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お茶会?
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あの夜会から二週間が経過した。
今日は久しぶりにティーナとお茶会をする約束をしている。
最近のお茶会は必ず義兄が同伴してくれていたが、今日はどうしても仕事が休めないらしい。それもあって、私一人で出かけることになったのだが……、やはり義兄は黙っていなかった。
「エリーゼ。私は今日はどうしても抜けられない会議があるから、お前の茶会の付き添いが出来ない。
私が居ないからと気を抜いていると敵につけ入る隙を与えてしまうからな。気を引き締めて行ってこいよ!
大体、エリーゼは……」
朝食時、隣で義兄がくどくど言っている。
どこかの姑のようで、これは地味にキツい……
ティーナの茶会は私しか招待されないのだから、敵がいるはずがないのに。
「エリーゼ! 聞いているのか?」
煩いわ……
「はい。聞いてますわ」
「では私が注意しろと言ったことを復唱出来るか?」
ふ、復唱……?
適当に相槌を打っていたのがバレていたようだ。
「オスカー、朝から煩いわよ! 食事が不味くなるわ。
リーゼは子供じゃないの! そこまで言わなくてもいいのよ。
貴方はそうやって捻くれているから、いつまでたっても結婚出来ないの!
リーゼのことより自分のことを心配しなさい。リーゼはこのまま行けば殿下が貰ってくれるけど、貴方はどうするの?」
煩い義兄にお義母様がキレ出して、最悪の雰囲気になっている。
しかし、今なんて言った?
私はこのまま殿下に貰われるの? まだ決めてないから!
私がそのことを口にするよりも早く、義兄が反論する。
「母上、私やエリーゼに結婚を急かすのはやめて下さい。
しかもさっきの言動を聞く限りでは、母上は王弟殿下にエリーゼを嫁がせると決めているのですね?
母上もその辺にいる不愉快な令嬢や夫人と一緒で、義娘の結婚相手は見目が良くて身分の高い男なら誰でもいいという考えでいることがよく分かりました」
「オスカー!」
お義母様の怒鳴り声が屋敷中に響き渡る。
お義母様が感情を剥き出しにして怒るのは、この義兄に対してだけだ。
「二人ともいい加減にしなさい!」
お義父様の怒りを含んだ低い声が聞こえて来た。
「オスカー、エリーゼに対して過干渉すぎるぞ。少し慎みなさい。
それに王弟殿下を見目が良くて身分が高い男だなんて言うのは不敬だ。
あの方は、不器用なりにエリーゼを誰よりも大切に思ってくれている。
嫉妬深くて面倒なところはあるが、仕事は出来るし心優しい方なんだ」
うーん……。お義父様も殿下を誉めているようで、軽く貶しているじゃないの。
「父上、私だって殿下が仕事の出来る優秀な人物だということは知っていますよ。
今日の茶会もエリーゼが王女殿下に招待されたら、なぜか私に急な会議が入りましたから。
裏であの方が何か圧力をかけたとしか思えませんがね……」
腹黒はそこまでやるの?
「エリーゼ、そういうことだ。
あの方はうちの両親を丸め込み、陛下や王妃殿下、もしかしたら幼い王女殿下までも上手く利用して、お前を外堀から埋めていくだろう。
もう……、埋められてしまったかもな」
「……」
義兄は私に冷ややかな目を向けると、そのままダイニングから出て行ってしまった。
「エリーゼ、気にすることはないわ。
オスカーは可愛い義妹を殿下に奪われてしまいそうで、面白くないだけよ。
本当に捻くれているんだから」
「お義母様。私、まだ殿下と婚約すると決めたわけではありませんから!」
「分かっているわよ」
最悪な気分で朝食を終えた私は、ティーナの待つ王宮に向かうことにした。
「お姉様、今日はお兄様は来ないの?」
何も知らないティーナは、私と一緒に義兄も来ると思っていたようだ。
貴女の腹黒なおじ様が権力を使って、義兄が仕事を休めないようにしたのよ……と言ったら悲しむよね。
「ええ。義兄は今日はお仕事が休めなかったようですわ」
「お仕事があるなら仕方がないわ。
本当はお兄様に本を読んでもらいたかったの。でも今日は我慢するわね」
「義兄には、王女殿下が残念がっていたことを伝えておきますわ」
ティーナと薔薇園のガゼボでお茶を飲み、本を読んだり隠れんぼしたりして遊んでいると、王妃殿下がいらっしゃる。
「クリスティーナ。そろそろお勉強の時間よ。
先生方が待っているわ」
「……もうそんな時間?
お姉様、また今度遊びに来てね」
「王女殿下、お勉強頑張って下さいね」
私も王妃殿下にご挨拶してそろそろ帰ろうかな。
しかし……
「エリーゼ。良かったら私のお茶にも付き合ってくれないかしら?」
それってお付き合いではなく命令ですよね?
「王妃殿下とお茶をご一緒できるなんて、大変光栄ですわ」
王妃殿下と二人きりで頂くお茶は味を感じることが出来なかった。
三十分くらい王妃殿下とお茶をした後、王妃殿下は執務に戻ると言う。
ふぅー! やっと解放されると思ったその時……
「あ、やっと来たわ!」
王妃殿下が声を弾ませている。視線の先には、王弟殿下がこっちに向かって歩いてくる姿が見えた。
「エリーゼ。お茶に招待しておきながら、最後まで付き合えなくて申し訳なかったわ。だから、ここからはアルベルトに接待してもらうわね。
帰りはアルベルトが送ることになっているから、遠慮しないで送ってもらうようにしてね」
王妃殿下の笑顔は怖かった。
「……はい。ありがとうございます」
今日は久しぶりにティーナとお茶会をする約束をしている。
最近のお茶会は必ず義兄が同伴してくれていたが、今日はどうしても仕事が休めないらしい。それもあって、私一人で出かけることになったのだが……、やはり義兄は黙っていなかった。
「エリーゼ。私は今日はどうしても抜けられない会議があるから、お前の茶会の付き添いが出来ない。
私が居ないからと気を抜いていると敵につけ入る隙を与えてしまうからな。気を引き締めて行ってこいよ!
大体、エリーゼは……」
朝食時、隣で義兄がくどくど言っている。
どこかの姑のようで、これは地味にキツい……
ティーナの茶会は私しか招待されないのだから、敵がいるはずがないのに。
「エリーゼ! 聞いているのか?」
煩いわ……
「はい。聞いてますわ」
「では私が注意しろと言ったことを復唱出来るか?」
ふ、復唱……?
適当に相槌を打っていたのがバレていたようだ。
「オスカー、朝から煩いわよ! 食事が不味くなるわ。
リーゼは子供じゃないの! そこまで言わなくてもいいのよ。
貴方はそうやって捻くれているから、いつまでたっても結婚出来ないの!
リーゼのことより自分のことを心配しなさい。リーゼはこのまま行けば殿下が貰ってくれるけど、貴方はどうするの?」
煩い義兄にお義母様がキレ出して、最悪の雰囲気になっている。
しかし、今なんて言った?
私はこのまま殿下に貰われるの? まだ決めてないから!
私がそのことを口にするよりも早く、義兄が反論する。
「母上、私やエリーゼに結婚を急かすのはやめて下さい。
しかもさっきの言動を聞く限りでは、母上は王弟殿下にエリーゼを嫁がせると決めているのですね?
母上もその辺にいる不愉快な令嬢や夫人と一緒で、義娘の結婚相手は見目が良くて身分の高い男なら誰でもいいという考えでいることがよく分かりました」
「オスカー!」
お義母様の怒鳴り声が屋敷中に響き渡る。
お義母様が感情を剥き出しにして怒るのは、この義兄に対してだけだ。
「二人ともいい加減にしなさい!」
お義父様の怒りを含んだ低い声が聞こえて来た。
「オスカー、エリーゼに対して過干渉すぎるぞ。少し慎みなさい。
それに王弟殿下を見目が良くて身分が高い男だなんて言うのは不敬だ。
あの方は、不器用なりにエリーゼを誰よりも大切に思ってくれている。
嫉妬深くて面倒なところはあるが、仕事は出来るし心優しい方なんだ」
うーん……。お義父様も殿下を誉めているようで、軽く貶しているじゃないの。
「父上、私だって殿下が仕事の出来る優秀な人物だということは知っていますよ。
今日の茶会もエリーゼが王女殿下に招待されたら、なぜか私に急な会議が入りましたから。
裏であの方が何か圧力をかけたとしか思えませんがね……」
腹黒はそこまでやるの?
「エリーゼ、そういうことだ。
あの方はうちの両親を丸め込み、陛下や王妃殿下、もしかしたら幼い王女殿下までも上手く利用して、お前を外堀から埋めていくだろう。
もう……、埋められてしまったかもな」
「……」
義兄は私に冷ややかな目を向けると、そのままダイニングから出て行ってしまった。
「エリーゼ、気にすることはないわ。
オスカーは可愛い義妹を殿下に奪われてしまいそうで、面白くないだけよ。
本当に捻くれているんだから」
「お義母様。私、まだ殿下と婚約すると決めたわけではありませんから!」
「分かっているわよ」
最悪な気分で朝食を終えた私は、ティーナの待つ王宮に向かうことにした。
「お姉様、今日はお兄様は来ないの?」
何も知らないティーナは、私と一緒に義兄も来ると思っていたようだ。
貴女の腹黒なおじ様が権力を使って、義兄が仕事を休めないようにしたのよ……と言ったら悲しむよね。
「ええ。義兄は今日はお仕事が休めなかったようですわ」
「お仕事があるなら仕方がないわ。
本当はお兄様に本を読んでもらいたかったの。でも今日は我慢するわね」
「義兄には、王女殿下が残念がっていたことを伝えておきますわ」
ティーナと薔薇園のガゼボでお茶を飲み、本を読んだり隠れんぼしたりして遊んでいると、王妃殿下がいらっしゃる。
「クリスティーナ。そろそろお勉強の時間よ。
先生方が待っているわ」
「……もうそんな時間?
お姉様、また今度遊びに来てね」
「王女殿下、お勉強頑張って下さいね」
私も王妃殿下にご挨拶してそろそろ帰ろうかな。
しかし……
「エリーゼ。良かったら私のお茶にも付き合ってくれないかしら?」
それってお付き合いではなく命令ですよね?
「王妃殿下とお茶をご一緒できるなんて、大変光栄ですわ」
王妃殿下と二人きりで頂くお茶は味を感じることが出来なかった。
三十分くらい王妃殿下とお茶をした後、王妃殿下は執務に戻ると言う。
ふぅー! やっと解放されると思ったその時……
「あ、やっと来たわ!」
王妃殿下が声を弾ませている。視線の先には、王弟殿下がこっちに向かって歩いてくる姿が見えた。
「エリーゼ。お茶に招待しておきながら、最後まで付き合えなくて申し訳なかったわ。だから、ここからはアルベルトに接待してもらうわね。
帰りはアルベルトが送ることになっているから、遠慮しないで送ってもらうようにしてね」
王妃殿下の笑顔は怖かった。
「……はい。ありがとうございます」
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