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第二章 乱召喚と恋する白魔道士
38話 いきなり揺れる初恋
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あれから訓練所に行くのもまた楽しみになり、私は平和で幸せな毎日を送っていた。
今日は訓練所もお休みの日。みんなを送り出してバルコニーで洗濯物を干し、リビングへ戻ると、ジャンがソファに座ってくつろいでいた。
「あ、今日はジャンがお休みかぁ」
「おうよ。つーかさくら、お前急に元気になったよな」
「えっ、そうかな……」
「次の休みに空の散歩にでも連れてってやろうかと思ってたけど、ま、元気になったんならいいか」
「ジャン……まさか心配してくれてたの?」
「ったりめぇだろ。あんなショボくれた顔しやがって……。多分俺だけじゃねぇ、みんな心配してたと思うぞ」
あれ? 私のことを見ててくれたのは、レオンだけではなかったようです……。
「あー、そうなんだ……。心配かけてごめんね?」
「ん、まぁ元気そうだからいいけどよ、何があったんだ?」
「えっとね……」
私はストーカー男の話を彼にした。
⸺⸺
「なるほどなぁ、お前そういうの言えねぇんだな」
「うん……なかなか言い出せなかった」
「なら、俺も変に様子見ねぇでいつもみたいに聞くようにするわ。よぉさくら、どうした生理か? ってな」
ジャンはそう言ってニッと笑う。
「もー、聞き方が下品!」
私は頬をぷくーっと膨らませた。そんな私の頬をお構いなしに両手で挟むように潰し、満足気に笑うジャン。
「っていうかジャン、さっき空の散歩って言った?」
「お? 行くか?」
「えっと、なぁに、それ?」
「行くか?」
話が通じないんだけど……。でも、空の散歩って響きがなんだかワクワクする。
「行きます……」
「っしゃぁ、行こうぜ!」
私はズボンに変えてくるように言われ、ワンピースから動きやすそうな服へと着替えると、ジャンと共にアジトを出発した。
⸺⸺ブライリアント大平原⸺⸺
普通に2人で歩いて王都を出る。
「ジャン、今の所普通の散歩なんだけど……」
「王都は全域飛行禁止エリアだからな」
「飛行禁止……まさかジャンって、飛べるの!?」
「なんだ、飛べねぇと思ってたのか」
「だって、飛んでるところ見たことがなかったから……」
「だから、王都は飛行禁止なんだって。人が多いところは危ねぇからって禁止のところがほとんどなんだよ。入口にあったろ? 羽マークに赤い斜線の入った標識」
「あああ、あるある! あれ何だろうってずっと思ってた!」
私が興奮気味に答えると、ジャンは満足そうに笑った。
「じゃ、ハグとお姫様抱っこ、どっちがいい?」
何それどういう意味? でもどうせ聞き返しても同じ質問してくるだろうし……。
「お姫様抱っこで」
「承知しましたさくら姫」
ジャンはわざとらしくそう返事をすると、私をひょいっとお姫様抱っこして、翼を勢い良く羽ばたかせ、空へふわっと飛び上がった。
「うわぁっ!」
バサッバサッと音を立てながら、どんどん高度が上がっていく。
そして高い位置から見下ろした大平原や、大きな王都の景色は圧巻の一言だった。
「わぁぁっ、綺麗!」
「だろ? じゃ、空の散歩へしゅっぱーつ」
「進行~!」
前回は徒歩で向かったロカの森の上空をスーッと通過する。
「なぁ、あれだろ、さくらが召喚された石造りの建物って」
「あ、そうそう!」
「俺も裁きの雷とか言うの見てみたかったなぁ」
「こんなすごい景色がいつも見られてるのに? 欲張りさんだね?」
「俺は生まれたときからずっと欲張りさんだぜ?」
「生まれつきだったか……あ、ラナンの村だ!」
「ほいほい」
ジャンはわざと高度を落として村のすぐ上を通過してくれた。
「おーい!」
私は見覚えのある人たちへ手を振る。
「わっ、さくらさん!? おーい!」
「さくらさんが飛んでる!」
「さくらさーん!」
村のみんなも空を見上げて手を振り返してくれた。
そして村を過ぎるとまた高度を上げて、私の知らない森の上を通過する。
しばらく堪能すると、一際大きな大木のてっぺんへと到着した。
太い枝の上であぐらをかくジャン。そして私はその膝の上へと降ろされる。
「わぁ、落ちる、落ちる……!」
「落とさねぇよ」
ジャンはそう言って私をしっかりと抱きしめてくれた。
あれ? 何これなんかドキドキする……。
この広い世界でジャンと2人きりになったような、そんな感じがする。
「さくらさぁ、あんま気絶しなくなったか?」
と、ジャン。
「ううん、するよ? 何で?」
私は即答する。
「すんのかよ……。いやだって今気絶してねぇから」
そう言われてみれば、ジャンにずっとお姫様抱っこされてて、今は膝の上で後ろから抱きしめられている。
「今は、この景色がすごすぎるから、気が紛れてるのかも……」
気絶はしなくてもドキドキはしてる。
「なるほどなぁ。じゃ、ここでなら抱かせてくれるのか?」
「まだ私のこと抱こうと思ってたの!?」
「そりゃぁな」
「だ、だめ!」
「何でよ?」
「何でって……」
レオンの顔が頭をよぎる。だって私はレオンのことが……。
「優しくするから、さ」
不意に耳元で囁かれたその彼には似合わない甘いボイスに、頭の中のレオンがゆらゆらっと揺れる。
「だ……だめー!」
「くーっ、だめかぁ……」
私はその甘い誘惑を何とか振り切ることに成功した。
今日は訓練所もお休みの日。みんなを送り出してバルコニーで洗濯物を干し、リビングへ戻ると、ジャンがソファに座ってくつろいでいた。
「あ、今日はジャンがお休みかぁ」
「おうよ。つーかさくら、お前急に元気になったよな」
「えっ、そうかな……」
「次の休みに空の散歩にでも連れてってやろうかと思ってたけど、ま、元気になったんならいいか」
「ジャン……まさか心配してくれてたの?」
「ったりめぇだろ。あんなショボくれた顔しやがって……。多分俺だけじゃねぇ、みんな心配してたと思うぞ」
あれ? 私のことを見ててくれたのは、レオンだけではなかったようです……。
「あー、そうなんだ……。心配かけてごめんね?」
「ん、まぁ元気そうだからいいけどよ、何があったんだ?」
「えっとね……」
私はストーカー男の話を彼にした。
⸺⸺
「なるほどなぁ、お前そういうの言えねぇんだな」
「うん……なかなか言い出せなかった」
「なら、俺も変に様子見ねぇでいつもみたいに聞くようにするわ。よぉさくら、どうした生理か? ってな」
ジャンはそう言ってニッと笑う。
「もー、聞き方が下品!」
私は頬をぷくーっと膨らませた。そんな私の頬をお構いなしに両手で挟むように潰し、満足気に笑うジャン。
「っていうかジャン、さっき空の散歩って言った?」
「お? 行くか?」
「えっと、なぁに、それ?」
「行くか?」
話が通じないんだけど……。でも、空の散歩って響きがなんだかワクワクする。
「行きます……」
「っしゃぁ、行こうぜ!」
私はズボンに変えてくるように言われ、ワンピースから動きやすそうな服へと着替えると、ジャンと共にアジトを出発した。
⸺⸺ブライリアント大平原⸺⸺
普通に2人で歩いて王都を出る。
「ジャン、今の所普通の散歩なんだけど……」
「王都は全域飛行禁止エリアだからな」
「飛行禁止……まさかジャンって、飛べるの!?」
「なんだ、飛べねぇと思ってたのか」
「だって、飛んでるところ見たことがなかったから……」
「だから、王都は飛行禁止なんだって。人が多いところは危ねぇからって禁止のところがほとんどなんだよ。入口にあったろ? 羽マークに赤い斜線の入った標識」
「あああ、あるある! あれ何だろうってずっと思ってた!」
私が興奮気味に答えると、ジャンは満足そうに笑った。
「じゃ、ハグとお姫様抱っこ、どっちがいい?」
何それどういう意味? でもどうせ聞き返しても同じ質問してくるだろうし……。
「お姫様抱っこで」
「承知しましたさくら姫」
ジャンはわざとらしくそう返事をすると、私をひょいっとお姫様抱っこして、翼を勢い良く羽ばたかせ、空へふわっと飛び上がった。
「うわぁっ!」
バサッバサッと音を立てながら、どんどん高度が上がっていく。
そして高い位置から見下ろした大平原や、大きな王都の景色は圧巻の一言だった。
「わぁぁっ、綺麗!」
「だろ? じゃ、空の散歩へしゅっぱーつ」
「進行~!」
前回は徒歩で向かったロカの森の上空をスーッと通過する。
「なぁ、あれだろ、さくらが召喚された石造りの建物って」
「あ、そうそう!」
「俺も裁きの雷とか言うの見てみたかったなぁ」
「こんなすごい景色がいつも見られてるのに? 欲張りさんだね?」
「俺は生まれたときからずっと欲張りさんだぜ?」
「生まれつきだったか……あ、ラナンの村だ!」
「ほいほい」
ジャンはわざと高度を落として村のすぐ上を通過してくれた。
「おーい!」
私は見覚えのある人たちへ手を振る。
「わっ、さくらさん!? おーい!」
「さくらさんが飛んでる!」
「さくらさーん!」
村のみんなも空を見上げて手を振り返してくれた。
そして村を過ぎるとまた高度を上げて、私の知らない森の上を通過する。
しばらく堪能すると、一際大きな大木のてっぺんへと到着した。
太い枝の上であぐらをかくジャン。そして私はその膝の上へと降ろされる。
「わぁ、落ちる、落ちる……!」
「落とさねぇよ」
ジャンはそう言って私をしっかりと抱きしめてくれた。
あれ? 何これなんかドキドキする……。
この広い世界でジャンと2人きりになったような、そんな感じがする。
「さくらさぁ、あんま気絶しなくなったか?」
と、ジャン。
「ううん、するよ? 何で?」
私は即答する。
「すんのかよ……。いやだって今気絶してねぇから」
そう言われてみれば、ジャンにずっとお姫様抱っこされてて、今は膝の上で後ろから抱きしめられている。
「今は、この景色がすごすぎるから、気が紛れてるのかも……」
気絶はしなくてもドキドキはしてる。
「なるほどなぁ。じゃ、ここでなら抱かせてくれるのか?」
「まだ私のこと抱こうと思ってたの!?」
「そりゃぁな」
「だ、だめ!」
「何でよ?」
「何でって……」
レオンの顔が頭をよぎる。だって私はレオンのことが……。
「優しくするから、さ」
不意に耳元で囁かれたその彼には似合わない甘いボイスに、頭の中のレオンがゆらゆらっと揺れる。
「だ……だめー!」
「くーっ、だめかぁ……」
私はその甘い誘惑を何とか振り切ることに成功した。
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