魔法使いとて、築15年(偽)・十二階建てマンションオーナーは色々と大変です

 ――異世界召喚なんて、漫画やアニメの中だけでいいんだよ。



 そう、尾田流星(おだ・りゅうせい)が心底思い知ったのは、15の冬。入試を無事に突破し、入学式を迎えるまでの、束の間の一時であった。

 
 思い知った場所は、己が住まう自室……ではない。事実をありのままに語るならば、その、異世界である。



 つまりは、異世界に召喚されたのだ。前触れもなく、いきなり。もう寝ようかと寝間着に着替えようとしていた、その時であった。

 フッと、視界が白く染まった――と、思った時にはもう……流星は、己が暮らしていた世界とは異なる場所に居た。

 当然……流星は混乱した。

 そこは、画面の向こうでしか見た事がない光景であった。まるで、ファンタジーの世界を肉眼で見ているかのような……いや、違う、正しく、ファンタジーの世界であった。

 魔法が有って、モンスターが居て、王様が居て、魔王が居て、勇者が居る。そんな、ファンタジーの世界で……流星は、大勢の人たちに囲まれていた。

 ……元の世界に帰ることを条件に、魔王の討伐を命じられた流星は、6年という月日をかけ、命懸けの戦いに全てを注ぎ込み……ついに、目的を果たしたのであった

 そうして、元の世界に戻った彼は……ただ一つを願った。


 ――兎にも角にも、何も考えずに時を過ごしたい……と。


 流星は、疲れ切っていた。だから、作ることにした……ただひたすら、緩やかに時を過ごせる自分の城を……。
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