文字の大きさ
大
中
小
37 / 106
連載
神官からの接触
オーナーさんに個人的に呼ばれることは初めてのことだったので、何を言われるのか分からない私は、少しだけ緊張していた。
「リーゼ、急に呼び出して悪かったな。
そんな硬い表情をしないで欲しい。私は君に説教をしようだとか、文句を言うために呼び出したわけではないのだからな。」
「そうでしたか。少し安心しました。」
リストラの話じゃなくて良かった……
「実はある高貴な方が、リーゼのことを私に色々聞いてきたのだ。
あまりにも高貴な方だし、その方にリーゼの事情を話すことは問題ないと判断した私は、リーゼが人身売買の被害者で、他国から逃げて来たことを話したのだ。
勝手に君のことを話してしまって、申し訳なく思っている。」
「高貴な方に聞かれてしまったら、嘘は付けませんから仕方がないことかと思いますわ。
ところで、その高貴な方とは?」
「理解してくれて感謝する。
その高貴な方とは、我が国の次期神官長候補だと言われている、すごい神官様なのだ。
この前、パーティーでうちの店を利用して下さった時にリーゼを見たと言っていた。」
もしかして……、あの時の綺麗な金髪のイケオジ風の神官?
「あの……、その神官様は……、私のことを怒ったりしていませんでしたか?
その……、はしたないとか言っていたりとか。」
「真面目に働いていて、好感が持てたと言っていたが。
リーゼの話を聞いて、あの神官様が沈痛な面持ちをしていたようにも見えたな。
なぜ、はしたないなんて言われると思ったんだ?」
「実は、神官様にお飲み物をお出しする際に、間違えて手が触れてしまいまして……。
神官様がとても驚いたような表情をしていましたので、もしかして神官様は、異性に触れてはいけない決まりでもあるのかと思ったのです。」
「リーゼ……。我が国の神官様は、結婚が許されているくらいだから、異性に触れてはいけない決まりなどない。
間違えて手が触れてしまうことなど、いくらでもある。リーゼは真面目過ぎるな。気にしなくていいぞ。」
「あ……、そうでしたか。それなら安心しました。」
手が触れた時にあんな顔をされたら、誰だって気にするから!
「それでだが、その神官様がリーゼと話がしたいと言っている。」
「えっ!私と何を話すのでしょうか?」
「私もそこまでのことは聞いていない。
大事な話がしたいと言っていたし、私達の立場では断ることは出来ないんだ。」
「……ですよね。分かっておりますわ。」
オーナーさんから話を聞いた翌日、私は神官様がいるという神殿に来ていた。
信仰心も何もない私は、この国の神殿に来るのは初めてのことだったが、神殿の敷地があまりにも広く、世界史の資料集に載ってそうな、立派な建物が沢山あって、驚きの連続だった。
広い敷地内を、お上りさんのようにキョロキョロしながら歩いていると、後ろから声を掛けられる。
「……リーゼ!」
振り向くと、レストランの常連さんになっていたあの聖騎士が、息を切らせて走って来た。
神殿の敷地内に聖騎士団はあるらしく、さっきから、聖騎士がチラホラ歩いているのは気付いていたけど、まさか顔見知りに会うとは思わなかった。
「騎士様、ご機嫌よう。」
「やはりリーゼだったのか。いつものメイド姿とは違う服装だから、一瞬分からなかった。」
今日は仕事が休みなので、私は神官様との面接を意識した、白の清楚なワンピースを着ている。
「今日は仕事はお休みなので、私服なのです。
騎士様は今日もお仕事でしょうか?」
「……ああ。それより、リーゼは神殿に用事でもあるのか?」
聞かれると思ったよ……。
私がここを歩いているのは、明らかに不自然だものね。
「……ええ。ちょっとお呼び出しを受けまして、三番館の受け付けまで来るようにと言われているのです。」
「三番館に呼び出し……?
私が案内しよう。こっちだ。」
えっ?私に差し伸べられた、騎士様のその手は、もしかして……
「リーゼ……?私にエスコートさせてくれ。」
はあ?平民の私に、エスコートなんて必要ないし!
「騎士様……、平民の私にそのような気遣いは不要ですわ。」
「レディを案内するのに、エスコートは必要だ。
ほら……」
「……よ、よろしくお願い致します。」
断れない雰囲気になってしまい、エスコートしてもらうことになってしまった。
ハァー…。エスコートって、相手との距離が近いから、慣れていない人にエスコートされると、本当に気を使うよね。
あの偏屈のエスコートとか……
んっ?私、エスコートなんてされた経験あったっけ?
〝偏屈〟って……?
そんなことを考えていると、三番館の建物に着いたようだ。
「リーゼ、あそこが三番館の受け付けになっている。」
「騎士様。お仕事中にありがとうございました。」
「気にしないでくれ。」
「はい。それでは失礼致します。」
受け付けに名前を伝えると、すぐに応接室のような、ソファーとテーブルのある部屋に案内される。
待つこと数分、あのイケオジ風の神官が部屋に入って来たのであった。
「リーゼ、急に呼び出して悪かったな。
そんな硬い表情をしないで欲しい。私は君に説教をしようだとか、文句を言うために呼び出したわけではないのだからな。」
「そうでしたか。少し安心しました。」
リストラの話じゃなくて良かった……
「実はある高貴な方が、リーゼのことを私に色々聞いてきたのだ。
あまりにも高貴な方だし、その方にリーゼの事情を話すことは問題ないと判断した私は、リーゼが人身売買の被害者で、他国から逃げて来たことを話したのだ。
勝手に君のことを話してしまって、申し訳なく思っている。」
「高貴な方に聞かれてしまったら、嘘は付けませんから仕方がないことかと思いますわ。
ところで、その高貴な方とは?」
「理解してくれて感謝する。
その高貴な方とは、我が国の次期神官長候補だと言われている、すごい神官様なのだ。
この前、パーティーでうちの店を利用して下さった時にリーゼを見たと言っていた。」
もしかして……、あの時の綺麗な金髪のイケオジ風の神官?
「あの……、その神官様は……、私のことを怒ったりしていませんでしたか?
その……、はしたないとか言っていたりとか。」
「真面目に働いていて、好感が持てたと言っていたが。
リーゼの話を聞いて、あの神官様が沈痛な面持ちをしていたようにも見えたな。
なぜ、はしたないなんて言われると思ったんだ?」
「実は、神官様にお飲み物をお出しする際に、間違えて手が触れてしまいまして……。
神官様がとても驚いたような表情をしていましたので、もしかして神官様は、異性に触れてはいけない決まりでもあるのかと思ったのです。」
「リーゼ……。我が国の神官様は、結婚が許されているくらいだから、異性に触れてはいけない決まりなどない。
間違えて手が触れてしまうことなど、いくらでもある。リーゼは真面目過ぎるな。気にしなくていいぞ。」
「あ……、そうでしたか。それなら安心しました。」
手が触れた時にあんな顔をされたら、誰だって気にするから!
「それでだが、その神官様がリーゼと話がしたいと言っている。」
「えっ!私と何を話すのでしょうか?」
「私もそこまでのことは聞いていない。
大事な話がしたいと言っていたし、私達の立場では断ることは出来ないんだ。」
「……ですよね。分かっておりますわ。」
オーナーさんから話を聞いた翌日、私は神官様がいるという神殿に来ていた。
信仰心も何もない私は、この国の神殿に来るのは初めてのことだったが、神殿の敷地があまりにも広く、世界史の資料集に載ってそうな、立派な建物が沢山あって、驚きの連続だった。
広い敷地内を、お上りさんのようにキョロキョロしながら歩いていると、後ろから声を掛けられる。
「……リーゼ!」
振り向くと、レストランの常連さんになっていたあの聖騎士が、息を切らせて走って来た。
神殿の敷地内に聖騎士団はあるらしく、さっきから、聖騎士がチラホラ歩いているのは気付いていたけど、まさか顔見知りに会うとは思わなかった。
「騎士様、ご機嫌よう。」
「やはりリーゼだったのか。いつものメイド姿とは違う服装だから、一瞬分からなかった。」
今日は仕事が休みなので、私は神官様との面接を意識した、白の清楚なワンピースを着ている。
「今日は仕事はお休みなので、私服なのです。
騎士様は今日もお仕事でしょうか?」
「……ああ。それより、リーゼは神殿に用事でもあるのか?」
聞かれると思ったよ……。
私がここを歩いているのは、明らかに不自然だものね。
「……ええ。ちょっとお呼び出しを受けまして、三番館の受け付けまで来るようにと言われているのです。」
「三番館に呼び出し……?
私が案内しよう。こっちだ。」
えっ?私に差し伸べられた、騎士様のその手は、もしかして……
「リーゼ……?私にエスコートさせてくれ。」
はあ?平民の私に、エスコートなんて必要ないし!
「騎士様……、平民の私にそのような気遣いは不要ですわ。」
「レディを案内するのに、エスコートは必要だ。
ほら……」
「……よ、よろしくお願い致します。」
断れない雰囲気になってしまい、エスコートしてもらうことになってしまった。
ハァー…。エスコートって、相手との距離が近いから、慣れていない人にエスコートされると、本当に気を使うよね。
あの偏屈のエスコートとか……
んっ?私、エスコートなんてされた経験あったっけ?
〝偏屈〟って……?
そんなことを考えていると、三番館の建物に着いたようだ。
「リーゼ、あそこが三番館の受け付けになっている。」
「騎士様。お仕事中にありがとうございました。」
「気にしないでくれ。」
「はい。それでは失礼致します。」
受け付けに名前を伝えると、すぐに応接室のような、ソファーとテーブルのある部屋に案内される。
待つこと数分、あのイケオジ風の神官が部屋に入って来たのであった。
感想
あなたにおすすめの小説
結婚式の夜に愛人を連れてきたので、署名せずに帰ります
結婚式の夜、夫となったはずの侯爵さまが、披露宴の席に愛人を連れてまいりましたの。
「彼女も今日からこの屋敷に住む。君は正妻なのだから、寛大に受け入れるように」ですって。
義母は「騒げば恥をかくのはあなたよ」と微笑むし、お客さまたちは見て見ぬふり。まあ、皆さまそろって、なし崩しにするおつもりですのね。
けれど、おあいにくさま。この国の結婚は、式を挙げただけでは成立しませんのよ。婚姻誓約書に夫婦双方が署名し、三日以内に神殿へ納めて、はじめて夫婦。
――そしてわたくし、まだ署名しておりませんの。
既成事実は、事実ではございませんのよ。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
捨てられた三歳の聖女ですが、辺境伯家に拾われたら家族全員が過保護でした
神殿で無能と決めつけられ、三歳で捨てられた少女リリア。
辺境伯家に保護された彼女は、厳つい辺境伯やお兄様たち、領民にまで溺愛されながら幸せな日々を送ることに。
けれど実はリリアは、数百年に一人現れる伝説級の聖女だった。
これは捨てられた幼女聖女が、たくさんの愛に包まれながら成長していく物語。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし
【祝・書籍化】第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
2026年7月発売です。4万字以上エピソード追加しました。
感想もありがとうございます! なかなか返信できておりませんが、全て拝読させていただいております。
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元宮廷魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
側妃を紹介されたので、その婚約はお断りいたします
公爵令嬢ヴィオレッタは、王子の婚約披露の日に、もうひとりの令嬢を「側妃に」と紹介された。
逆らってはいけない――そう信じて微笑んだわたくしは、濡れ衣を着せられ、お腹の子を奪われ、雪の離宮でひとり息を引き取った。
けれど目を開けると、そこはあの婚約披露の日。時間が、巻き戻っていた。
今度は、飲み込まない。今度は、微笑まない。
前の生で覚えた数字も、罠も、あの女の手口も、ぜんぶ覚えている。
「その婚約、謹んでお断り申し上げます!」
涙を武器にする令嬢に、二度は負けない。そして――誰も見ていないと思っていた場所で、ずっとわたくしを見ていた騎士がいた。
これは、運命に流されるだけだったわたくしが、自分の人生を"選び直す"物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。