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スティーブでした
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スティーブは恐る恐るキャスリンに近づいた。手を差し伸べるがキャスリンの体を突き抜けてしまった。
「キャスリン様。ちょっとこちらへよろしいですか」
スティーブは校舎の裏のほうの人がいないほうへと人目を避けるようにして歩いていく。キャスリンもスティーブの後を追った。
誰もいないことを確認したスティーブがキャスリンのほうを見た。
「キャスリン様ですよね。でもなんだか縮んでいますね」
冗談でも言って笑わせようかと思ったのかスティーブが微笑んでいった。
「ひどいわ。まだ成長してないのよ。だって12才だもの」
「12歳?」
「スティーブ、剣の授業はいいの?もう始まっちゃうわよ」
「大丈夫です。こう見えて優秀ですから」
「知ってるわよ、そんなこと」
「キャスリン様泣いていますよ」
キャスリンの涙を拭こうとしてポケットの中のハンカチを出したが、手は下がったままだった。キャスリンに触れないことを思い出したのだろう。
キャスリンは他愛ない話をしながら会えてあまりにうれしかったせいか涙が出ていたのだろう。スティーブに指摘されて初めて自分が泣いているのを知った。
キャスリンはもし会えたら絶対に言おうと思っていた言葉を言った。
「スティーブ、愛しているわ」
キャスリンの突然の告白にびっくりして一瞬目を丸くしたスティーブだがにやっと笑ってから、すぅーと膝を折った。地面に片膝をついて、右手を胸の前に持ってきて頭を下げた。
「キャスリン様、私スティーブはいつもキャスリン様とともに居ります。どこまでも、いつまでも」
「うそよ!いないじゃない!嘘つき!嘘つきスティーブ!」
キャスリンはそう叫んだ。あまりにスティーブに会えたうれしさと失ってしまった悲しさいろいろな気持ちが混ざり合ってスティーブにぶつけてしまった。
スティーブはキャスリンの悲しい叫び声に驚いたように、はっとしてからキャスリンの顔をじっと見つめた。
「ごめんなさい。あなたが悪いわけじゃないのに」
キャスリンは叫んでしまってから、スティーブの顔を見ることもできずに下を向いて謝った。
「キャスリン様いったい何があったのですか」
いつもの優しいスティーブの声がしてキャスリンはスティーブのほうを向いた。
「あのね...」
後に言葉を続けようとして、キャスリンはまたどこかに投げ出されるような衝撃を感じた。
気が付けば、そこはスティーブといた学園ではなく自分の魔法部屋だった。
ただ不思議と体がどっと疲れていて、すぐそばにあった椅子に座った。
どれぐらいそうしていただろうか。キャスリンはドアを控えめにノックする音に気がついた。
「お嬢様いらっしゃいますか」
バーバラの声がした。夕食の時間になっていた。
夕食の時にはあまりにつかれていて、食べるのもおっくうになるほどだった。
「お嬢様何かありましたか?」
どうにか食事を終えて部屋に戻ろうとして、執事のマークに呼び止められた。
「なんだか眠いの。今日は早く寝るわ」
キャスリンは何でもないことのように言うと、それを聞いたマークが顔をしかめた。
「魔法のお勉強もほどほどになさってくださいませ。腕輪についている石が白くなりかけております」
キャスリンはマークの指摘で腕輪を見た。確かに黄色い石が少し白くなっている。
過去に戻った時に魔力をものすごく使ったのだろうか。マークには適当に答えてキャスリンは部屋に戻った。その日はぐっすり眠った。
翌朝起きてすぐ腕輪を見ると、腕輪の意思は鮮やかな黄色い色をしていた。体調は元気そのものだったが、キャスリンは体調不良ということで今日の勉強はずるをして休むことにした。
朝食をとると急いで魔法部屋に行ってひとり昨日の事を考えた。確かに昨日はスティーブと会えた。キャスリンを見ることができた男の人の事も気になるけれど、それよりスティーブにもう一度会いたい。会って話をしたい。
キャスリンは女性の頭の中にいたときの事を必死に思い返した。
ーそうだ、確か彼女が便利アイテムといっていた変わったものを作っていたんだったわ!彼女なんといっていたかしら?
不意に彼女が言った言葉を思い出した。
「そうよ。アイテムを作ればいいんだわ。そうねえ、鏡よ鏡よ鏡さんこの世界で一番美しいのはだあれ?じゃないわよ!いやだ~これじゃあ私がまるで悪い魔女になっちゃうじゃない。そうよ!魔法の鏡よ、作ればいいじゃない!鏡の前で使いたい魔法を聞けばいいのよ。そうしてなんでも答えてくれるアイテムにするのよ!
私って天才?!すご~い!」
ーあの女性はそういって自分で作った鏡をもってはしゃいでいたんだったわ。
キャスリンは前にマークの部屋で出した箱を頭の中で思い浮かべた。するとポンっといった風に目の前に箱が現れた。キャスリンは箱のふたを開けた。中を見ると女性が作ったと思われる鏡があった。
鏡には下に持ち手が付いている。
キャスリンは鏡をもって頭の中で使いたい魔法をいくつか思い描いた。すると鏡からもくもくと白い煙が出てきてキャスリンを包み込んだ。しばらくして煙が消えた。
「そうか!その魔法なのね」
キャスリンはそれを使うべくまた部屋の真ん中に立って、スティーブを思い浮かべた。
体が少し揺れる気がして、気が付けば違う場所にいた。
「ここどこかしら」
目の前に大きなベッドがあった。ベッドの上からすやすやと人が眠っている気配がする。キャスリンは急いでベッドの上に行こうとしたが、目の前のベッドは大きすぎて上が見られない。また自分が縮んでしまったのかしらと自分の体を見ると、茶色の毛でおおわれたものが目に飛び込んできた。下を見ると、人間の足ではなくあまりに短い茶色い毛でおおわれた足が生えていた。
「えっ、なにこれ?」
キャスリンは知らず知らず大声で叫んだ。
キャスリンの大声でベッドの住人がむくっと起き上がった。そしてベッド下のキャスリンを見た。
「犬?なんで犬?がこんなところにいるんだ!」
スティーブもキャスリンに負けず劣らす叫んでいた。
「キャスリン様。ちょっとこちらへよろしいですか」
スティーブは校舎の裏のほうの人がいないほうへと人目を避けるようにして歩いていく。キャスリンもスティーブの後を追った。
誰もいないことを確認したスティーブがキャスリンのほうを見た。
「キャスリン様ですよね。でもなんだか縮んでいますね」
冗談でも言って笑わせようかと思ったのかスティーブが微笑んでいった。
「ひどいわ。まだ成長してないのよ。だって12才だもの」
「12歳?」
「スティーブ、剣の授業はいいの?もう始まっちゃうわよ」
「大丈夫です。こう見えて優秀ですから」
「知ってるわよ、そんなこと」
「キャスリン様泣いていますよ」
キャスリンの涙を拭こうとしてポケットの中のハンカチを出したが、手は下がったままだった。キャスリンに触れないことを思い出したのだろう。
キャスリンは他愛ない話をしながら会えてあまりにうれしかったせいか涙が出ていたのだろう。スティーブに指摘されて初めて自分が泣いているのを知った。
キャスリンはもし会えたら絶対に言おうと思っていた言葉を言った。
「スティーブ、愛しているわ」
キャスリンの突然の告白にびっくりして一瞬目を丸くしたスティーブだがにやっと笑ってから、すぅーと膝を折った。地面に片膝をついて、右手を胸の前に持ってきて頭を下げた。
「キャスリン様、私スティーブはいつもキャスリン様とともに居ります。どこまでも、いつまでも」
「うそよ!いないじゃない!嘘つき!嘘つきスティーブ!」
キャスリンはそう叫んだ。あまりにスティーブに会えたうれしさと失ってしまった悲しさいろいろな気持ちが混ざり合ってスティーブにぶつけてしまった。
スティーブはキャスリンの悲しい叫び声に驚いたように、はっとしてからキャスリンの顔をじっと見つめた。
「ごめんなさい。あなたが悪いわけじゃないのに」
キャスリンは叫んでしまってから、スティーブの顔を見ることもできずに下を向いて謝った。
「キャスリン様いったい何があったのですか」
いつもの優しいスティーブの声がしてキャスリンはスティーブのほうを向いた。
「あのね...」
後に言葉を続けようとして、キャスリンはまたどこかに投げ出されるような衝撃を感じた。
気が付けば、そこはスティーブといた学園ではなく自分の魔法部屋だった。
ただ不思議と体がどっと疲れていて、すぐそばにあった椅子に座った。
どれぐらいそうしていただろうか。キャスリンはドアを控えめにノックする音に気がついた。
「お嬢様いらっしゃいますか」
バーバラの声がした。夕食の時間になっていた。
夕食の時にはあまりにつかれていて、食べるのもおっくうになるほどだった。
「お嬢様何かありましたか?」
どうにか食事を終えて部屋に戻ろうとして、執事のマークに呼び止められた。
「なんだか眠いの。今日は早く寝るわ」
キャスリンは何でもないことのように言うと、それを聞いたマークが顔をしかめた。
「魔法のお勉強もほどほどになさってくださいませ。腕輪についている石が白くなりかけております」
キャスリンはマークの指摘で腕輪を見た。確かに黄色い石が少し白くなっている。
過去に戻った時に魔力をものすごく使ったのだろうか。マークには適当に答えてキャスリンは部屋に戻った。その日はぐっすり眠った。
翌朝起きてすぐ腕輪を見ると、腕輪の意思は鮮やかな黄色い色をしていた。体調は元気そのものだったが、キャスリンは体調不良ということで今日の勉強はずるをして休むことにした。
朝食をとると急いで魔法部屋に行ってひとり昨日の事を考えた。確かに昨日はスティーブと会えた。キャスリンを見ることができた男の人の事も気になるけれど、それよりスティーブにもう一度会いたい。会って話をしたい。
キャスリンは女性の頭の中にいたときの事を必死に思い返した。
ーそうだ、確か彼女が便利アイテムといっていた変わったものを作っていたんだったわ!彼女なんといっていたかしら?
不意に彼女が言った言葉を思い出した。
「そうよ。アイテムを作ればいいんだわ。そうねえ、鏡よ鏡よ鏡さんこの世界で一番美しいのはだあれ?じゃないわよ!いやだ~これじゃあ私がまるで悪い魔女になっちゃうじゃない。そうよ!魔法の鏡よ、作ればいいじゃない!鏡の前で使いたい魔法を聞けばいいのよ。そうしてなんでも答えてくれるアイテムにするのよ!
私って天才?!すご~い!」
ーあの女性はそういって自分で作った鏡をもってはしゃいでいたんだったわ。
キャスリンは前にマークの部屋で出した箱を頭の中で思い浮かべた。するとポンっといった風に目の前に箱が現れた。キャスリンは箱のふたを開けた。中を見ると女性が作ったと思われる鏡があった。
鏡には下に持ち手が付いている。
キャスリンは鏡をもって頭の中で使いたい魔法をいくつか思い描いた。すると鏡からもくもくと白い煙が出てきてキャスリンを包み込んだ。しばらくして煙が消えた。
「そうか!その魔法なのね」
キャスリンはそれを使うべくまた部屋の真ん中に立って、スティーブを思い浮かべた。
体が少し揺れる気がして、気が付けば違う場所にいた。
「ここどこかしら」
目の前に大きなベッドがあった。ベッドの上からすやすやと人が眠っている気配がする。キャスリンは急いでベッドの上に行こうとしたが、目の前のベッドは大きすぎて上が見られない。また自分が縮んでしまったのかしらと自分の体を見ると、茶色の毛でおおわれたものが目に飛び込んできた。下を見ると、人間の足ではなくあまりに短い茶色い毛でおおわれた足が生えていた。
「えっ、なにこれ?」
キャスリンは知らず知らず大声で叫んだ。
キャスリンの大声でベッドの住人がむくっと起き上がった。そしてベッド下のキャスリンを見た。
「犬?なんで犬?がこんなところにいるんだ!」
スティーブもキャスリンに負けず劣らす叫んでいた。
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