奴の予選も終わりに差し掛かっているようだった。手元の懐中時計を確認すると、開始してから5分あまりだろうか、奴は特に疲れを見せること無く次々と標的を破壊していた。想定通りの展開とはいえ、気分の良いものではないのもまた事実だ。
「チッ!いくら消すと言っても、せめて奴にはちゃんと醜態を晒させてから消えて欲しいものだ!」
私をこうも苛立たせる理由は、周囲かから聞こえてくる奴の評価が変わりつつあるからだった。
「お、おい、あいつ何者だよ?」
「ノアじゃなかったのかよ?何だよあいつ?出現した瞬間に、標的を正確に一撃で破壊してるぞ?」
「ってか、そもそも土魔術に火魔術って相性悪くね?何で一撃で破壊できてんだよ?」
「ね、ねぇ?ノアって実は言うほど能力が低いって訳じゃないの?」
「し、知らないわよ!あの子が特殊なんじゃないの?」
奴の予選開始直前まで罵声を飛ばしていた者達は、自分の目にした景色が信じられないと言わんばかりの表情で、近くの者達とヒソヒソ話していた。その話している内容から、ノア全体の評価だけではなく、奴個人の評価も良くなりつつある現状に怒りがこみ上げてくる。
(チッ!バカ共が!惑わされおって!!ノアという存在である奴を評価するなど、この社会の根幹を疑問視するほどの愚考だぞ!!知能の低い愚か者共が!!!)
この共和国の歴史、成り立ちを知らない能無し共に、ほとほと呆れてしまう。何故ノアという存在がこれほど卑下されるようになったのか、そこには当然の理由があるというのに、目の前の異端児のせいで、その考えに疑問が生じてしまっている。
(やはり奴は危険だ!エレインだけではない、民衆までも混乱に陥れているようだ。罪状はどうするか・・・国家反逆罪?内乱罪?まぁいい、適当な罪状を進言しておくか!)
考えを纏めた俺様は演習場から目を離し、観戦していた場所から静かに歩き出した。怒りから自らの拳を力一杯握りしめると、もう一度演習場に顔を向け、魔術部門の予選が終わった奴が、笑顔で手を上げた視線の先に映る人物を再度確認して、憎しみにうち震えた。
「エレイン・・・お前のその笑顔も心も身体も全て、必ず俺様のものにしてやる!!」
そして、二度と振り返ることなく足早にその場をあとにしたのだった。
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