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しおりを挟む「ロレッタちゃん、お顔が強ばっておいでよ」
「はい、ラン先生。こうでしょうか?」
「そうそう、その笑顔は良いわ。笑顔は武器よ、常に忘れないで」
「はい」
私は近々行われるお披露目パーティーに出る為に、夫人教育の最終確認をして頂いている。
ラン先生はそんな私の先生で、とてもお綺麗な方だ。50代だと聞いた時にはひっくり返った。
この何日間かでビシバシと叩き込まれている。
元々淑女教育はされていたので、その辺りは思い出す作業になってしまったが付け焼き刃にはならなかった様で安心されてしまった。
大概の事は出来るようになったのだが、腹の探り合いがどうにも苦手だ…。
こういう時はこういう風に言っている、と教えては頂けるが多種多様。
言われたとて、分かるか不安である。
そればかりは数をこなさねばならないと言われてしまったので、頑張るしかない。
「そういえば、まだダンスを見ていないわね。ちょっと、貴女」
「はい、お呼びですか?」
ラン様は思い付いた様に侍女を呼び、何かを耳打ちする。
「畏まりました。そちらの侍女とホールの方にてお待ち下さい」
「分かったわ。ロレッタちゃん、行きましょう」
「はい、参ります」
ホールへは初めて入ったのだが天井が高く、沢山の人が入る事が出来る侯爵邸に相応しい重厚感の有る造りだ。
くるくると辺りを見渡していると、扉が開いた。
そこにはエル様がにっこりと笑って立っていた。
ツカツカと私の方まで歩いて来たかと思うと、跪き手を差し出す。
「私とダンスを踊りませんか、レディ?」
「は、はい。喜んで」
何故ここにエル様が、と思ったがラン先生がニコニコ笑顔なのできっとそういう事なのだろう。
エル様のキラキラオーラが二割増しという事にも物凄く動揺してしまった。
普段着なのに格好良すぎるとか、この人おかしい。
「では、初めて下さる?」
侯爵邸の使用人達の中で楽器を弾けるものが楽器を鳴らし出す。
それに合わせてゆっくりとエスコートされ、踊り始める。
「ほぅ……、上手いもんだな。正直苦手なのでは無いかと思っていた」
「実は…、身体を動かす事は苦手なのですがダンスだけは何故か出来るのです」
「そうなのか?」
「えぇ、何故なのかは私にもさっぱり…」
「ははっ。君は本当に面白いな」
「有難う御座います」
面白い事をしたつもりは無いが、エル様は本心からそう思っている気がするので少し嬉しい。
バチリ、と目が合った。
そこで初めて、なんて距離に居るんだ。と自覚してしまった。
「な、何だか恥ずかしいですね」
「言ってはいけない。本当に恥ずかしくなるぞ」
私はそう言われて余計に恥ずかしくなり、真っ赤になってしまったものだから
何だか二人して最後はしどろもどろになってしまった。
パンパン
「はい、有難う御座います。ん~、ダンスは最初は良かったのだけれど最後に乱れたから60点。淑女的には35点ね」
「以後、気を付けます」
自分の焦りを顔に出してしまった事が響いたのだろう。
社交界では痛恨のミス、実質0点だ。
35点でも甘い数字だと考える。
エル様は「俺のせいだ、すまない」と私にだけこえる声で言うと苦笑いをした。
私は全部自分が不甲斐ないからだと小さく首を振り、笑顔で返した。
すると、ラン様が妖艶にニヤリと笑った。
「さて、あなた達は圧倒的に触れ合いが不足しているわ。
今日は一緒に居る事が自然になる迄は返しませんことよ」
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