26 / 105
連載
閑話 王弟アルベルト
しおりを挟む
リーゼへの気持ちを自覚した私は、何とか彼女と仲良くなりたいと思うのだが、なかなか上手くいかずに、苦しむことになる。
そんな時に耳に入って来たのは、マクファーデン公爵令嬢がリーゼに嫌がらせをしているという話だった。
正直、またか……と思った。
あの女は、元オルダー伯爵令嬢とは違ったやり方で、取り巻きの令嬢を上手く使いながら、私と交流のある令嬢に嫌がらせをしてくる。
そんなことが続くと、元々、令嬢方と関わることが面倒だった私は、余計に令嬢方と関わろうなどという気は起きなくなっていた。
しかし、リーゼのことは別だ。
私は本気で彼女が好きだし、仲良くなりたいと思っている。
あの女は、そんな私を邪魔するということか。
そんな苛立つ私に、助け船を出してくれたのは、義理の姉である王妃殿下だった。
王妃殿下は、私が物心つく前には兄の婚約者として身近にいるのが当たり前だったので、義理の姉というよりは、本当の姉のような存在であった。
「ふふっ……。臣下という立場を忘れ、我が義弟の遅すぎる初恋を邪魔する、身の程知らずの小娘は、私の方から警告をしておいてあげるわ。」
「遅すぎる初恋だなんて、少し恥ずかしいですが……。
王妃殿下、感謝しております。」
「だけど、私が貴方に協力するだけではダメなのよ。
アルベルト自身がエリーゼに受け入れてもらえるように頑張らないと。
それに、周りからエリーゼを守るためには、貴方が何をすべきなのかをよく考えなさい。
ただ好きな気持ちだけでは、大切な人は守れないのよ。」
「はい。私の考えが甘いことは理解しております。」
王妃殿下はすぐに茶会を主催して、沢山の令嬢達がいる前で、マクファーデン公爵令嬢や取り巻き達がしていたことを断罪したらしい。
これは、王妃殿下じゃないと出来ないことだったから、正直助かったと思う。
その茶会の後、あの憎いマクファーデン公爵令嬢は謹慎しているようで、しばらく社交を休んでいるらしいし、王宮内にやって来て、偶然を装い、私を待ち伏せすることもなくなったのだった。
「アルベルト。貴方とエリーゼが恋仲だとか噂があるようだけど、その噂は否定せずに傍観することにしたわ。
その方が、他の令息達はエリーゼに手を出しにくいでしょ?
私がするのはここまでよ。あとは自分で頑張りなさいな。」
「はい。ありがとうございます。」
しかし、どうすれば良いのか分からない私は、仲の良い側近達に相談することにした。
それで言われたのは、私の気持ちが伝わるように、何かプレゼントをしてはどうかということだった。
そういえば、クリスティーナが話していたが、リーゼと仲の良いオルダー伯爵は、ガーベラをプレゼントしていたと言っていた。確か、ピンクとか白のガーベラだったと言っていたな……。
気になった私は、わざわざ王宮の古株の庭師の所まで行き、ガーベラのことを聞いていた。
「ガーベラも色によって花言葉があるのですよ。
ピンクと白のガーベラですか?
確か、ピンクが感謝で、白が希望だったかと。
贈り物にするには、可愛らしくて無難な花だと思います。」
「そうか……。助かった。ありがとう。」
あの真面目なオルダー伯爵らしい選択だと思った。
そんなところが、クリフォード侯爵や夫人に好かれているのかもしれない。
「王弟殿下が思いを寄せる方にプレゼントされるなら、私は赤い薔薇をお勧め致します。
必要な時は、最高の薔薇をご用意致しますから、いつでも声を掛けて下さい。」
「薔薇か!確かに華やかで美しい彼女にはピッタリだな。」
「ええ。愛をお伝えするなら、赤い薔薇がお勧めですよ。」
「……その時は、よろしく頼む。」
「王弟殿下がそのようなことを、わざわざ私に聞きに来てくれたことは初めてのことなので、この老いぼれは嬉しくて仕方がありません。
ぜひ協力させて下さい。」
「ああ。頼んだ!」
それから数日後には、王宮の使用人達の間で、また私が噂になっていたようだ。
あの庭師の爺がバラしたのだろう。
後日、私はクリスティーナと一緒にリーゼの邸に行き、101本の赤い薔薇をプレゼントしていた。
しかしその後、耳にしたのは、クリフォード侯爵家が、縁談相手を探しているということだった。
薔薇だけでは駄目だということだな。きちんと私の気持ちを言葉で伝えておく必要がある。
そう考えた私は、デビュタントの夜会でリーゼをダンスに誘い、二人で話をする計画を立てるのだが、リーゼの義兄であるクリフォード卿の妨害に合うのであった。
クリフォード卿は私より一つ年上で、頭の切れる男だ。
知的な雰囲気の美丈夫で、筆頭侯爵家の嫡男として、令嬢方に大人気だった。
大人気だった……と、過去形なのは、クリフォード卿は色々な令嬢に言い寄られ、重度の女嫌いになってしまい、令嬢に対して酷い態度を取るようになってからは、令嬢は誰も近付かなくなってしまったからだ。
あの女嫌いのクリフォード卿が、義理の妹のリーゼをエスコートしているのも驚きだったが、リーゼを見つめる目が、他の令嬢を見る目と大きく違うことに気付いてしまった。
リーゼの体調を気遣い、優しく接する姿は、仲の良い兄妹や、親しい友人関係のように見えた。
あのクリフォード卿が……。
信じられない!
私以外の者達も、クリフォード卿の変化に驚いているようだった。
その時私は、リーゼとの関係を前進させるために一番の障壁となるのは、このクリフォード卿かもしれないと、直感的に感じたのであった。
そんな時に耳に入って来たのは、マクファーデン公爵令嬢がリーゼに嫌がらせをしているという話だった。
正直、またか……と思った。
あの女は、元オルダー伯爵令嬢とは違ったやり方で、取り巻きの令嬢を上手く使いながら、私と交流のある令嬢に嫌がらせをしてくる。
そんなことが続くと、元々、令嬢方と関わることが面倒だった私は、余計に令嬢方と関わろうなどという気は起きなくなっていた。
しかし、リーゼのことは別だ。
私は本気で彼女が好きだし、仲良くなりたいと思っている。
あの女は、そんな私を邪魔するということか。
そんな苛立つ私に、助け船を出してくれたのは、義理の姉である王妃殿下だった。
王妃殿下は、私が物心つく前には兄の婚約者として身近にいるのが当たり前だったので、義理の姉というよりは、本当の姉のような存在であった。
「ふふっ……。臣下という立場を忘れ、我が義弟の遅すぎる初恋を邪魔する、身の程知らずの小娘は、私の方から警告をしておいてあげるわ。」
「遅すぎる初恋だなんて、少し恥ずかしいですが……。
王妃殿下、感謝しております。」
「だけど、私が貴方に協力するだけではダメなのよ。
アルベルト自身がエリーゼに受け入れてもらえるように頑張らないと。
それに、周りからエリーゼを守るためには、貴方が何をすべきなのかをよく考えなさい。
ただ好きな気持ちだけでは、大切な人は守れないのよ。」
「はい。私の考えが甘いことは理解しております。」
王妃殿下はすぐに茶会を主催して、沢山の令嬢達がいる前で、マクファーデン公爵令嬢や取り巻き達がしていたことを断罪したらしい。
これは、王妃殿下じゃないと出来ないことだったから、正直助かったと思う。
その茶会の後、あの憎いマクファーデン公爵令嬢は謹慎しているようで、しばらく社交を休んでいるらしいし、王宮内にやって来て、偶然を装い、私を待ち伏せすることもなくなったのだった。
「アルベルト。貴方とエリーゼが恋仲だとか噂があるようだけど、その噂は否定せずに傍観することにしたわ。
その方が、他の令息達はエリーゼに手を出しにくいでしょ?
私がするのはここまでよ。あとは自分で頑張りなさいな。」
「はい。ありがとうございます。」
しかし、どうすれば良いのか分からない私は、仲の良い側近達に相談することにした。
それで言われたのは、私の気持ちが伝わるように、何かプレゼントをしてはどうかということだった。
そういえば、クリスティーナが話していたが、リーゼと仲の良いオルダー伯爵は、ガーベラをプレゼントしていたと言っていた。確か、ピンクとか白のガーベラだったと言っていたな……。
気になった私は、わざわざ王宮の古株の庭師の所まで行き、ガーベラのことを聞いていた。
「ガーベラも色によって花言葉があるのですよ。
ピンクと白のガーベラですか?
確か、ピンクが感謝で、白が希望だったかと。
贈り物にするには、可愛らしくて無難な花だと思います。」
「そうか……。助かった。ありがとう。」
あの真面目なオルダー伯爵らしい選択だと思った。
そんなところが、クリフォード侯爵や夫人に好かれているのかもしれない。
「王弟殿下が思いを寄せる方にプレゼントされるなら、私は赤い薔薇をお勧め致します。
必要な時は、最高の薔薇をご用意致しますから、いつでも声を掛けて下さい。」
「薔薇か!確かに華やかで美しい彼女にはピッタリだな。」
「ええ。愛をお伝えするなら、赤い薔薇がお勧めですよ。」
「……その時は、よろしく頼む。」
「王弟殿下がそのようなことを、わざわざ私に聞きに来てくれたことは初めてのことなので、この老いぼれは嬉しくて仕方がありません。
ぜひ協力させて下さい。」
「ああ。頼んだ!」
それから数日後には、王宮の使用人達の間で、また私が噂になっていたようだ。
あの庭師の爺がバラしたのだろう。
後日、私はクリスティーナと一緒にリーゼの邸に行き、101本の赤い薔薇をプレゼントしていた。
しかしその後、耳にしたのは、クリフォード侯爵家が、縁談相手を探しているということだった。
薔薇だけでは駄目だということだな。きちんと私の気持ちを言葉で伝えておく必要がある。
そう考えた私は、デビュタントの夜会でリーゼをダンスに誘い、二人で話をする計画を立てるのだが、リーゼの義兄であるクリフォード卿の妨害に合うのであった。
クリフォード卿は私より一つ年上で、頭の切れる男だ。
知的な雰囲気の美丈夫で、筆頭侯爵家の嫡男として、令嬢方に大人気だった。
大人気だった……と、過去形なのは、クリフォード卿は色々な令嬢に言い寄られ、重度の女嫌いになってしまい、令嬢に対して酷い態度を取るようになってからは、令嬢は誰も近付かなくなってしまったからだ。
あの女嫌いのクリフォード卿が、義理の妹のリーゼをエスコートしているのも驚きだったが、リーゼを見つめる目が、他の令嬢を見る目と大きく違うことに気付いてしまった。
リーゼの体調を気遣い、優しく接する姿は、仲の良い兄妹や、親しい友人関係のように見えた。
あのクリフォード卿が……。
信じられない!
私以外の者達も、クリフォード卿の変化に驚いているようだった。
その時私は、リーゼとの関係を前進させるために一番の障壁となるのは、このクリフォード卿かもしれないと、直感的に感じたのであった。
応援ありがとうございます!
23
お気に入りに追加
9,983
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。