上 下
15 / 172

新人魔女と不器用な師匠(7)

しおりを挟む
「冗談だ。本気にするな」

 リッカはホッとして胸を撫で下ろした。

「それで、その……、魔装というのは?」
「魔装ってのは、簡単に言えば魔法で見た目を変えることだ」
「魔法で?」

 リッカは思わずオウム返しする。そんなことが出来るなんて知らなかった。驚きに目を見張るリッカに、ジャックスは得意げに語る。

「そうだ。俺たちは自分の体の中に魔力を持っているだろ? それをコントロールすることで様々な現象を起こすことができる。例えば、火を出したり、水を操ったりな。それと同じように、リゼは自分の外見を変化させることもできる。それが魔装だ」
「ほ、本当ですか!」

 リッカは興奮気味に身を乗り出した。ジャックスはそんなリッカの反応が面白かったようで、ニヤッと笑う。

「ああ。ま、実際に見てみた方が早いかもな」

 ジャックスがリゼの方へ視線を向ける。それにつられてリッカもリゼを見る。

「つまりリゼさんの髪色が変わったのは、魔装でオシャレをしていたからというわけですか……」

 リッカがふむふむと納得しかけていると、ジャックスが待ったをかけた。

「いや、嬢ちゃん。それは少し違うぞ」
「え? でも、染料で髪を染めたわけではないんですよね?」
「それはそうだが。リゼの場合は少し事情が違う」

 ジャックスの言葉に、今まで黙っていたリゼが初めて反応を見せた。

「別に私は好きで髪色を変えているわけではない」

 そして、不満そうな顔で続ける。

「私は魔力量が多すぎるため、魔力の暴走で髪色が定まらないのだ」
「暴走?」

 リッカが聞き返すと、リゼはコクリとうなずいた。

「うむ。だから、自分の意志とは関係なく日毎髪色が変わる。私としては迷惑極まりないことなのだ」
「そうだったんですか……。あ! でも、髪型は? 髪型も昨日と違いますよね?」

 リッカはふと思いついて質問をした。

「それは魔装だ。こちらはただの趣味だ」

 リゼはそう言うと、おもむろに指をパチンと鳴らした。すると、リゼの髪が一瞬にして短髪から長髪に変わる。

「わぁ! すごい!」

 リッカは驚いて感嘆の声を上げた。

「ま、こんな感じだ。ちなみに、俺はこの長い方の髪型の方が好きだな」

 ジャックスがそう言うと、リゼはフンっと鼻を鳴らす。そしてもう一度指をパチンと鳴らし、髪を短髪に戻した。

「貴様に好かれようとは思っていない」
「ハハッ! 相変わらずだな、お前はよぉ!」

 ジャックスは愉快そうに笑った。それから思い出したようにリッカを見て、苦笑いをする。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

実は私、転生者です。 ~俺と霖とキネセンと

BL / 連載中 24h.ポイント:525pt お気に入り:1

王妃となったアンゼリカ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:113,543pt お気に入り:8,019

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:50,005pt お気に入り:3,660

長生きするのも悪くない―死ねない僕の日常譚―

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:2,236pt お気に入り:1

イラストから作った俳句の供養

現代文学 / 完結 24h.ポイント:646pt お気に入り:1

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:211,851pt お気に入り:12,364

処理中です...