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新人魔女の魔力暴発計画(1)

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 リッカは一つ大きく深呼吸すると、工房の扉を勢いよく開けた。

「おはようございます」

 森に朝日が入り始めたまだ朝の早いこの時間が、いつしかリッカの出勤時間となっていた。そして、リゼもその時間にはほとんどの場合起きている。

 執務机に向かい本を読んでいたリゼは、眼鏡のブリッジを中指で押し上げながら顔を上げる。しかし、チラリとリッカを見ただけで、またすぐに本へと視線を戻した。

「おはようございます。リゼさん。今日の髪色は水色なのですね」

 リゼの髪を見て、リッカは感嘆の声を上げる。リゼは本から視線を外さずに答えた。

「私の髪色は日々変わると話してあったはずだが?」

 淡々とした返事にリッカは苦笑する。

「それは伺っていましたが、水色は初めてお会いしたとき以来の色味でしたから」

 リゼの髪は、日替わりで色が変わる。日によって金や黒、緋色などの髪色になるのだ。見るたびに色合いが違うので、リッカはいつも新鮮な気持ちになる。

 リゼは読んでいた本を閉じ、リッカと向き合った。眼鏡越しに陽光のような透き通った金の瞳と視線が合うと、リッカは思わず姿勢を正す。それから、肩から下げていたお手製の鞄へ手を突っ込むと数枚の紙を取り出し、それをリゼに差し出した。

 リゼは紙を受け取ると、順に目を通していく。リッカはそれを緊張した面持ちで見つめた。全ての紙に目を通したリゼは顔を上げリッカを見た。その真剣な眼差しに、思わずリッカも緊張する。

「これは?」

 リゼに問われて、リッカはおずおずと口を開いた。

「わたしの考えた魔力暴発を起こす魔法陣です」

 リッカの言葉にリゼはジッと魔法陣を見つめる。そして、ややあって口の端をニッと吊り上げた。

「なるほど……面白い」

 リゼがこれほど興味深そうに魔法陣を眺める姿を、リッカは初めて見た。もしかしたらと期待に胸が膨らんだ時、リゼがリッカを鋭く見た。

「これを試してみたのか?」

 リッカは思わずビクッとする。

「いえ。実は……周囲に危険を及ぼすのではないかと思い、試せていないのです」

 リゼはふぅと小さくため息を吐くと、背もたれに身体を預けた。

「懸命な判断だ」

 リゼの短い評価に、リッカは体を硬くした。リゼによると、魔法陣自体はよく考えられたものだが、あまりにも危険で使えるものではないという判断だった。

「それで君はこれを使うつもりなのか?」

 リッカはその質問に静かに首を振った。人を害する可能性のある魔法陣など、扱うつもりはない。
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