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【その後】
転生司祭は看病する 7
しおりを挟む「ああ、ミュルクヴィズの地下神殿の宝箱にある魔導書か」
魔導書の名前にもちょっと憶えがある気がしてたけど、前世のゲームプレイ時だ。
確か、難易度高かった割に魔王討伐には特に必要ない魔法や武器しかGET出来ないから、今回の旅ではスルーした地下神殿にそんなのがあった筈。
思い出せてスッキリ。
中途半端に思い出せないのって気持ち悪いもんね!と晴れやかな気持ちでうんうん頷いてたらガシッと肩を掴まれた。
犯人は隣のジャンさん。
「今、何て言った?」
美形のマジ顔、ちょっと怖いです。
「ああ、ミュルクヴィズの地下神殿の宝箱にある魔導書……か……」
ガシッ、っていうかもはやグワシッ!!な肩を掴む手が両手になった。
なになに、怖いっ?!
「あんの?」
「はい?」
「魔導書。グラヴィタスの魔導書」
「えっと、はい。確かそんな名前の原書が……」
「しかも原書っ?!」
ビビる僕に気付いてか、瞳を据わらせたユリアが「ジャンさん?」とどっから出したのっ?ってくらい低っい声でジャンさんを呼び、「手っ、手を放して下さい!」という必死な表情のヨハンくんの叫びにジャンさんが慌てて離した両手をユリアに示す。
必死に無実アピールした後で、再び僕へと向き直るジャンさん。今度は勿論、肩は掴まれてない。
「もしかして……それも神託、だったり?」
「ええ……まぁ。魔王討伐に関係ないのでスルーしましたが……」
若干目を彷徨わせ答える僕に向けられる驚愕の視線×3対。
「バケモンかよ」
思わず、といった感じで漏れたジャンさんの発言には断固抗議したい。
それ、僕らがいつも思ってることだからね?
一般人からしたら勇者パーティ、人外だから。
あと、人に向かってお祈り始めるヨハンくんと、僕の賛辞を繰り出すユリアの反応もどうかと思う。
「よっし!ミュルクヴィズの地下神殿、行こう!!」
いい笑顔で立ち上がるジャンさんは若干テンション可笑しい。
何気に魔導書オタクだしな。
あと薄っすら目の下に隈あるから睡眠不足でハイになってるのかも。
今夜も夜更かしするって言ってたけど、もう寝ろし。
飲みかけのジャンさんのブラックコーヒーをそっと遠ざけた。
「こんな夜中から行けるわけないでしょう。それに行くならアーサーかウルフを連れて行った方がいいですよ。あそこ、魔法不可で力技で突破しなきゃいけない罠とか結構ありましたし」
「…………………一応確認するけど……行ったこと、ないんだよな?」
「……はい」
若干目を逸らして答える。
ゲームならありますけどね……。
現実的には魔王討伐の旅以前に迷宮とか行ったことありません。
……なら、なんで内部構造知ってんだよ!って話ですよね。わかります。
「…………神託って、迷宮内部や罠や宝箱の内容まで把握出来るモノなんですね」
何処か遠い目のヨハンくんにうっと肩を竦ませる。
だから神託じゃないんだ。言えないけど……。
翌日、アーサーは無事完全復活。
そして当然のように後日ジャンさんに地下神殿に引っ張て連れて行かれて魔導書も無事GETした。
そして行ったことのない迷宮内部まで把握してる事実に、周囲に慄かれたのも後日の話。
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