文字の大きさ
大
中
小
31 / 106
連載
ここはどこ?
目覚めた私は、知らない場所に寝かされていた。
ズキンと頭が痛み、体は怠く、力が入らない。
ここがどこなのか分からないから、このまま寝ていていいものなのか判断に迷う。
「あっ……!
親方、あの姉ちゃんが目覚めたみたいだよ。」
まだ幼い男の子らしき声が聞こえてくる。
「おい!大きい声をだすな。」
「あっ、ごめん!」
元気な男の子は、つい大きな声をあげてしまったようで、注意されているようだ。
何だろう?こういうやり取りをしている声を聞くと、何だかホッとする。
「おい、姉ちゃん!大丈夫か?」
親方と呼ばれている人だろうか?
アラフォーくらいの男の人が、目覚めた私の側に来て話しかけてきた。
「……はい。ここは?……ゲホっ、ゲホっ。」
喉がカラカラで声が出しにくく、咳き込んでしまう。
「ジョセフ。姉ちゃんに水を持って来てやれ!」
「分かった!」
ジョセフと呼ばれていた男の子は、すぐに水を持って来てくれる。
「姉ちゃん。体起こせるか?」
「……はい。」
何とか体を起こし、コップの水を受け取る。
寝起きで手がおぼつかない私を心配してくれたのか、親方と呼ばれている男の人は、私がコップを落とさないようにと、コップの底に手を添えていてくれているようだ。
何となくだけど、この人は気遣いの出来る、いい人のような気がした。
「ありがとうございました。
あの……、ここはどこでしょうか?」
「ここは、ニューギ国に向かう船の中だ。
姉ちゃんが倒れていたのを、このジョセフが見つけたんだ。
倒れた時に頭を打ったみたいで、少し出血していたようだが、もう血は止まっているようだな。
姉ちゃんは3日も目覚めなかったから、心配していたんだよ。」
船の中?そう言われると、船らしく揺れていることに気付く。
私、何で船に乗っているんだろう?
「船の中でしたか……」
「姉ちゃん、この船は貿易船だ。
輸出入の物資を運んだり、それに関係する商人が乗船する船だ。客船とは違うから、一般客は余程のことがない限りは乗らない。
船長に頼んで、乗船名簿を見せてもらったが、姉ちゃんらしき者の名前はなかった。」
「えっ……?」
「姉ちゃん……、もしかして他国に売られそうになったんじゃないのか?
俺はずっと船の調理場で働いているんだが、時々見るんだよ。姉ちゃんみたいな訳ありみたいなのを。
見た感じ、没落貴族ってとこか?
没落して売られそうになり、逃げ出そうとして、具合が悪くなって倒れたんじゃないのか?」
「……は?」
その時に私は気づいてしまった。
自分に何があったのかを忘れてしまっていることに……。
私、何でここにいるんだろう?
宿屋で女将さんと旦那さんと働いていたのは覚えているのに、何でここにいるのかを全く思い出せない。
頭を打ってしまったのが良くなかったのかな?
そして、こんな時でもはっきり覚えているのは、自分の毒親のこと。
もしかして、港町の宿屋で働いていることがあの毒親にバレて、私は連れ戻された?
あの毒親のことだから、私を少しでも高く売るために綺麗なドレスを着せて、売られた私はこの船に乗せられたとか?
あの毒親達ならありえるわ……。
サーっと血の気が引いていく。
「姉ちゃん…、大丈夫か?
そんな怯えた顔して、やはり売られそうになったんだな。
可哀想に……。でも、俺らは姉ちゃんの味方だ。
ここは、船で働く従業員用の部屋だ。いつもは、このジョセフ達が使っているんだが、姉ちゃんが使っていいからな。まずは体が元気になるまではここで休め。
今後どうするかは、元気になったら考えよう。どうせしばらくは、船の中にいるしかないからな。
姉ちゃんを連れて来たヤツが探していると思うから、船内はフラフラしないで、ここに隠れているといい。」
「あ……、ありがとうございます。」
初対面の人をどこまで信用していいものか悩むが、この親方とジョセフを信じたいと思った。
その後、人懐っこいジョセフは、私の様子を見にちょくちょく部屋に来てくれる。
食事やお茶を運んでくれたり、〝大丈夫か?〟なんて言って、私の体調を気遣ってくれているようだった。
まだ体調が戻らない私は、心細くなってしまいそうになるが、元気で優しいジョセフの存在は私の癒しになっていた。
仲良くなったジョセフが私に話してくれたのは、ジョセフは10歳の孤児で、悪い大人に騙されて他国に売られそうになったところを、親方に助けてもらい、それが縁でこの船の下働きをさせてもらっているということだった。
「親方は強いんだ!俺を連れて行こうとした悪い奴らを倒してくれたんだ。
人を売るのは犯罪だから、悪い奴はぶっ飛ばしていいんだって言ってたよ。」
確かに親方さんは、料理人というよりも傭兵とかやってそうなタイプに見える。
大柄の筋肉ムキムキで、とても強そうだもの。K-1とかの格闘技も似合いそうだ。
「親方さん、強そうだもんね。
いい人に助けてもらって良かったね。
私も、親方さんとジョセフに助けてもらえて嬉しかったよ。ありがとう!」
「いいんだよ!あの時、荷物運びをしていて、偶然見つけたから、すぐに親方を呼びに言ったんだ。
姉ちゃん、どっか痛いところはないか?」
ジョセフが優しい……。
そう言えば前世のママ友達が、娘よりも息子の方がママに優しいんだって話していたな。
こんな感じなのかもしれない。
「ジョセフのお陰で、元気になってきたよ。
本当にありがとう。優しいジョセフが助けてくれたから、私は幸せだよ。」
「……そ、そうか!
じゃあ俺、仕事に戻る。また後で!」
ジョセフは恥ずかしそうに部屋を出て行った。
ふふっ…。可愛いな。
ズキンと頭が痛み、体は怠く、力が入らない。
ここがどこなのか分からないから、このまま寝ていていいものなのか判断に迷う。
「あっ……!
親方、あの姉ちゃんが目覚めたみたいだよ。」
まだ幼い男の子らしき声が聞こえてくる。
「おい!大きい声をだすな。」
「あっ、ごめん!」
元気な男の子は、つい大きな声をあげてしまったようで、注意されているようだ。
何だろう?こういうやり取りをしている声を聞くと、何だかホッとする。
「おい、姉ちゃん!大丈夫か?」
親方と呼ばれている人だろうか?
アラフォーくらいの男の人が、目覚めた私の側に来て話しかけてきた。
「……はい。ここは?……ゲホっ、ゲホっ。」
喉がカラカラで声が出しにくく、咳き込んでしまう。
「ジョセフ。姉ちゃんに水を持って来てやれ!」
「分かった!」
ジョセフと呼ばれていた男の子は、すぐに水を持って来てくれる。
「姉ちゃん。体起こせるか?」
「……はい。」
何とか体を起こし、コップの水を受け取る。
寝起きで手がおぼつかない私を心配してくれたのか、親方と呼ばれている男の人は、私がコップを落とさないようにと、コップの底に手を添えていてくれているようだ。
何となくだけど、この人は気遣いの出来る、いい人のような気がした。
「ありがとうございました。
あの……、ここはどこでしょうか?」
「ここは、ニューギ国に向かう船の中だ。
姉ちゃんが倒れていたのを、このジョセフが見つけたんだ。
倒れた時に頭を打ったみたいで、少し出血していたようだが、もう血は止まっているようだな。
姉ちゃんは3日も目覚めなかったから、心配していたんだよ。」
船の中?そう言われると、船らしく揺れていることに気付く。
私、何で船に乗っているんだろう?
「船の中でしたか……」
「姉ちゃん、この船は貿易船だ。
輸出入の物資を運んだり、それに関係する商人が乗船する船だ。客船とは違うから、一般客は余程のことがない限りは乗らない。
船長に頼んで、乗船名簿を見せてもらったが、姉ちゃんらしき者の名前はなかった。」
「えっ……?」
「姉ちゃん……、もしかして他国に売られそうになったんじゃないのか?
俺はずっと船の調理場で働いているんだが、時々見るんだよ。姉ちゃんみたいな訳ありみたいなのを。
見た感じ、没落貴族ってとこか?
没落して売られそうになり、逃げ出そうとして、具合が悪くなって倒れたんじゃないのか?」
「……は?」
その時に私は気づいてしまった。
自分に何があったのかを忘れてしまっていることに……。
私、何でここにいるんだろう?
宿屋で女将さんと旦那さんと働いていたのは覚えているのに、何でここにいるのかを全く思い出せない。
頭を打ってしまったのが良くなかったのかな?
そして、こんな時でもはっきり覚えているのは、自分の毒親のこと。
もしかして、港町の宿屋で働いていることがあの毒親にバレて、私は連れ戻された?
あの毒親のことだから、私を少しでも高く売るために綺麗なドレスを着せて、売られた私はこの船に乗せられたとか?
あの毒親達ならありえるわ……。
サーっと血の気が引いていく。
「姉ちゃん…、大丈夫か?
そんな怯えた顔して、やはり売られそうになったんだな。
可哀想に……。でも、俺らは姉ちゃんの味方だ。
ここは、船で働く従業員用の部屋だ。いつもは、このジョセフ達が使っているんだが、姉ちゃんが使っていいからな。まずは体が元気になるまではここで休め。
今後どうするかは、元気になったら考えよう。どうせしばらくは、船の中にいるしかないからな。
姉ちゃんを連れて来たヤツが探していると思うから、船内はフラフラしないで、ここに隠れているといい。」
「あ……、ありがとうございます。」
初対面の人をどこまで信用していいものか悩むが、この親方とジョセフを信じたいと思った。
その後、人懐っこいジョセフは、私の様子を見にちょくちょく部屋に来てくれる。
食事やお茶を運んでくれたり、〝大丈夫か?〟なんて言って、私の体調を気遣ってくれているようだった。
まだ体調が戻らない私は、心細くなってしまいそうになるが、元気で優しいジョセフの存在は私の癒しになっていた。
仲良くなったジョセフが私に話してくれたのは、ジョセフは10歳の孤児で、悪い大人に騙されて他国に売られそうになったところを、親方に助けてもらい、それが縁でこの船の下働きをさせてもらっているということだった。
「親方は強いんだ!俺を連れて行こうとした悪い奴らを倒してくれたんだ。
人を売るのは犯罪だから、悪い奴はぶっ飛ばしていいんだって言ってたよ。」
確かに親方さんは、料理人というよりも傭兵とかやってそうなタイプに見える。
大柄の筋肉ムキムキで、とても強そうだもの。K-1とかの格闘技も似合いそうだ。
「親方さん、強そうだもんね。
いい人に助けてもらって良かったね。
私も、親方さんとジョセフに助けてもらえて嬉しかったよ。ありがとう!」
「いいんだよ!あの時、荷物運びをしていて、偶然見つけたから、すぐに親方を呼びに言ったんだ。
姉ちゃん、どっか痛いところはないか?」
ジョセフが優しい……。
そう言えば前世のママ友達が、娘よりも息子の方がママに優しいんだって話していたな。
こんな感じなのかもしれない。
「ジョセフのお陰で、元気になってきたよ。
本当にありがとう。優しいジョセフが助けてくれたから、私は幸せだよ。」
「……そ、そうか!
じゃあ俺、仕事に戻る。また後で!」
ジョセフは恥ずかしそうに部屋を出て行った。
ふふっ…。可愛いな。
感想
あなたにおすすめの小説
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし
【祝・書籍化】第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
2026年7月発売です。4万字以上エピソード追加しました。
感想もありがとうございます! なかなか返信できておりませんが、全て拝読させていただいております。
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元宮廷魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。