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しおりを挟むクラウディアが、畑仕事や木箱づくりをやってみたい、と言った翌日から、クラウディアの日課は変化した。
午前中は、クラウディアの希望と、使用人たちの懇願もあり、クラウディアによる執務の補助は続けることになった。幼い頃から培われた事務処理能力によって、公爵領の執務を担当している使用人たちはスムーズに執務を進められることを泣くほど喜んでいた。
そんな様子を見たテオドールは思う所があったのか、クラウディアが執務をしている午前中は、テオドールも執務をするようになった。クラウディアの執務を捌くスピードとは雲泥の差だが、それでも公爵家の使用人たちは諸手を挙げて喜んだ。テオドールでないと触れない執務はいつも滞りがちだったが、それが解消されたからだ。
「これも全て、クラウディア様のおかげだな。」
「あれほど可愛らしくて有能な方が婚約してくれるなんて、テオドール様は幸運だよな。」
「クラウディア様は、しょっちゅうテオドール様に見惚れているが、そんなところも可愛らしいよな。」
そんな雑談が出来るほど、執務に余裕が出来た使用人たちは、クラウディアにも、そのクラウディアがテオドールの所へ来ることになった原因のレジナルドにも、心の底から感謝した。
◇◇◇◇
「テオドール様。こちらのパプリカは収穫できました。」
「ああ。ありがとう。あっちもお願いしていいか?」
「はい!」
執務を終えた午後からは、畑仕事や木箱づくりに精を出すテオドールとクラウディア。畑仕事なんて、全く経験のないクラウディアだが、勉強家の彼女は、すぐに色々なことを吸収していった。
「今日はここまでにしておこう。……クラウディア嬢、土が髪に。」
「え……。」
テオドールは何の気なしに、クラウディアの髪についた土を払った。ほんの一瞬、髪に触れただけだが、クラウディアは顔を真っ赤にして硬直している。
「あ、す、すまない。」
「い、いえ!ありがとうございます。」
女性に全く慣れていないテオドールが、何の気なしに髪に触れるなど、これまではあり得ないことだった。クラウディアとの距離が少しずつ近づいているからこそ、出来たことだ。だが、そんなことに、テオドールも、クラウディアも、気付くはずは無かった。
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