燃え尽きた貴族が10年後療養してたら元婚約者に娶られてしまいまして

おげんや豆腐

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完結編 月の獅子の目は彼の者に

二十七話 きんにくつうになった もうそれしか考えられない

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 雨の音が部屋の音をかき消していく。

 昨日より強くなった気がする、少し大きく声を出さなきゃ伝わらないかもしれない。

「ねえねえエウァルドさん」
「なんだ」
「こう、雨の音が酷くて、雷が鳴りそうな時にさ、手を天井に向けたらなんか事件起きそうじゃない」
「探偵ものの読みすぎだ」
「だよねー、うげっ……いてえのだ」
「朝はとっくに過ぎている、起きてくれ」
「むり」
 顔と目は壁をみたまま返事をする、そしたら壁だった視界がエウァルドさんのお腹でいっぱいになる。

「昼食も近い、起きろ」
「やだぁ……」
 いてえのだよ、主に……どこだ、全身だ。
 雨による湿気、それが身体にズーンと響く。

 前向きに見れば心地よいと言われればそうだけど、動いた瞬間不快なものになる痛み。
 
「おやニッキー様、まだ起き上がれませんか」
「はいー」
「ふむ! まあこんな日もあるでしょう、簡単なものをお持ちしますので、口にいれられる時おつまみください」
「すいませんー」
「いえいえ、では少々失礼します、はぁ、洗濯物が乾かなくて困ったものです」
「あらまー」
 ひょこっと顔を出して、すぐに引っ込んだダンさんの直後漏らした愚痴に中身のない相槌をひとつ、そしてそして、ぼんやりと目を閉じて、すぐに睡魔がやってくる。


 ……ねむい、ねむい、おやなんか、横に座る気配というかベッドが深く沈むというかあー転が、あたたた体痛え。

 ぐぇ、固いのに当たった。

「すまん」
「ううええぇ、にぶい痛みぃ」
 ベッド端に座ったエウァルドさんの腰にドシーンだよ。

「どうしてやることもできない、耐えてくれ」
「うえーい」
「そしてそろそろ起きてくれ」
「やーだね、明後日の方向向いて変なこと言うよ」
「だからサスペンス小説の読みすぎだ、昨日夜遅くまで読んでたものか」
「"三十路執事見習いの事件簿"の三巻目の五回目の転職先の事件が面白かった」
「人の好みにとやかく言うのはマナーに反するが、もう少しまともな設定の主人公の本を読んで欲しい」
「んー……例えば? 」
「む、そうだな安定した職業に就いたもの、公務職が望ましい」
「それじゃ事件起こりにくいじゃん」
「貴族の汚職を暴く路線ならどうだ? 」
「丁寧に書きすぎたら現実の権力者に粛清されそう」
「それもそうだな」
「やっぱこの三度の飯にアルコール入れないと手が震える系の主人公が良いよ」
「極端だな」
「シリアスシーンの合間にワインがぶ飲みタイム挟まって和むんだよね」
「何処に和む要素が? 」
「章の終わりは大体急性アルコール中毒で病院に担ぎ込まれるのがセット」
「教育に悪い」
「シリーズ打ち切りになったらそれを死因にすればいいから楽だってあとがきに書かれてたよ」
「生々しすぎるだろう……さて、ニッキー、ストレッチの時間だ」
「え、やだよ」
 突然なにいいやがるのこの人。

「治りかけの筋肉痛はこれで多少良くなる、動かすぞいいな? そら」
「んぎゃあ! 」
 素早く立ち上がって背中と足に腕差し込まれてヨイショッ、てされた、いてえ。

「軽い、もっと食え」
「んなこと今言う事じゃなくない!?」
「率直な感想だ、ゆっくり腕を伸ばせ、そして深呼吸、やれ」
「すぅーー」


もっとゴロゴロしてたかったのに睡魔が吹き飛ばされてしまった、悲しい。




「おぉ、起きられましたか、では朝食兼昼食としましょう」
ダンさんも来ちゃった……これじゃすぐ二度寝ができない、バッドスマイル。







     
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