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新人魔女と精霊のペンダント(1)

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 リッカは今日も暗いうちに起き出し、森の中の仕事場『マグノリア魔術工房』へとやってきた。窓からは光が漏れているので、工房主のリゼは、今日も既に起きているようだ。

「おはようございます」

 工房の扉をノックしてから開けて、中に入る。

 作業台に向かうリゼの髪は寝ぐせだらけだ。しかし彼は気にもせず、無言のまま真剣な表情で作業を続けている。

(今日は黒髪なんだ)

 膨大な魔力の暴走のせいで日毎色が変わるというリゼの髪は、昨日の金髪から一転、今日は夜空のように深い漆黒へと変わっていた。髪型は変わっていないが、ぼさついた髪をそのままにしているということは、もしかしたら起きたばかりでまだ魔装していないのかもしれない。

 起き抜けから作業をするとは何かあったのだろうかと心配になって、リッカはリゼに歩み寄る。すると――。

「……!」

 リゼの手には小さなガラス製の小瓶があった。その中には、きらめく七色の光を放つ粉が入っている。

「綺麗ですね……」

 思わず見惚れたように呟くリッカ。そんな声に視線を向けることなく、リゼは小瓶を机の上に置くと無愛想に告げる。

「依頼品だ。あとで依頼主が来る。渡しておけ。私はもう一度寝る」

 そう言って、リゼはぼうっとした顔で奥の部屋へ戻ろうとする。

「えっ!? あ、はい! わかりました」

 慌てて返事をしたリッカは、思わずリゼを呼び止める。

「あの、リゼさん?」
「何だ」

 振り返った彼の目の下には、大きな隈ができていた。やはり寝不足のようだ。

「その、本日の業務は? 何か急ぎでやることはありますか?」

 リッカの言葉を聞いたリゼは目を細めて睨む。そして小さく舌打ちした。

「……ない。今日は依頼者の相手でもしていろ」

 それだけ言うと、今度こそリゼは部屋に戻っていってしまった。

 残されたリッカはしばらくぽかんとしていたが、やがて苦笑を浮かべると、工房の掃除を始めた。掃除を終え、お茶の準備をする。リゼは依頼者が来ると言っていた。何人来るのかわからないため、多めに用意しておく。

 準備を終えて一息つくと、ちょうど入口の呼び鈴が鳴る。どうやら客が来たらしい。

「はい、ただいまー」

 パタパタと足音を立てて扉を開けると、そこには一人の女性が立っていた。年齢は二十代前半くらいだろう。長い栗毛を後ろで束ねており、瞳の色は透き通った海を思わせる碧眼だった。

「こんにちは。こちらがマグノリア魔術工房でしょうか?」
「あっ、はい! そうです。ご依頼ですか?」
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