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第4章 ここから始まる勇者様?

三十八日目⑩ 鑑定は正確に

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 倉庫に移動した俺たちは、作業台の側に今回の回収した素材を出していった。
 もちろん事前に収納箱(簡易)に整理はしておいた。
 そうでないと数が数なもので……

 俺とデイジーは整理しておいた収納箱(簡易)を床に並べていく。
 ヒール草が2箱で約200。
 弱毒草が1箱で約100。
 眠り苔が2箱だけど、数は不明。
 全部革袋に入れていたので数がはっきりしない。
 入れられるだけ入れてしまったのだ。

「あなた達は……。限度ってものがあるでしょうに。」

 キャサリンさんのあきれ果てた顔は、何とも言えないものがあった。
 ごめんなさい。

「そういえばパラライの実はどうなったのかしら?」
「それなんですが……」

 俺たちはキャサリンさんに、ダンジョンであった出来事を話して聞かせた。
 またしても【勇者モドキ】関連でトラブルに遭う俺たちを見て、哀れみの表情を浮かべていた。
 やめてください、本気で心が折れます。

「まずは数が数だし、状態も確認が必要だから、少し時間を頂戴。明日には判明しているはずよ。」
「わかりました。あ、職員さんに無理はさせないでくださいね?ゆっくりでいいんで。」
「お気遣いありがとう。それじゃあ、今日はこれで終わりね?」
「はい、ではまた明日。」

 そして、納品の品をキャサリンさん達に預け、ギルドホールへ移動した。

 ギルドホールには、先ほど世話になった先輩冒険者パーティーが居た。
 どうやら清算などが終わり、これから食事にするようだ。
 俺はみんなにお礼について相談した。

「ちょうど先輩たちもいるし、酒場で夕食を取らないか?できれば奮発して霜降り肉でもだそうよ。」
「そうね。今回肉の清算はしていないから、だいぶダブついているはずよ。」

 そう言うと、エルダはデイジーに在庫確認を頼んだ。
 デイジーもすぐにアイテムボックスの中身の確認を行った。
 すると、霜降り肉だけでも300kgを超えているそうだ。
 うん、どんだけオークを解体したんだろうな俺……
 今回はちゃんと、デイジーにも解体はさせた。
 ポールにもさせて、睾丸の回収をしましたよ。
 いまだに手に蘇る感触が、不快感を思い出させる。

「これだけの数はさすがに食べきれないわね。じゃあ、100kgほど酒場に提供しましょう。」
「まじで?!」

 さすがの俺も、これには驚いた。
 エルダがそんなに放出するとは思わなかったのだ。
 霜降り肉250gで金貨1枚の買い取り額だぞ?
 つまり金貨400枚分を提供するってありえないだろ?

 俺の焦る顔を見て、エルダは不快感をあらわにした。

「あら?私がそんなに提供するのがおかしい?カイト、貴方の私の印象がどうなってるのか、一度じっくり話し合う必要がありそうね?」
「あ、ほら、ね?なんていうか、その……」

 俺が答えに困っていると、エルダは「ふっ」と笑って笑顔になった。

「なんて冗談よ冗談。打算が無いわけじゃないは。今回の件もそうだけど、この前ここで人のつながりを作ったおかげで、助かったわけじゃない?だから今回もその一環よ。やっぱり食事って偉大よね。」

 うん、いつものエルダで安心した。
 って、なんでそんなににらむんですか?エルダさん……

 き、気を取り直して先輩冒険者に声をかけた。

「先ほど振りです。」
「お、肉の坊主じゃないか。その後どうなった?」
「えぇ、無事騎士団に引き渡せました。本当にありがとうございました。」

 俺たちは、そろって先輩冒険者パーティに頭を下げた。

「いいっていいって。そんなの気にすんなよ。」
「というわけで、これからご飯なんてどうですか?」
「お、もしかして例の肉か?」
「期待していてください。」

 そして俺たちは、酒場の一角を貸し切り状態にし、席の準備を行った。
 デイジーは、その間に酒場の厨房に移動し、霜降り肉を提供しに行った。
 マスターには、余った分は前回同様ふるまっていいって伝えてあるので、良い様にしてくれるはずだ。
 さすがにネコババしないよね?



 そして振舞われるは至極の肉!!
 俺たちの前に並べられたその肉は、圧倒的存在感を醸し出していた。
 立ち昇る香りが鼻孔を刺激し、食欲をそそりつつ胃袋を強烈に刺激してくる。
 見た目の神々しさは、まるで宝石のように輝き放っている。

 もうだめだ……
 我慢ならん……

 俺たちは顔を見合わせて、一つうなづいた……
 そしてフォークをプスリ。
 手に伝わる肉を刺す感触は、今までにないほど柔らかなものだった。

 次にナイフ。

スッ……

 ほぼ音を立てることなく、一口大に切ることができた。
 その肉片を持ち上げると、滴り落ちる旨味の塊の肉汁……

ジュッ!!

 その肉汁が鉄板で爆ぜるたびに、濃厚な香りを周囲に爆発させる。

ハム……

 言葉が無かった。

 こんなの肉じゃない……

「カイト……これ本当にただの霜降り肉?」

 どういうことだ?

「ちょっと鑑定してみて?」
「スキル【鑑定】」

オークの霜降り肉(極上):霜降り肉でもまれにしか取れない極上品。出会えたら奇跡の品。

 その内容に、俺の思考が停止してしまったのは、言うまでもなかった。
 これって完全にやっちまったって案件じゃないか?
 通常の霜降り肉でも250gで金貨1枚だぞ?
 それが(極上)……
 俺は考えることはやめることにした。
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