9 / 19
我儘な妻は要らないと言われ、離縁する事になりました。
前編
しおりを挟む
「──お前のような我儘な妻はもう要らない、離縁だ!」
夫はテーブルを叩きつけ、私にそう吐き捨てた。
そしてそんな私を、周りの者達はさも当然という目で見ていた。
「お姉様には呆れたわ。こんな悪女、捨てられて当然よ」
「奥様は私を余りに虐めすぎたんです。だからご主人様は……」
「あぁ、もう泣かないで。君も、俺を庇ってくれてありがとう」
私を非難する妹、私に虐められたと訴える使用人の娘。
その二人を両脇に置き、それぞれに肩を回す夫。
悪いのは、我儘な妻で悪女な私──?
そんな馬鹿な話、あってたまるものか──。
遡る事、半年ほど前。
私は彼と結婚する事となった。
家同士の約束の縁談ではあったが、私は密かに彼に憧れを持って居たから……この結婚はとても嬉しかった。
そして彼も、私の事を大事にしてくれた。
するとその後すぐ、一人の女を使用人として雇う事になった。
彼女はまだ若く、そしてとても可愛らしい娘だった。
だが、こうして使用人として働くのは初めてらしく……彼女は、中々仕事を覚える事が出来なかった。
その為、私がいつも彼女の後始末をする事になり……困った私はそれを夫に相談した。
すると夫は、一度自分から話をする……そう言ってくれたのだ。
だが、今にして思えばそれが良くなかったのだろう。
夫とその娘の距離は、次第に近くなって行った──。
「こんな物とても食べられないわ……今すぐ下げて頂戴!」
「ごめんなさい、奥様……申し訳ありません!」
睨む私に、怯え涙を流す使用人の娘。
それを見た夫は呆気にとられ……そして彼女を背に庇い、私を怒鳴り付けた。
「せっかく彼女が作ってくれた料理なのに……無駄にするんじゃない!こんなに美味しそうに出来てるじゃないか……。一体、何が気に喰わないんだ?」
「何もかもよ……。その子が作った物は、今後一切食べたくないわ」
「この我儘女が……勝手にしろ!すまないな、こいつの事はもう気にしなくていいから」
使用人を慰める夫を冷たい目で見て、私はその場を後にした──。
「お姉様……聞いたわよ?最近、急に我儘になったって」
それから少しして、家に妹が頻繁にやってくるようになった。
どうやら夫が私の妹に手紙を出し、それとなく私の様子を探るように頼んだらしかった。
「あんな素敵な人を旦那様にして、一体何が不満なのよ?私だったら、そんな我儘を言って嫌われるような真似はしないのに」
「……口が裂けたって言えないわ。とにかく、私は悪くないの。悪いのは……あの娘と夫よ」
「じゃあ、お姉様は反省の気持ちは一切ないって事?」
「どうして、私が悪いと思わないといけないのよ」
するとその日の晩、私は夫に詰め寄られた。
「お前の妹から聞いた。お前は自分の態度を顧みる事無く、俺を悪い夫だと責めたそうだな。そんな事が出来るのは俺に愛がないからだと、あの子はそう言って居たぞ?」
「私は、何もそこまでは……!」
「もういい、お前がその気ならこっちも考えがある──」
その後夫は、度々私に贈り物を贈って来るようになった。
最初こそ、私の気持ちを引き留める為、ご機嫌を取る為かと思ったのだが──。
「……要らないわ、こんな物」
私は、彼から差し出されたドレスを突き返した。
「何だよ……仲直りしようとせっかく新しいドレスを買ってやったのに!」
「私はこんな物、一切欲しくないの!いちいち贈って来ないで……腹が立ってしょうがないわ!」
すると遊びに来ていた妹が、それを見て私に怒鳴った。
「お姉様は酷いわ!夫の好意を素直に受け取れないなんて……そんな人、いつ離縁されてもおかしくないわよ?」
「離縁……それも構わないかもね」
それを聞いた夫は、驚きに目を見開いた。
「一体何が気に喰わないんだ。俺がこうして贈り物をしても気に入らないと突き返して来るし、相変わらず使用人の料理は拒否し続けたままだし……。お前のような我儘な女にはもう疲れた。だったらお前の言う通りにしてやろう。お前のような我儘な妻はもう要らない……離縁だ──!」
夫はテーブルを叩きつけ、私にそう吐き捨てた。
そしてそんな私を、周りの者達はさも当然という目で見ていた。
「お姉様には呆れたわ。こんな悪女、捨てられて当然よ」
「奥様は私を余りに虐めすぎたんです。だからご主人様は……」
「あぁ、もう泣かないで。君も、俺を庇ってくれてありがとう」
私を非難する妹、私に虐められたと訴える使用人の娘。
その二人を両脇に置き、それぞれに肩を回す夫。
悪いのは、我儘な妻で悪女な私──?
そんな馬鹿な話、あってたまるものか──。
遡る事、半年ほど前。
私は彼と結婚する事となった。
家同士の約束の縁談ではあったが、私は密かに彼に憧れを持って居たから……この結婚はとても嬉しかった。
そして彼も、私の事を大事にしてくれた。
するとその後すぐ、一人の女を使用人として雇う事になった。
彼女はまだ若く、そしてとても可愛らしい娘だった。
だが、こうして使用人として働くのは初めてらしく……彼女は、中々仕事を覚える事が出来なかった。
その為、私がいつも彼女の後始末をする事になり……困った私はそれを夫に相談した。
すると夫は、一度自分から話をする……そう言ってくれたのだ。
だが、今にして思えばそれが良くなかったのだろう。
夫とその娘の距離は、次第に近くなって行った──。
「こんな物とても食べられないわ……今すぐ下げて頂戴!」
「ごめんなさい、奥様……申し訳ありません!」
睨む私に、怯え涙を流す使用人の娘。
それを見た夫は呆気にとられ……そして彼女を背に庇い、私を怒鳴り付けた。
「せっかく彼女が作ってくれた料理なのに……無駄にするんじゃない!こんなに美味しそうに出来てるじゃないか……。一体、何が気に喰わないんだ?」
「何もかもよ……。その子が作った物は、今後一切食べたくないわ」
「この我儘女が……勝手にしろ!すまないな、こいつの事はもう気にしなくていいから」
使用人を慰める夫を冷たい目で見て、私はその場を後にした──。
「お姉様……聞いたわよ?最近、急に我儘になったって」
それから少しして、家に妹が頻繁にやってくるようになった。
どうやら夫が私の妹に手紙を出し、それとなく私の様子を探るように頼んだらしかった。
「あんな素敵な人を旦那様にして、一体何が不満なのよ?私だったら、そんな我儘を言って嫌われるような真似はしないのに」
「……口が裂けたって言えないわ。とにかく、私は悪くないの。悪いのは……あの娘と夫よ」
「じゃあ、お姉様は反省の気持ちは一切ないって事?」
「どうして、私が悪いと思わないといけないのよ」
するとその日の晩、私は夫に詰め寄られた。
「お前の妹から聞いた。お前は自分の態度を顧みる事無く、俺を悪い夫だと責めたそうだな。そんな事が出来るのは俺に愛がないからだと、あの子はそう言って居たぞ?」
「私は、何もそこまでは……!」
「もういい、お前がその気ならこっちも考えがある──」
その後夫は、度々私に贈り物を贈って来るようになった。
最初こそ、私の気持ちを引き留める為、ご機嫌を取る為かと思ったのだが──。
「……要らないわ、こんな物」
私は、彼から差し出されたドレスを突き返した。
「何だよ……仲直りしようとせっかく新しいドレスを買ってやったのに!」
「私はこんな物、一切欲しくないの!いちいち贈って来ないで……腹が立ってしょうがないわ!」
すると遊びに来ていた妹が、それを見て私に怒鳴った。
「お姉様は酷いわ!夫の好意を素直に受け取れないなんて……そんな人、いつ離縁されてもおかしくないわよ?」
「離縁……それも構わないかもね」
それを聞いた夫は、驚きに目を見開いた。
「一体何が気に喰わないんだ。俺がこうして贈り物をしても気に入らないと突き返して来るし、相変わらず使用人の料理は拒否し続けたままだし……。お前のような我儘な女にはもう疲れた。だったらお前の言う通りにしてやろう。お前のような我儘な妻はもう要らない……離縁だ──!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
44
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる