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新人魔女の完成魔道具(1)

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 リッカは、白水晶と紫水晶それから他の属性を含んだ色とりどりの水晶を前に、頭を悩ませていた。

(結局、貰ってしまった……)

 昨日、リゼに素材の相談をしようとは思っていたが、まさか、素材よりもさらに高価な錬成済みの水晶を渡されてしまうとは、全くもって想定外だった。

 目の前に置かれた白水晶を、改めて手に取ってじっくりと観察してみる。白水晶は、乳白色に近い色をしている。水晶の色を見れば、どれだけの属性魔力を含んでいるか分かるのだが、これほどにはっきりと色を見分けられる白水晶を見たのは初めてだった。市場で稀に見かける白水晶は、大体が透明がかった白色をしている。その水晶でさえ、ものすごく高値がつくというのに。

(この水晶がもし市場に出回ったら、一体どれだけの価値がつくのかしら)

 リッカはふと脳裏に浮かんだその考えに蓋をした。表面を丁寧に研磨され、キラキラと光を反射しているその石を、下衆な考えで穢してはいけないような気がした。それほどまでに美しい石なのだ。

 その他の水晶も、全くと言って良いほど曇りや濁りがなく、リゼの錬成技術の高さが窺えた。リッカは、思わず感嘆の溜め息を吐く。

 使うのがもったいないとも思うが、手持ち素材がないのも事実なので、ありがたくリゼの水晶を使わせてもらおうと腹を括る。リッカはリゼから渡された小袋の中から、なるべく小さめの白水晶と紫水晶を探し当てた。使わせてもらうと腹を決めても、希少性の高さに臆することには変わりない。

 あまりにも立派すぎるものは、自分には不釣り合いだし、昨日自分が錬成した五大属性の石とのバランスが悪くなってしまう。リッカは、手頃な白水晶と紫水晶を決めると、他のものは小袋へしまい、大切に鞄の中へ仕舞い込んだ。

「リッカ様。今日もあいつを出してください」

 リッカが次の行動へ移るより先に、フェンがリッカに話しかけてきた。

「そうだったわね」

 フェンは昨日の特訓方法を気に入ったようだった。今日こそゴーレムから水晶を奪うのだと朝から意気込んでいる。

 リッカは頷きを返し、フェンと共に昨日と同じ場所へ向かう。昨日消さずに残していた魔法陣の中心に、土属性の魔力を含んだ水晶をセットして、結界を張る。結界内では、すぐにゴーレムが生まれ、昨日のようにフェンの特訓が始まった。

 しばらく様子を覗ってから、リッカは昨日残した水桶の方へ足を向ける。全属性の水晶が揃ったので、魔道具の完成は目前だった。
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