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マリアと白薔薇2
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「何を?」
白薔薇は瞳に涙をいっぱい溜めてあたしを見た。
「恐ろしい事ですわ。リベルタ様が……私、もう耐えられませんの。マリア様もヴィンセント様にお気をつけあそばせ。あの方は……」
白薔薇の言いたいことは何一つ要領を得なかった。
何を見たのか。
何に耐えられないのか。
ヴィンセント皇子の何に気をつければいいのか。
「落ち着いてちょうだい。アミィ、何が仰りたいのかさっぱり分からないわ。あなたはリベルタ様の何を見たの?」
「リベルタ様は魔女ですわ」
と白薔薇が囁いた。
「何故、そう思うの?」
つられてあたしも小声になる。
「呟いてましたの……力が足りないと。私、図書室でおりました。ソファに深く腰を下ろした私をあの方、気がつかなかったのですわ。力が足りない、生け贄が必要だ、と呟いて図書室の中をぐるぐると歩いておりましたの。ああ、その時の私の恐ろしさを分かっていただけます? そのすぐ後にヴィセント様が入ってこられて、リベルタ様と何やらお話になられてましたわ。あの方達はきっとよくない事を考えてますわ。私、もう家に帰りたくてそれをローレンス様にお願いしましたけれど、駄目だと仰って……」
白薔薇の身体はぶるぶると震えていた。
細い華奢な肩に、小さい顔、今は青白いけど、本来ならピンク色の頬に形の良い唇。
誰もが憧れて、誰もが大事に守ってやりたいと思わせるような可憐な美しさだった。
「マリア様のお怪我もリベルタ様が何か……?」
「それは何とも言えませんわ。でも誰かに陥れられた事は確かなようですわ」
「やはり……恐ろしい事ですわ……私はもう帰りとうございます。マリア様もヴィンセント様とのご婚約はもう一度お考えになられたほうがよろしいですわ」
「でもあなた、そのヴィンセント皇子にローレンス様との婚約を考え直したいと相談なさったそうじゃありません? 」
「それは……ヴィンセント様とリベルタ様を図書室で見る前です。まさかお二人が……通じていらっしゃったなんて……」
「通じているなんて考えすぎじゃありませんこと?」
「マリア様、そのような暢気な! 魔女が力が足りないと言ってるんですのよ? 魔女の生け贄は乙女と決まっておりますわ。マリア様か私、どちらか……いいえ、二人とも狙われているかもしれませんわ……」
「そうね……そうかもしれませんわね」
「そうですわ!」
「でも私達に何が出来るでしょう?」
「そうですわね……マリア様……でもせめて自分達の身は自身で守らなければ……私、魔女から身を守る方法を図書室で調べたのですわ!」
と白薔薇が言って銀のナイフを出した。
「これは?」
「純銀ですわ。魔の物は銀を嫌います! もし襲われたらそのナイフで身を守ってくださいな」
「あなたは?」
「もちろん私も持っております。マリア様、どうかご無事でいてくださいね」
白薔薇がそう言った時にまたドアがノックされて、メイドが部屋の中を覗いた。
「ヴィンセント様がおいでになりました」
白薔薇ははっとしたような顔をした。
それからあたしの手からナイフを取り上げ、ベッドの毛布の中に入れた。
白薔薇は瞳に涙をいっぱい溜めてあたしを見た。
「恐ろしい事ですわ。リベルタ様が……私、もう耐えられませんの。マリア様もヴィンセント様にお気をつけあそばせ。あの方は……」
白薔薇の言いたいことは何一つ要領を得なかった。
何を見たのか。
何に耐えられないのか。
ヴィンセント皇子の何に気をつければいいのか。
「落ち着いてちょうだい。アミィ、何が仰りたいのかさっぱり分からないわ。あなたはリベルタ様の何を見たの?」
「リベルタ様は魔女ですわ」
と白薔薇が囁いた。
「何故、そう思うの?」
つられてあたしも小声になる。
「呟いてましたの……力が足りないと。私、図書室でおりました。ソファに深く腰を下ろした私をあの方、気がつかなかったのですわ。力が足りない、生け贄が必要だ、と呟いて図書室の中をぐるぐると歩いておりましたの。ああ、その時の私の恐ろしさを分かっていただけます? そのすぐ後にヴィセント様が入ってこられて、リベルタ様と何やらお話になられてましたわ。あの方達はきっとよくない事を考えてますわ。私、もう家に帰りたくてそれをローレンス様にお願いしましたけれど、駄目だと仰って……」
白薔薇の身体はぶるぶると震えていた。
細い華奢な肩に、小さい顔、今は青白いけど、本来ならピンク色の頬に形の良い唇。
誰もが憧れて、誰もが大事に守ってやりたいと思わせるような可憐な美しさだった。
「マリア様のお怪我もリベルタ様が何か……?」
「それは何とも言えませんわ。でも誰かに陥れられた事は確かなようですわ」
「やはり……恐ろしい事ですわ……私はもう帰りとうございます。マリア様もヴィンセント様とのご婚約はもう一度お考えになられたほうがよろしいですわ」
「でもあなた、そのヴィンセント皇子にローレンス様との婚約を考え直したいと相談なさったそうじゃありません? 」
「それは……ヴィンセント様とリベルタ様を図書室で見る前です。まさかお二人が……通じていらっしゃったなんて……」
「通じているなんて考えすぎじゃありませんこと?」
「マリア様、そのような暢気な! 魔女が力が足りないと言ってるんですのよ? 魔女の生け贄は乙女と決まっておりますわ。マリア様か私、どちらか……いいえ、二人とも狙われているかもしれませんわ……」
「そうね……そうかもしれませんわね」
「そうですわ!」
「でも私達に何が出来るでしょう?」
「そうですわね……マリア様……でもせめて自分達の身は自身で守らなければ……私、魔女から身を守る方法を図書室で調べたのですわ!」
と白薔薇が言って銀のナイフを出した。
「これは?」
「純銀ですわ。魔の物は銀を嫌います! もし襲われたらそのナイフで身を守ってくださいな」
「あなたは?」
「もちろん私も持っております。マリア様、どうかご無事でいてくださいね」
白薔薇がそう言った時にまたドアがノックされて、メイドが部屋の中を覗いた。
「ヴィンセント様がおいでになりました」
白薔薇ははっとしたような顔をした。
それからあたしの手からナイフを取り上げ、ベッドの毛布の中に入れた。
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