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完結編 月の獅子の目は彼の者に
二十八話 ふと意識してしまいまして
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窓の外に腕を伸ばしてみる、おお、手が見えなくなった、冷たい、びちゃびちゃだ。
「こら、なにしている」
「好奇心からつい」
「濡れてるじゃないか、風邪を引いたら大変だろう、こっちに来い」
「やー、もう少し外見てたい」
「拭いてからにしろ、文句を言うな」
「へーい」
恋とはどういうものだろう、とふと気になりました、なんの前触れもなく、自発的に。
嘘つきました、見かけるたびにくねくねしてるメルディアさんみてたら否が応にも意識しちゃう。
"この豪雨ではヴラッドさんたち帰れませんねぇ~、あ! このまま彼雇っちゃいましょう! "
とか言ってダンさんにハリセン食らってたのを見て、ちょっと心がざわついた。
そんなにも恋って良いものなのかなって。
ああでもその恋以前に、自分自身の感覚が薄い、けれどメルディアさんみたいな、舞い上がるような恋の感覚を味わってみたい、贅沢かな、でもいいよね、きっと。
でもどうしよう、何をしたら心が舞い上がるのか、どうしたら恋を自覚できるのか……どうしようね?
「どうした」
「いえー? 特になにも」
ついついエウァルドさんをガン見してしまった。
ソファーに座らされて濡れたところ拭かれてるからなのもあるけど、恋について考えて真っ先に考えるのがエウァルドさんだし、すぐ目の前にいたら見てしまうのも仕方なし、うん。
「何もなくはないだろう、なにを考えている」
「ちょっと恥ずかしいこと」
「そうか、言ってくれ」
ん?
「恥ずかしいから言えないよ」
「確かにそうだな、言ってくれ」
……んん?
「だからぁー、無理だって」
「無理なものか、言ってくれなければ恥ずべきことがどうかも分からないだろう、というわけだ、言ってくれ」
「おんん」
会話してるように見えて一方的にゴリ押しされてるなこれ。
「ふむ、どうしたら言ってくれるんだ? 」
「んーそうだねー、もう少し考えさせてくれたら? 」
「具体的には」
拭き終わっても尚続く近距離の状況で更に顔が近くなる、流石に目と鼻の先一歩手前で目を合わせる度胸は持ち合わせてないから目線をずらす、なんかムカムカしてきた、ペチンしてやろうか。
「多分、明日には恥ずかしさ抑えて伝えてれると思う」
「遅い、もっと早く頼む」
「なんでよ」
「待てない」
「わがままだね!」
「そう受け取ってもらっていい」
「んーなら、二時間後にもう一回お伺い頂戴、上手く整理できてれば言えるかも」
「分かった、楽しみにしている」
「なんでよ、あと近いよ、動けない」
「すまん」
ペシッとはしなくても圧迫感が酷いから嫌。
※※※
「ごきげんいかがですかな」
ひょっこりにっこりと開いた扉からダンさんかが顔を出す
雨音によって蓋をされた部屋には例え世間話のような声量でもとても響く。
そして僕はニコッと口元をあげ返した。
「とてものんびりと過ごしてます」
椅子を窓辺に持っていって、硬めのクッションを重ねて座りながらでも窓の向こう、大粒に降る雨を眺めていたい。
そんな気持ちのままにぼーっとしてたところにダンさんがやってきたのである。
どうやら用事とは別カテゴリーで様子見として一日に二回くらい声をかけられるっぽい、さながら老人ホームのおじいちゃんの気分。
そんなダンさん、たまに生暖か~い視線を感じるときがある、気もする。
その理由に該当する内容を何となく考える……あったわ、ひとつ。
結論の前に前提を……言い訳を並べよう。
ま僕は運動よりも読書、動くことよりその場に止まること、走ることより寝ることが好きな理由がなければ動かないインドア人間なのである。
その結果としては、自発的に部屋からでないものぐさ人間の出来上がり。
運動しなきゃなのもわかる、でも目的が無いと、ねぇ? 気を抜いたらすぐぼーっと時間を溶かしてしまう。
外に耳を傾けるだけで簡単に一時間は過ぎていく、われに返ると後悔するけど、それまでは緩やかな気持ちになれる、そんな気持ち。
毎日毎日そんなものじゃ心配というか呆れられるのも無理もないかも。
「ふぇあ 」
「どうした」
「あくびー」
「そうか、昼寝には早いぞ」
「しないよ、まだ」
このところまた少しだけ体力がついてきた、気がする。
昼寝の回数も、一日に一回になったし、それも眠気からじゃなくて、そういう時間だからする、て感覚になった、気がする。
ならシンプルな話、運動しろ、なんだけど、動くためのやる気がない、まあこれはやる気がなくても惰性でできるとして、問題は別ね。
そのやる気がなんででないのか、うん、あれよあれ、目的がない。
体を動かす理由が薄い、ダンさんたちに恩返しするにもその方法が見つからない、バッドスマイル。
目的を探す目的っていう意味のわからないことになってるからそれにいらないリソースを取られている、つまりは言い訳がましくなっているこの悪い循環、心地の良い最悪ってやつ。
過去の自分に戻りたい? それとも未来の自分への一歩を踏みたい?
それともそれとも……今を大事にしたい?
自分は一体"何処"を見ればいのやら、問題が形になってきたのはいいのだけど、それも含めて解決していかなきゃト思うと億劫になる、僕はなにになりたいのかねぇ。
「ニッキー」
「なーにー? 」
「ケーキが焼けたそうだ、いこう」
「わーい」
とりあえず今この瞬間は、エウァルドさんの手を取ればいいか、よいしょ。
「こら、なにしている」
「好奇心からつい」
「濡れてるじゃないか、風邪を引いたら大変だろう、こっちに来い」
「やー、もう少し外見てたい」
「拭いてからにしろ、文句を言うな」
「へーい」
恋とはどういうものだろう、とふと気になりました、なんの前触れもなく、自発的に。
嘘つきました、見かけるたびにくねくねしてるメルディアさんみてたら否が応にも意識しちゃう。
"この豪雨ではヴラッドさんたち帰れませんねぇ~、あ! このまま彼雇っちゃいましょう! "
とか言ってダンさんにハリセン食らってたのを見て、ちょっと心がざわついた。
そんなにも恋って良いものなのかなって。
ああでもその恋以前に、自分自身の感覚が薄い、けれどメルディアさんみたいな、舞い上がるような恋の感覚を味わってみたい、贅沢かな、でもいいよね、きっと。
でもどうしよう、何をしたら心が舞い上がるのか、どうしたら恋を自覚できるのか……どうしようね?
「どうした」
「いえー? 特になにも」
ついついエウァルドさんをガン見してしまった。
ソファーに座らされて濡れたところ拭かれてるからなのもあるけど、恋について考えて真っ先に考えるのがエウァルドさんだし、すぐ目の前にいたら見てしまうのも仕方なし、うん。
「何もなくはないだろう、なにを考えている」
「ちょっと恥ずかしいこと」
「そうか、言ってくれ」
ん?
「恥ずかしいから言えないよ」
「確かにそうだな、言ってくれ」
……んん?
「だからぁー、無理だって」
「無理なものか、言ってくれなければ恥ずべきことがどうかも分からないだろう、というわけだ、言ってくれ」
「おんん」
会話してるように見えて一方的にゴリ押しされてるなこれ。
「ふむ、どうしたら言ってくれるんだ? 」
「んーそうだねー、もう少し考えさせてくれたら? 」
「具体的には」
拭き終わっても尚続く近距離の状況で更に顔が近くなる、流石に目と鼻の先一歩手前で目を合わせる度胸は持ち合わせてないから目線をずらす、なんかムカムカしてきた、ペチンしてやろうか。
「多分、明日には恥ずかしさ抑えて伝えてれると思う」
「遅い、もっと早く頼む」
「なんでよ」
「待てない」
「わがままだね!」
「そう受け取ってもらっていい」
「んーなら、二時間後にもう一回お伺い頂戴、上手く整理できてれば言えるかも」
「分かった、楽しみにしている」
「なんでよ、あと近いよ、動けない」
「すまん」
ペシッとはしなくても圧迫感が酷いから嫌。
※※※
「ごきげんいかがですかな」
ひょっこりにっこりと開いた扉からダンさんかが顔を出す
雨音によって蓋をされた部屋には例え世間話のような声量でもとても響く。
そして僕はニコッと口元をあげ返した。
「とてものんびりと過ごしてます」
椅子を窓辺に持っていって、硬めのクッションを重ねて座りながらでも窓の向こう、大粒に降る雨を眺めていたい。
そんな気持ちのままにぼーっとしてたところにダンさんがやってきたのである。
どうやら用事とは別カテゴリーで様子見として一日に二回くらい声をかけられるっぽい、さながら老人ホームのおじいちゃんの気分。
そんなダンさん、たまに生暖か~い視線を感じるときがある、気もする。
その理由に該当する内容を何となく考える……あったわ、ひとつ。
結論の前に前提を……言い訳を並べよう。
ま僕は運動よりも読書、動くことよりその場に止まること、走ることより寝ることが好きな理由がなければ動かないインドア人間なのである。
その結果としては、自発的に部屋からでないものぐさ人間の出来上がり。
運動しなきゃなのもわかる、でも目的が無いと、ねぇ? 気を抜いたらすぐぼーっと時間を溶かしてしまう。
外に耳を傾けるだけで簡単に一時間は過ぎていく、われに返ると後悔するけど、それまでは緩やかな気持ちになれる、そんな気持ち。
毎日毎日そんなものじゃ心配というか呆れられるのも無理もないかも。
「ふぇあ 」
「どうした」
「あくびー」
「そうか、昼寝には早いぞ」
「しないよ、まだ」
このところまた少しだけ体力がついてきた、気がする。
昼寝の回数も、一日に一回になったし、それも眠気からじゃなくて、そういう時間だからする、て感覚になった、気がする。
ならシンプルな話、運動しろ、なんだけど、動くためのやる気がない、まあこれはやる気がなくても惰性でできるとして、問題は別ね。
そのやる気がなんででないのか、うん、あれよあれ、目的がない。
体を動かす理由が薄い、ダンさんたちに恩返しするにもその方法が見つからない、バッドスマイル。
目的を探す目的っていう意味のわからないことになってるからそれにいらないリソースを取られている、つまりは言い訳がましくなっているこの悪い循環、心地の良い最悪ってやつ。
過去の自分に戻りたい? それとも未来の自分への一歩を踏みたい?
それともそれとも……今を大事にしたい?
自分は一体"何処"を見ればいのやら、問題が形になってきたのはいいのだけど、それも含めて解決していかなきゃト思うと億劫になる、僕はなにになりたいのかねぇ。
「ニッキー」
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