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第2章 教会の子供たち

第14話

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庭から来た神父を見た途端、少年はビクリと肩を震わせそのまま回れ右する。

「えっ、きみ?」

思わず呼び止めたけれど無駄だった。
彼はさっきまで一人では帰りづらそうにしていたのに、今は脱兎だっとのごとく去っていき、ドアの向こうへ消えてしまった。

ユァンは唖然あぜんとして、閉じたドアを見つめる。

「どうしたね?」

後ろから来た神父がユァンの肩に手を乗せた。

「あ……」

不穏な空気を感じ、ユァンは恐る恐る振り向く。
銀色の仮面が燭台しょくだいの灯りを映し、ゆらゆらと不気味な光を反射していた。

「友達は行ってしまったのかね?」

神父の声が聞いてくる。友達とはさっきの少年のことだろう。

「彼はシスターからご用を言いつかっていたのを思い出して……それで先に……」

彼が挨拶もなく帰っていったことを責められてはいけない。
そんな思いから、ユァンはとっさに言い訳した。

「……そうか、まあいい」

銀仮面の向こうの目がすっと細められる。

「じゃあ、君は1人か」
「え……?」

嫌な予感がして周りを見ると、いつの間にか広間に子供はいなくなっていた。

「おいで、私と一緒に花火をしよう」

神父に手を握られる。

(ど、どうしよう……2人で過ごしたら、さすがに正体に気づかれる!)

だからといって、手を振りほどく勇気もユァンにはない。
そして対応に困っているうちに、神父に手を引かれて庭へ連れ出された。

春の夜、木々に囲まれた庭は暗く、まだ少し肌寒い。
遠くでパチパチと、手持ち花火の音がした。
庭木の向こうに見える花火の光が遠い。
子供たちが遊んでいるのとは、別の方角の庭に出てきてしまったようだ。

「みんなのところへ行きましょう……」

ユァンは神父の注意を逸らそうと、人の集まっている方へ行こうとする。
ところが神父が手をつかんだまま放そうとしなかった。

「あの……?」
「それより私と話をしよう」

そのまま低い木の下に引き込まれる。
入り組んだ枝に、匂い立つ赤い花がついていた。

「君は、神を信じるかな?」

耳の後ろでペティエ神父の声がした。

「……はい、ブラザー……」

返事をすると、耳の後ろに笑うような吐息がかかる。

「こっちを向いて、仮面を取ってごらん」

ユァンは振り返ることができなかった。
ここで仮面を取るわけにはいかない。

「どうした? 顔は見せたくないのか?」

養護院の制服を着ているユァンの肩の上に、ペティエ神父が単語ルビ顎を乗せてくる。
仮面に覆われていない神父の口元が、ざらりとした感触とともにユァンの頬にぶつかった。
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