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Act.10 いざ、敵の本拠地へ
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「分かりません。……ただ、シスター・マキナの話からすると、もしかしたらですが、あり得ます」
俺の返答に、クリストファー様の口元が笑みの形に歪んでいく。
「……フフ」
テーブルの上では、小鳥とリスが互いに抱き合ってガタガタと震え怯えている。
「アイツ、何されたか知らないけど、そんなことになってるなんてねぇ……」
そう独りごちた瞬間、ス……、と恐ろしいまでの無表情になった。
「まあ、どうでもいいけど」
……何があろうが復讐するだけだし、という心の声が聞こえたような気がする。
ちら、と俺はテーブルの上に視線を移した。相変わらず二匹はひっしと抱き合ったままガタガタ震えている。
……何か、小動物が震えているのを見ると、流石に可哀想になってきたな。
マジックポーチの口を開け、買っておいたバゲットとノルニアの森産ベリーを取り出す。
二匹の前にベリーを転がし、バゲットを小さく千切ってやる。
「ほら、クリストファー様が怖がらせて悪かったな。これでも食べて、気を取り直してくれ」
俺が言うや否や、パッセルがまずバゲットに食いついた。
その様子を見てラタトスクも、恐る恐るベリーに手を伸ばして食べ始めた。もくもくと口を動かしていくうちに、ぱぁぁと表情が明るくなった。
『うまい!』
「ノルニアの森に生えてるベリーだからな。お前の口にも合ったようで良かったよ」
夢中になって食べているラタトスクの頭を、指先で一撫でする。
ベリーを啄み始めたパッセルの頭も、一撫で。
「パッセル、ラタトスクを連れてきてくれて感謝するよ。詳しい道案内が出来るヤツが味方になってくれて良かった」
『ちゅん!』
良かった、おやつと声かけでなんとかメンタルを持ち直したようだ。
パッセルは預かり妖精だからな。様子はよく見ていなきゃ。
「……で、クリストファー様は一体何をなさっているんですか」
いつぞやのように、親指と人差し指で枠を作り、その中から俺を観察している。
その頬は上気し、呼吸は荒ぶっている。
「小動物を慈しむディラン……、それもまたイイ!!」
「……だらしのない顔になっていますよ、クリストファー様」
ハァハァと息を乱しながら言われてもなぁ……。
……正直、今の俺のクリストファー様への感情だと、押し倒されたとしても前のようにすげなくあしらえる自信がないのだ。
今は、リアン救出に全神経を注ぎたい。色事にうつつを抜かしている暇なんて……。
俺はわざとらしい咳払いをした。こんな時でも俺にちょっかいを出す手を緩めないクリストファー様への牽制と、自分の気を引き締めるのを兼ねて、だ。
「……本人からの自己申告もありましたし、道案内をラタトスクに頼むのはいかがでしょう」
すると、あっさりとクリストファー様は指の枠を解いて、真面目に返してきた。
「そうだね。パッセルは方針変更して、イフリートたちへの伝令を頼んだ後、野生の小鳥に紛れて隠れててもらうことにしようか」
俺たちの会話を聞いていたのか、ちゅん、とスズメのさえずりが飛んできた。
これは同意の鳴き声だ。
ベリーとバケットの欠片を食べて満足したのか、顔を洗っているラタトスクも、おうと返事をしてくる。
そのとき、ふとクリストファー様がラタトスクに訊いた。
「そういや、リアンが〝持ってきた〟人間、ってどういうこと?」
『んあ?』
ラタトスクが顔を上げた。何でもないようなこと、まるで日常であったことを口にするように喋り始める。
『ああ、確かお前さんたちんトコに、ココのヨロイ着るタイプの人間が攻め込んでったんだよな?』
「……そうだよ」
『若君がキョーカイに転移するときに、その人間たち、ぜ~んぶ一緒に転移してきたんだよ。お前たちの縁者の人間が殺した奴、怪我させた奴、四大精霊様方が殺った奴、若君が見せしめに何人か殺した奴、無傷じゃあない奴、無傷で済んだ奴、全員まとめてな』
……え? まさか、リアンも何人か殺した、のか……?
俺の返答に、クリストファー様の口元が笑みの形に歪んでいく。
「……フフ」
テーブルの上では、小鳥とリスが互いに抱き合ってガタガタと震え怯えている。
「アイツ、何されたか知らないけど、そんなことになってるなんてねぇ……」
そう独りごちた瞬間、ス……、と恐ろしいまでの無表情になった。
「まあ、どうでもいいけど」
……何があろうが復讐するだけだし、という心の声が聞こえたような気がする。
ちら、と俺はテーブルの上に視線を移した。相変わらず二匹はひっしと抱き合ったままガタガタ震えている。
……何か、小動物が震えているのを見ると、流石に可哀想になってきたな。
マジックポーチの口を開け、買っておいたバゲットとノルニアの森産ベリーを取り出す。
二匹の前にベリーを転がし、バゲットを小さく千切ってやる。
「ほら、クリストファー様が怖がらせて悪かったな。これでも食べて、気を取り直してくれ」
俺が言うや否や、パッセルがまずバゲットに食いついた。
その様子を見てラタトスクも、恐る恐るベリーに手を伸ばして食べ始めた。もくもくと口を動かしていくうちに、ぱぁぁと表情が明るくなった。
『うまい!』
「ノルニアの森に生えてるベリーだからな。お前の口にも合ったようで良かったよ」
夢中になって食べているラタトスクの頭を、指先で一撫でする。
ベリーを啄み始めたパッセルの頭も、一撫で。
「パッセル、ラタトスクを連れてきてくれて感謝するよ。詳しい道案内が出来るヤツが味方になってくれて良かった」
『ちゅん!』
良かった、おやつと声かけでなんとかメンタルを持ち直したようだ。
パッセルは預かり妖精だからな。様子はよく見ていなきゃ。
「……で、クリストファー様は一体何をなさっているんですか」
いつぞやのように、親指と人差し指で枠を作り、その中から俺を観察している。
その頬は上気し、呼吸は荒ぶっている。
「小動物を慈しむディラン……、それもまたイイ!!」
「……だらしのない顔になっていますよ、クリストファー様」
ハァハァと息を乱しながら言われてもなぁ……。
……正直、今の俺のクリストファー様への感情だと、押し倒されたとしても前のようにすげなくあしらえる自信がないのだ。
今は、リアン救出に全神経を注ぎたい。色事にうつつを抜かしている暇なんて……。
俺はわざとらしい咳払いをした。こんな時でも俺にちょっかいを出す手を緩めないクリストファー様への牽制と、自分の気を引き締めるのを兼ねて、だ。
「……本人からの自己申告もありましたし、道案内をラタトスクに頼むのはいかがでしょう」
すると、あっさりとクリストファー様は指の枠を解いて、真面目に返してきた。
「そうだね。パッセルは方針変更して、イフリートたちへの伝令を頼んだ後、野生の小鳥に紛れて隠れててもらうことにしようか」
俺たちの会話を聞いていたのか、ちゅん、とスズメのさえずりが飛んできた。
これは同意の鳴き声だ。
ベリーとバケットの欠片を食べて満足したのか、顔を洗っているラタトスクも、おうと返事をしてくる。
そのとき、ふとクリストファー様がラタトスクに訊いた。
「そういや、リアンが〝持ってきた〟人間、ってどういうこと?」
『んあ?』
ラタトスクが顔を上げた。何でもないようなこと、まるで日常であったことを口にするように喋り始める。
『ああ、確かお前さんたちんトコに、ココのヨロイ着るタイプの人間が攻め込んでったんだよな?』
「……そうだよ」
『若君がキョーカイに転移するときに、その人間たち、ぜ~んぶ一緒に転移してきたんだよ。お前たちの縁者の人間が殺した奴、怪我させた奴、四大精霊様方が殺った奴、若君が見せしめに何人か殺した奴、無傷じゃあない奴、無傷で済んだ奴、全員まとめてな』
……え? まさか、リアンも何人か殺した、のか……?
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