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しおりを挟む「うっ……!」
ジョアンナに痛いところを突かれ、テオドールは言葉を詰まらせた。
「何なんですか!汗の匂いを嗅がれるほど、あんなに好かれているならもっと積極的にアタックすべきです!」
私なら絶対嗅ぎません!と断言されテオドールだけでなくサムまでも目に涙を浮かべた。
サムはテオドールよりずっと若いが、同じ男としてテオドールの心の傷に深く共鳴したためだ。
「ジョアンナさん……それは駄目ですよ……。」
「……っ、申し訳ありません。言葉が過ぎました。」
「いや……。」
テオドールは首を振ったが、心はズタズタだった。可愛い婚約者に汗の匂いを嗅がれ、それだけでも動揺していたのに、心を許している使用人に汗を嗅がせた訳でも無いのに絶対嗅がないと言われてしまったのだ。おじさんというものは、一見図々しいように見えて実際のところナイーブな生き物なのだ。
サムはコホンと咳払いした後で口を開いた。
「旦那様。ジョアンナさんは、旦那様が如何にクラウディア様から愛されているかお伝えしようとしただけですよ。」
「あ、ああ。……クラウディアが想ってくれていることは分かっている。」
「でしたら……!」
ジョアンナは思わず声を上げた。ジョアンナは、ずっと仕えていたテオドールにも、努力家で可愛らしいクラウディアにも、叶うことなら今すぐにでも幸せになって欲しいだけなのだ。
「だが、クラウディアが俺を想ってくれていることと、俺の気持ちを信じられるかどうかは別のものだと思っている。……俺は散々クラウディアを傷つけてきたからな。だからクラウディアが信じたいと思えるまでゆっくりアプローチしたいんだ。」
目を伏せて、そう言ったきりテオドールは口を閉ざしてしまった。ジョアンナは多少強引な手を使っても籍を入れてしまうように進言するつもりだったのに、言えないままだった。……数日後、無理矢理籍を入れておけば良かったなんて後悔するとも知らずに。
※お知らせ※
『落ちこぼれと森の魔女』本日より公開しております。きずな児童書大賞エントリー中です。児童書カテゴリーですが、幅広い年代の方が楽しめたら良いな、と考えております。宜しければ是非お楽しみください!
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