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第1章

噂のあの人

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 私がまだ高校生の頃、海辺に近い高岩高校(たかいわこうこう)に進学した。中学生の頃は同じクラスになった子達とは友達になったが、あまり深く仲良くならないようにしていた。中学生の間はみんなでいるよりかは1人でいる時間の方が好きだった。けれど、高校生になって環境が大きく変わった。そりゃそうだろうと思うかもしれないけれど、高校生になると様々な地域から、様々なキャラクター性を持った人達と出会うことになるから、価値観もだいぶ幅広くなったのだ。そこで出会ったのが私の唯一の親友、海口  まいか(かいぐち  まいか)だった。まいかとは1年生の頃から顔見知りではあったが、2年生になって同じクラスになり以前よりも仲が深まり一緒にふざけあったりして楽しく過ごしていた。そんな中のある日にまいかとお昼ご飯を食べている時にまいかがある話をしてきた。


「ねぇ、涼。涼って高嶋くんって知ってる?」
「?誰その人。1年の時に同じクラスになったことも無いよ」
「え!?高嶋くんを知らないの~?」
「そんなに有名な人なの?水泳部辺りだったら何人か知ってる男子はいるけど、その人誰なの?」
「あんなに噂になってるのに!?高嶋くんはうちの学年でめちゃくちゃイケメンだし、スポーツ万能なの!なのに、いつかは知らないけどめちゃくちゃ可愛い矢野  茜(やの あかね)ちゃんを振ったんだよ!?ヤバくない!?」


 まいかはおにぎりを片手に持ちながら私の方に前のめりになってまいかと茜ちゃんのツーショット写真をおもむろに見せながら力説してきた。
 いつも明るくて楽しいけど恋愛話になるといつも以上に1人で盛り上がって耳が痛くなる。


「、、まいか今日も暑苦しい、、。それがどうしたの」
「いや、どうしたのってあんな美男美女が付き合うかもしれないのに高嶋くんが振ったんだよ!?あんな可愛い茜ちゃんを!?」
「まぁ、茜ちゃんは可愛いけどその高嶋くん?も好きな子の好みとかあるに決まってるよ」


 茜ちゃんこと矢野 茜ちゃんは小柄で華奢でいつも目がくりくりしてて小動物のような可愛さがあって、男子が一度は好きになる子だと思う。あんなに可愛い子を振る高嶋くんには少し驚きはあるけど、知らない人だし「もったいないな~」としか思わなかった。
 まいかは少し落ち着いたのか椅子に座っておにぎりをまた食べ始めた。


「そうだけどさぁ、涼も可愛いのに誰とも付き合ってないからもしかしたら高嶋くんに狙われてるかもよ?」
「そんなわけないでしょ、私は高嶋くんの事なんか1ミリも知らないんだよ?」
「もしっていう可能性だよ、あたしは早くあんたの恋愛話を聞きたいの!前は涼の中学生の頃の恋愛話は聞いたけど、涼はずっと冷静に話してるだけだったからドキドキもトキメキもないのよ!」
「私に言われても仕方ないじゃない、相手は私の事好きだったかもしれないけど私は好きとかあまり分からないんだもの」


 まいかは少しため息を着いて、も~って言いながらブツブツ言って2個目のおにぎりを食べていた。

 その話が終わるとまたいつも通りに午後からの授業の教科書を取りに廊下に設置されているロッカーへ向かった。

 ちょうど教室を出ようとした時に、廊下で2人の男子が追いかけっこをしている時に出くわしてしまった。1人はなにかしてしまったのだろう、もう1人の男子に追いかけられていた。喧嘩とかそういう雰囲気ではなくわちゃわちゃとしている感じだった。私はびっくりして逃げている男の子とぶつかりそうになったのだ。確か片方の男子が「あぶないっ!?」って言っていた。


「、、、あっぶねぇ、ごめん大丈夫?」
「え、あ、うん。大丈夫。ごめんね」

 
 その時は驚きすぎて顔を見れなくて、そのままそそくさと教科書を取りに行こうとした。だけどそのぶつかりそうになった男子に腕を掴まれた。私はまた驚いて「え、なにっ!」って思いながら男子の方を見た。その男子は180cm近くある身長で驚きから変わって、少し圧があって怖かった。

「ごめん腕掴んじゃって、ほんとに怪我とかしてない?大丈夫?」
「あ、うん。、、ほんとに大丈夫だから(なんか怖いよぉ、、)」
「そう?ほんとにごめんね!」

 
 その男子は顔の前で両手を合わせて謝罪してきた。私はどうすればいいか分からなくておどおどしていると片方の男子が話しかけてきた。その男子も1人目と同じくらいの身長だった。2人の大男がいるから圧がすごい。

「ごめんな、ほんとに大丈夫?、、って、永井さんじゃん!?」

 
 後から来た男子は私のことを知っているそうで、その男子の方を見ると去年一緒のクラスだった中村 治(なかむら はる)くんだった。


「ほんっとこいつがごめんな!永井さん大丈夫?」

 
 そう言って中村くんは最初に話してた男子を後ろから肩を組んだから、ぶつかりそうになった男子はぐぇってなった。


「俺のせいじゃなくて、治が追いかけて来たからだろ」
「元はと言えばお前が今持ってる俺の右足の上靴を持って逃げたからだろ」
「俺は今お前の片方の上靴なんか持ってませんー」
「じゃあ、その上靴は何ですかー?誰のですかー?」
「治が見えてるのは幻ですー」

 
 2人は私を置いてわちゃわちゃし始めて1人置いてけぼりになった。見てることしか出来ず、どうしようと悩んでいるとまいかが来てくれた。


「ちょっと涼ー、遅くなぁーい?って、、えぇっ!」
「、、まいか、、助けて」

 
 まいかの驚いた声で言い合いしていた2人はまいかの方に目を向けた。


「あれ、まいまいじゃん」
「あ、治もいたんだ」
「え、俺おまけなのなんなん」

 
 どうやらまいかと中村くんは知り合いらしく、まいかのおかげでおいてけぼりにならずに済んだ。続けてまいかは2人と話し続けた。


「治、お前知り合い多いのな」
「いや、まいまいは去年一緒のクラスで友達になったんだよ。」
「そうそう。そんで?なんで高嶋くんと治がここにいるの?」
「まいまい聞いてほしいんだよ!颯汰が俺の上靴の片方を持って逃げやがったんだよ!」
「それは治が先に俺の事からかってきたからだろ」

 
 また2人の言い合いが始まりそうになったからまいかが仲介に入ってなだめていた。
 これをきっかけに私はぶつかりそうになった人が`高嶋くん´で`高嶋 颯汰(たかしま そうた)´という名前を知った。私は知らなかったけど、高嶋くんは噂になるに相応しいくらい顔は整っているという印象を持った。目鼻立ちも凛々しく、いつファッションモデルにおかしくないくらいのオーラもあるし、多分街中で歩いていたら誰かは必ず振り向いてしまうくらい忘れられなくなると思う。私はそんな印象を持っただけだったから特別一目惚れのような感情にはならなかった。

 それから高嶋くんと顔見知りになって、よっ友になった。特に話すこともなく私、まいか、中村くん、高嶋くんの4人になった時に話すことが増えた。だんだん中村くんと高嶋くんと関わりが増えて親しくなり、中村くんを`治´、高嶋くんを`颯汰´と呼ぶことになった。そこで私はいつから2人は仲良くなったのかと聞くと治と颯汰が仲良くなったのは中学生時代かららしく、今でも噂になる颯汰は中学生の時も学校1のモテ男と言われていたらしい。その噂で颯汰のことを聞いてほんとに噂になるくらいイケメンなのかを気になり治が他クラスだった颯汰を見に行くと、とてつもないイケメンで噂通りで面白いと感じ、すぐ颯汰に話しかけて仲良くなったらしい。逆に颯汰側からすると急に他クラスで知らない奴が話しかけてきて最初は驚きはしたが裏表がなく素直に話しかけてくれたことが新鮮ですぐに打ち解けて仲良くなれたらしい。私はそれを聞いて治の行動力のすごさに感心した。2人は中学生時代からの友達同士だから2人の話の掛け合いがいつも見ていて楽しかった。時には4人で颯汰の家でテストに向けて勉強会をしたり、颯汰と治がバスケ部でもあったため、まいかと私が2人の試合に応援しに行ったりした。












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