とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

文字の大きさ
46 / 73

公爵令嬢

しおりを挟む
「あら、あなたがの……!わたくし、アレク殿下とさせて頂いておりますシスティーナ・ミズリー、ミリオニア国筆頭公爵家の長女ですわ」

勝ち誇った態度、アレク様に向けられる熱のこもった視線ーー。どれをとっても分かりやすい令嬢だった。

「ミズリー公爵令嬢、この度はお目にかかれて光栄です」

あなたはアレク殿下に相応しくない圧が物凄いが、一方のアレク様はとても不機嫌そうにされていた。

「システィーナ嬢、我々は別の場所に……」

アレク様は一刻も早くこの場から立ち去りたいのだろう。私の腕を掴み、もと来た方向に向かおうとしていた。

「アレク殿下!何をおっしゃいますの?隣国からわざわざいらした殿下の大切な客人ですもの。殿下の客人は、わたくしの客人。忙しい殿下に代わりまして、この後はがエスコートさせて頂きますわ」

その後、アレク様とシスティーナ嬢との攻防が始まり、何と三人で王宮を見て回ることになった。

(……ああ、気まずい……。アレク様のことが好きな令嬢となんて。はぁ……)

アレク様は私の手を取ると、足早に歩き始めた。

「ーーアレク殿下!お待ちになって!」

「……リリー、すまない。後で説明させてくれ」
アレク様が耳元で囁く。

(どうみてもこの令嬢の片想いよね……)

ぐいぐい来るタイプの高位貴族の令嬢は扱いが難しそうだ。

「……アレク様、お察しします」
とだけ告げると、安堵の表情を浮かべた。

その後は、この令嬢からいかにアレク様が素晴らしいか、いかにシスティーナ嬢とアレク様が親しいのかを延々と聞かされ、王宮のどこを見ていたのかの記憶もないくらいだった。

ようやく解放され、宿泊予定の部屋に戻るとどっと疲れが出てしまった。

(……どの国でも公爵令嬢はキャラが濃いの?)

新作のネタにさせてもらおう……。

この話を聞き付けたのか、カエラが心配そうに部屋を訪れた。

「……先ほど、殿下から王妃様へも報告がありまして……。大変失礼致しました。お疲れのところ大変申し訳ありませんが、晩餐のためのお召しかえをさせて頂きます」

晩餐にまで参加すると息巻いていた公爵令嬢……。王妃様に掛け合うって……。

王妃様も御愁傷様です。

「…あの令嬢は、王妃様のところにも?」

「……先ほど、晩餐の件でいらっしゃいましたが、王妃がやんわりと拒否されました」

(……そりゃあ、拒否されるわよね……)

アレク様のこの公爵令嬢に対する態度はそれはもう……塩対応?通り越して、氷対応?だったし。

幼馴染みアピールが凄すぎて本当に驚いた。

このままだと、全ての記憶が公爵令嬢になりそうだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

数多の令嬢を弄んだ公爵令息が夫となりましたが、溺愛することにいたしました

鈴元 香奈
恋愛
伯爵家の一人娘エルナは第三王子の婚約者だったが、王子の病気療養を理由に婚約解消となった。そして、次の婚約者に選ばれたのは公爵家長男のリクハルド。何人もの女性を誑かせ弄び、ぼろ布のように捨てた女性の一人に背中を刺され殺されそうになった。そんな醜聞にまみれた男だった。 エルナが最も軽蔑する男。それでも、夫となったリクハルドを妻として支えていく決意をしたエルナだったが。 小説家になろうさんにも投稿しています。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

処理中です...