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二度目の話
閑話 私が死んだ後 6
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王太子殿下side
それは偶然のことだった。
私との婚姻のために、隣国からやって来たばかりのデイジー王女を喜ばせたいと思い、庭園で摘んできた花を届けに行った時のことである。
「王女殿下、やっと来月には結婚できますね!
王女殿下が一目惚れしただけあって、王太子殿下はとても素敵な方ですわ!
幸せになって下さいね。」
部屋にいる王女とメイドの話し声が聞こえてきてしまった。
立ち聞きも悪いから、出直した方がいいか?
しかし…、一目惚れと聞こえた。何かが引っかかる。
「そうでしょ?この私にふさわしいのは殿下しかいないわよ。
この私が一目惚れしたのに、殿下の隣には婚約者がいたから、何度も暗殺者を送ってやったのに…。しぶとく生きているからイライラしていたけど、良い感じに同盟の話をチラつかせて婚約出来て良かったわ。
お父様には感謝ね。」
暗殺と聞こえた…
アナに暗殺者を送り込んでいたのは…
「そうですね。王女殿下に協力してくれた国王陛下とフロスト卿はさすがですわ!」
「そうねー!私が嘘泣きで協力してほしいと言ったら、あっさり落ちてくれたから良かったわ。」
「こんなに美しくて、可愛い王女殿下に泣いて懇願されて、落ちない殿方はいませんわよ。
王女殿下が王妃様になったら、フロスト卿を宰相にするのですか?」
「その約束だから、殿下が国王に即位する時にはそれとなく頼んでみるつもりよ。
フロスト卿はもう私の体に落ちてしまったから、私の言うことは何でも聞いてくれるはずよ。これからもいいように使ってやるわ。体の相性もいいのよねー。
殿下の世継ぎを産んだ後は、彼を私の情夫にしようかしら?」
「ふふっ…。王女殿下ってば、本当に小悪魔ですわね。」
「殿下が元婚約者を忘れられないと聞いていたから不安だったけど、あの女は公爵家に嫁いで、すぐに死んだらしいじゃないの。
余りに目障りだったら、公爵家に暗殺者でも送り込んでやろうかと考えていたけど、死んでくれて良かったわよー。
やっぱり私は、神様に愛されているみたいだわ。」
なんてことだ…。体が震えそうになる。
後ろで険しい顔をしているロイド卿に目配せをした私は、何とかその場を黙って立ち去った。
その後、私は影に命じて、私の側近の一人であったフロスト卿の調査と監視をすることにした。
それで分かったことは、フロスト卿はデイジー王女と密会していて、男女の関係であるということだった。
随分前から二人は繋がっていたと考えられ、まだ私がアナと婚約していた時に、隣国の王子と王女達が外遊で来られた時からの関係だったのではないかと推測された。
今振り返ると、隣国との同盟目的での王女との婚姻について、初めに声を上げたのはフロスト侯爵家と同じ派閥の家門だった。
始めから隣国と裏で手を組んでいたのだ。
自分達に都合の良い者を王太子妃にして、いずれは自分達の都合のいいように国政を動かすために。
隣国については、王家でも色々調査をして決めた政略結婚であったが、デイジー第二王女は聡明で慈悲深い王女として、国民や貴族から慕われている素晴らしい王女だという調査結果だったと思う。
しかしそれは、フロスト卿かその派閥の貴族によって、情報操作されたものであったに違いない。
そんなことにも気付かずにいたのか…。
私はそれで大切なアナを失ったのだな。
『王太子殿下。貴方様が大切になさっていた元婚約者の方の話をお聞きして、私は大変心を痛めております。
私も幼い頃からの婚約者がいた身ですので、殿下のお気持ちは理解しておりますわ。
しかし私達は国を背負う身。少しずつ信頼関係を築き、いつかは愛のある夫婦になれましたら、私は嬉しく思います。』
デイジー王女は、清らかな雰囲気を持つ、美しい姫に見えた。
私の過去にまで心を痛めてくれるような優しい人だ。この人となら良い夫婦になれるだろうと期待していたのだが、とんでもない悪女だったようだ。
このままやられるわけにはいかない。アナのためにも、国のためにも。
あの女をこの国の王妃にはさせない。
私は急ぎであの男を呼ぶことにした。
それは偶然のことだった。
私との婚姻のために、隣国からやって来たばかりのデイジー王女を喜ばせたいと思い、庭園で摘んできた花を届けに行った時のことである。
「王女殿下、やっと来月には結婚できますね!
王女殿下が一目惚れしただけあって、王太子殿下はとても素敵な方ですわ!
幸せになって下さいね。」
部屋にいる王女とメイドの話し声が聞こえてきてしまった。
立ち聞きも悪いから、出直した方がいいか?
しかし…、一目惚れと聞こえた。何かが引っかかる。
「そうでしょ?この私にふさわしいのは殿下しかいないわよ。
この私が一目惚れしたのに、殿下の隣には婚約者がいたから、何度も暗殺者を送ってやったのに…。しぶとく生きているからイライラしていたけど、良い感じに同盟の話をチラつかせて婚約出来て良かったわ。
お父様には感謝ね。」
暗殺と聞こえた…
アナに暗殺者を送り込んでいたのは…
「そうですね。王女殿下に協力してくれた国王陛下とフロスト卿はさすがですわ!」
「そうねー!私が嘘泣きで協力してほしいと言ったら、あっさり落ちてくれたから良かったわ。」
「こんなに美しくて、可愛い王女殿下に泣いて懇願されて、落ちない殿方はいませんわよ。
王女殿下が王妃様になったら、フロスト卿を宰相にするのですか?」
「その約束だから、殿下が国王に即位する時にはそれとなく頼んでみるつもりよ。
フロスト卿はもう私の体に落ちてしまったから、私の言うことは何でも聞いてくれるはずよ。これからもいいように使ってやるわ。体の相性もいいのよねー。
殿下の世継ぎを産んだ後は、彼を私の情夫にしようかしら?」
「ふふっ…。王女殿下ってば、本当に小悪魔ですわね。」
「殿下が元婚約者を忘れられないと聞いていたから不安だったけど、あの女は公爵家に嫁いで、すぐに死んだらしいじゃないの。
余りに目障りだったら、公爵家に暗殺者でも送り込んでやろうかと考えていたけど、死んでくれて良かったわよー。
やっぱり私は、神様に愛されているみたいだわ。」
なんてことだ…。体が震えそうになる。
後ろで険しい顔をしているロイド卿に目配せをした私は、何とかその場を黙って立ち去った。
その後、私は影に命じて、私の側近の一人であったフロスト卿の調査と監視をすることにした。
それで分かったことは、フロスト卿はデイジー王女と密会していて、男女の関係であるということだった。
随分前から二人は繋がっていたと考えられ、まだ私がアナと婚約していた時に、隣国の王子と王女達が外遊で来られた時からの関係だったのではないかと推測された。
今振り返ると、隣国との同盟目的での王女との婚姻について、初めに声を上げたのはフロスト侯爵家と同じ派閥の家門だった。
始めから隣国と裏で手を組んでいたのだ。
自分達に都合の良い者を王太子妃にして、いずれは自分達の都合のいいように国政を動かすために。
隣国については、王家でも色々調査をして決めた政略結婚であったが、デイジー第二王女は聡明で慈悲深い王女として、国民や貴族から慕われている素晴らしい王女だという調査結果だったと思う。
しかしそれは、フロスト卿かその派閥の貴族によって、情報操作されたものであったに違いない。
そんなことにも気付かずにいたのか…。
私はそれで大切なアナを失ったのだな。
『王太子殿下。貴方様が大切になさっていた元婚約者の方の話をお聞きして、私は大変心を痛めております。
私も幼い頃からの婚約者がいた身ですので、殿下のお気持ちは理解しておりますわ。
しかし私達は国を背負う身。少しずつ信頼関係を築き、いつかは愛のある夫婦になれましたら、私は嬉しく思います。』
デイジー王女は、清らかな雰囲気を持つ、美しい姫に見えた。
私の過去にまで心を痛めてくれるような優しい人だ。この人となら良い夫婦になれるだろうと期待していたのだが、とんでもない悪女だったようだ。
このままやられるわけにはいかない。アナのためにも、国のためにも。
あの女をこの国の王妃にはさせない。
私は急ぎであの男を呼ぶことにした。
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