文字の大きさ
大
中
小
27 / 106
連載
閑話 王弟アルベルト
リーゼへの気持ちを自覚した私は、何とか彼女と仲良くなりたいと思うのだが、なかなか上手くいかずに、苦しむことになる。
そんな時に耳に入って来たのは、マクファーデン公爵令嬢がリーゼに嫌がらせをしているという話だった。
正直、またか……と思った。
あの女は、元オルダー伯爵令嬢とは違ったやり方で、取り巻きの令嬢を上手く使いながら、私と交流のある令嬢に嫌がらせをしてくる。
そんなことが続くと、元々、令嬢方と関わることが面倒だった私は、余計に令嬢方と関わろうなどという気は起きなくなっていた。
しかし、リーゼのことは別だ。
私は本気で彼女が好きだし、仲良くなりたいと思っている。
あの女は、そんな私を邪魔するということか。
そんな苛立つ私に、助け船を出してくれたのは、義理の姉である王妃殿下だった。
王妃殿下は、私が物心つく前には兄の婚約者として身近にいるのが当たり前だったので、義理の姉というよりは、本当の姉のような存在であった。
「ふふっ……。臣下という立場を忘れ、我が義弟の遅すぎる初恋を邪魔する、身の程知らずの小娘は、私の方から警告をしておいてあげるわ。」
「遅すぎる初恋だなんて、少し恥ずかしいですが……。
王妃殿下、感謝しております。」
「だけど、私が貴方に協力するだけではダメなのよ。
アルベルト自身がエリーゼに受け入れてもらえるように頑張らないと。
それに、周りからエリーゼを守るためには、貴方が何をすべきなのかをよく考えなさい。
ただ好きな気持ちだけでは、大切な人は守れないのよ。」
「はい。私の考えが甘いことは理解しております。」
王妃殿下はすぐに茶会を主催して、沢山の令嬢達がいる前で、マクファーデン公爵令嬢や取り巻き達がしていたことを断罪したらしい。
これは、王妃殿下じゃないと出来ないことだったから、正直助かったと思う。
その茶会の後、あの憎いマクファーデン公爵令嬢は謹慎しているようで、しばらく社交を休んでいるらしいし、王宮内にやって来て、偶然を装い、私を待ち伏せすることもなくなったのだった。
「アルベルト。貴方とエリーゼが恋仲だとか噂があるようだけど、その噂は否定せずに傍観することにしたわ。
その方が、他の令息達はエリーゼに手を出しにくいでしょ?
私がするのはここまでよ。あとは自分で頑張りなさいな。」
「はい。ありがとうございます。」
しかし、どうすれば良いのか分からない私は、仲の良い側近達に相談することにした。
それで言われたのは、私の気持ちが伝わるように、何かプレゼントをしてはどうかということだった。
そういえば、クリスティーナが話していたが、リーゼと仲の良いオルダー伯爵は、ガーベラをプレゼントしていたと言っていた。確か、ピンクとか白のガーベラだったと言っていたな……。
気になった私は、わざわざ王宮の古株の庭師の所まで行き、ガーベラのことを聞いていた。
「ガーベラも色によって花言葉があるのですよ。
ピンクと白のガーベラですか?
確か、ピンクが感謝で、白が希望だったかと。
贈り物にするには、可愛らしくて無難な花だと思います。」
「そうか……。助かった。ありがとう。」
あの真面目なオルダー伯爵らしい選択だと思った。
そんなところが、クリフォード侯爵や夫人に好かれているのかもしれない。
「王弟殿下が思いを寄せる方にプレゼントされるなら、私は赤い薔薇をお勧め致します。
必要な時は、最高の薔薇をご用意致しますから、いつでも声を掛けて下さい。」
「薔薇か!確かに華やかで美しい彼女にはピッタリだな。」
「ええ。愛をお伝えするなら、赤い薔薇がお勧めですよ。」
「……その時は、よろしく頼む。」
「王弟殿下がそのようなことを、わざわざ私に聞きに来てくれたことは初めてのことなので、この老いぼれは嬉しくて仕方がありません。
ぜひ協力させて下さい。」
「ああ。頼んだ!」
それから数日後には、王宮の使用人達の間で、また私が噂になっていたようだ。
あの庭師の爺がバラしたのだろう。
後日、私はクリスティーナと一緒にリーゼの邸に行き、101本の赤い薔薇をプレゼントしていた。
しかしその後、耳にしたのは、クリフォード侯爵家が、縁談相手を探しているということだった。
薔薇だけでは駄目だということだな。きちんと私の気持ちを言葉で伝えておく必要がある。
そう考えた私は、デビュタントの夜会でリーゼをダンスに誘い、二人で話をする計画を立てるのだが、リーゼの義兄であるクリフォード卿の妨害に合うのであった。
クリフォード卿は私より一つ年上で、頭の切れる男だ。
知的な雰囲気の美丈夫で、筆頭侯爵家の嫡男として、令嬢方に大人気だった。
大人気だった……と、過去形なのは、クリフォード卿は色々な令嬢に言い寄られ、重度の女嫌いになってしまい、令嬢に対して酷い態度を取るようになってからは、令嬢は誰も近付かなくなってしまったからだ。
あの女嫌いのクリフォード卿が、義理の妹のリーゼをエスコートしているのも驚きだったが、リーゼを見つめる目が、他の令嬢を見る目と大きく違うことに気付いてしまった。
リーゼの体調を気遣い、優しく接する姿は、仲の良い兄妹や、親しい友人関係のように見えた。
あのクリフォード卿が……。
信じられない!
私以外の者達も、クリフォード卿の変化に驚いているようだった。
その時私は、リーゼとの関係を前進させるために一番の障壁となるのは、このクリフォード卿かもしれないと、直感的に感じたのであった。
そんな時に耳に入って来たのは、マクファーデン公爵令嬢がリーゼに嫌がらせをしているという話だった。
正直、またか……と思った。
あの女は、元オルダー伯爵令嬢とは違ったやり方で、取り巻きの令嬢を上手く使いながら、私と交流のある令嬢に嫌がらせをしてくる。
そんなことが続くと、元々、令嬢方と関わることが面倒だった私は、余計に令嬢方と関わろうなどという気は起きなくなっていた。
しかし、リーゼのことは別だ。
私は本気で彼女が好きだし、仲良くなりたいと思っている。
あの女は、そんな私を邪魔するということか。
そんな苛立つ私に、助け船を出してくれたのは、義理の姉である王妃殿下だった。
王妃殿下は、私が物心つく前には兄の婚約者として身近にいるのが当たり前だったので、義理の姉というよりは、本当の姉のような存在であった。
「ふふっ……。臣下という立場を忘れ、我が義弟の遅すぎる初恋を邪魔する、身の程知らずの小娘は、私の方から警告をしておいてあげるわ。」
「遅すぎる初恋だなんて、少し恥ずかしいですが……。
王妃殿下、感謝しております。」
「だけど、私が貴方に協力するだけではダメなのよ。
アルベルト自身がエリーゼに受け入れてもらえるように頑張らないと。
それに、周りからエリーゼを守るためには、貴方が何をすべきなのかをよく考えなさい。
ただ好きな気持ちだけでは、大切な人は守れないのよ。」
「はい。私の考えが甘いことは理解しております。」
王妃殿下はすぐに茶会を主催して、沢山の令嬢達がいる前で、マクファーデン公爵令嬢や取り巻き達がしていたことを断罪したらしい。
これは、王妃殿下じゃないと出来ないことだったから、正直助かったと思う。
その茶会の後、あの憎いマクファーデン公爵令嬢は謹慎しているようで、しばらく社交を休んでいるらしいし、王宮内にやって来て、偶然を装い、私を待ち伏せすることもなくなったのだった。
「アルベルト。貴方とエリーゼが恋仲だとか噂があるようだけど、その噂は否定せずに傍観することにしたわ。
その方が、他の令息達はエリーゼに手を出しにくいでしょ?
私がするのはここまでよ。あとは自分で頑張りなさいな。」
「はい。ありがとうございます。」
しかし、どうすれば良いのか分からない私は、仲の良い側近達に相談することにした。
それで言われたのは、私の気持ちが伝わるように、何かプレゼントをしてはどうかということだった。
そういえば、クリスティーナが話していたが、リーゼと仲の良いオルダー伯爵は、ガーベラをプレゼントしていたと言っていた。確か、ピンクとか白のガーベラだったと言っていたな……。
気になった私は、わざわざ王宮の古株の庭師の所まで行き、ガーベラのことを聞いていた。
「ガーベラも色によって花言葉があるのですよ。
ピンクと白のガーベラですか?
確か、ピンクが感謝で、白が希望だったかと。
贈り物にするには、可愛らしくて無難な花だと思います。」
「そうか……。助かった。ありがとう。」
あの真面目なオルダー伯爵らしい選択だと思った。
そんなところが、クリフォード侯爵や夫人に好かれているのかもしれない。
「王弟殿下が思いを寄せる方にプレゼントされるなら、私は赤い薔薇をお勧め致します。
必要な時は、最高の薔薇をご用意致しますから、いつでも声を掛けて下さい。」
「薔薇か!確かに華やかで美しい彼女にはピッタリだな。」
「ええ。愛をお伝えするなら、赤い薔薇がお勧めですよ。」
「……その時は、よろしく頼む。」
「王弟殿下がそのようなことを、わざわざ私に聞きに来てくれたことは初めてのことなので、この老いぼれは嬉しくて仕方がありません。
ぜひ協力させて下さい。」
「ああ。頼んだ!」
それから数日後には、王宮の使用人達の間で、また私が噂になっていたようだ。
あの庭師の爺がバラしたのだろう。
後日、私はクリスティーナと一緒にリーゼの邸に行き、101本の赤い薔薇をプレゼントしていた。
しかしその後、耳にしたのは、クリフォード侯爵家が、縁談相手を探しているということだった。
薔薇だけでは駄目だということだな。きちんと私の気持ちを言葉で伝えておく必要がある。
そう考えた私は、デビュタントの夜会でリーゼをダンスに誘い、二人で話をする計画を立てるのだが、リーゼの義兄であるクリフォード卿の妨害に合うのであった。
クリフォード卿は私より一つ年上で、頭の切れる男だ。
知的な雰囲気の美丈夫で、筆頭侯爵家の嫡男として、令嬢方に大人気だった。
大人気だった……と、過去形なのは、クリフォード卿は色々な令嬢に言い寄られ、重度の女嫌いになってしまい、令嬢に対して酷い態度を取るようになってからは、令嬢は誰も近付かなくなってしまったからだ。
あの女嫌いのクリフォード卿が、義理の妹のリーゼをエスコートしているのも驚きだったが、リーゼを見つめる目が、他の令嬢を見る目と大きく違うことに気付いてしまった。
リーゼの体調を気遣い、優しく接する姿は、仲の良い兄妹や、親しい友人関係のように見えた。
あのクリフォード卿が……。
信じられない!
私以外の者達も、クリフォード卿の変化に驚いているようだった。
その時私は、リーゼとの関係を前進させるために一番の障壁となるのは、このクリフォード卿かもしれないと、直感的に感じたのであった。
感想
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫の幼馴染に家も財産も奪われたので、彼女が捨てた兄妹を連れて出ていきます〜辺境伯家の住み込み家政婦になった今、戻れと言われてももう遅い~
他力本願寺夫の幼馴染に家も財産も奪われ、身一つで追い出されたアリシア。
しかし雨の宿場町で、その幼馴染が実子の幼い兄妹を置き去りにした現場を目撃する。
「私が守る」――血の繋がらないエミルとリリィを連れ、彼女は辺境伯家で住み込み家政婦として生き抜くことを選んだ。
帳簿と観察力、揺るぎない実務能力を武器に屋敷を立て直し、偏屈だが真っ直ぐな辺境伯ヴィルヘルムの信頼を得るアリシア。
子どもたちに「先生」と呼ばれ、家族のような温かさに包まれながら、彼との心の距離も静かに縮まっていく。
やがて王都から元夫と幼馴染が「戻ってきてほしい」と懇願してくるが――。
アリシアは静かに微笑み、こう告げた。
「もう、遅いわ」
追放された有能妻が、子どもたちとの家族愛と辺境伯との恋で本当の幸せを掴む、ざまぁと甘さの両方を味わえる完全復讐再生ラブストーリー。全40話。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
婚約破棄された翌日、王家の紋章が私の腕に現れました
あめとおと
伯爵令嬢エレノアは、王都の舞踏会で婚約者から突然の婚約破棄を告げられる。
理由は「平凡で地味だから」。
さらに彼は新たな恋人を伴い、人前でエレノアを侮辱した。
失意のまま屋敷へ戻った翌朝――。
エレノアの左腕に、見たことのない黄金の紋章が浮かび上がる。
それは王家の直系だけに現れるという“継承の紋章”だった。
混乱する彼女のもとへ現れたのは王国騎士団。
そして告げられる。
二十年前に失踪した第一王女には、生後間もない娘がいたこと。
その娘こそがエレノアだと。
突然始まった王家での生活。
優しい祖父である国王、過保護な王族たち、そして王国随一と名高い騎士団長。
一方、エレノアを捨てた元婚約者は、自分が取り返しのつかない失敗をしたことを知る。
婚約破棄から始まる、王家認定シンデレラストーリー。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。