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うちの隊長は捨てられました

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 届けられた荷物はアレクの家から派遣されているメイドによって受け取られていた。
 いきなり届けられた荷物に戸惑いつつも、中身は見える様にしてあり、それらはメイドにも見覚えのある物だった為に受け取ったはいいけど、今度はそれをどうすればいいのか判らず途方に暮れている間にホルガーとアレクがやってきたのだ。
 荷物に関しては自分達で片づけるからと言ってメイドにお茶を用意させて帰らせた頃戻ってきたラグナーの姿があった。
 表情どころか顔色もないあまりに痛々しい姿にアレクはすぐにラグナーをベットに放り込むのだが、布団からもそもそと顔を出したラグナーは

「悪いがこの部屋に本を並べてほしい……」

 そう言ってまたもそもそと布団の中に潜り込むも、本はどうするかと聞きに来たホルガーはマイヤに手伝わせながら寝室に本を運ぶのだった。
 ちなみにユハはヴォーグといちゃこらしただろう寝室にはいきたくないと言って一人紅茶を用意してもらった部屋で膝を抱えて泣いていたのだった。

「ああ、もう……
 こんな事になるのならトゥロ達とヴォーグ探しに行くんだったわ」

 マイヤが捨てられた男二人のあまりに情けない姿に溜息を吐く物の

「予告どころか前振りさえなかったから仕方がないだろう。
 とは言え、ヴォーグがいくらわけありな奴だとして覚悟はしてたがこんな風に行動に出るとはさすがに想像もしなかったがな……」

 溜息しか出ないホルガーは総ての本を運び終えた所でベットで小さな山を作っているラグナーをポンポンとあやすように叩いて

「悪いが俺らもそろそろあいつを探しに行く。
 何かあったら連絡入れるから、せめて食事だけはちゃんとしろよ」

 そう言葉を残してアレクに案内される形で途中未だめそめそと泣いてるユハを拾うように担いで家を辞そうとすればタイミングが良いのか悪いのかそこに一人の男が立っていた。

「貴方は宮廷騎士団の……」
「ラグナー・シーヴォラ隊長は戻っているか?」

 厳しい顔をして言いながらもずかずかと勝手に家の中に入る後姿にホルガーは慌ててその手を掴んで止め

「ラグナーは体調が悪くて休んでいる」

 だから帰ってくれと言うも「寝室か」と呟きその手を振りほどいて駆け足で二階へと上がり、貴族の家の造りは似ているのか迷うことなくラグナーの寝室を見つけ出してカーテンで閉め切った薄暗い部屋へと入るのだった。
 さすがにこの異常な状態にユハもホルガーから降ろしてもらい、躊躇いがちにも寝室へと足を運べば飛び起きたという状態のラグナーと、先日何やらヴォーグとトラブルを起こした宮廷騎士団ヒューバート・ブルフォードが驚きのまま沈黙を保っていた。

「ラグナー……」

 思わずと言う様に声を掛ければ

「ヴォーグは騎士団も辞めたのか……」
「クソッ……
 既に逃げた後か……」

 二人の言葉に唖然としながらも一人の足音がこの部屋に飛び込んできて

「ラグナー!
 お前何やったんだよ!
 ヴォーグの代理人が離縁届提出しやがって受理されちまってるぞ?!」
「ラビ?!」

 勢い止まらぬというようにベットに飛び込んできて受け止めそこなったラグナーと一緒に転がり落ちるという動揺ぶりにブルフォードもアレクも誰もが息をのむなか、それでもラビは何とか立ち上がりながらやっと周囲の様子に気づき

「な、なんだよ。
 この顔ぶれ一体何があったんだよ……」

 それこそ俺達の方が聞きたいと誰もの顔にありありと書いてあった。




「つまり、あいつは騎士団を辞めて事前に作ってた離縁届を提出して家を売り払って姿をくらましたという事か……」

 さすがのこの出来事の連続に全員隣の書斎に移動した物の、あまりの見事な逃げっぷりにこれは既に予想を立てて準備された手順である事は納得できた。

「あいつ、俺が居ない時間を狙って、しかも代理人を立てて提出したからヴォーグを知る顔は気づかないし、たまたまお前との結婚に反対だった奴が受け付けていてよ……
 順番をすっ飛ばしてすぐ処理をして王家側の許可にもお前らの結婚反対だった奴が勝手に処理してよ……」
「それ、すごくまずいんじゃないか?」

 ラビの説明にアレクもブルフォードも耳を疑うように聞けば

「ああ、今すごい騒ぎになってる。
 勝手に王印を使って処理したんだ。
 俺が職場で確認してすぐに気付いた時点で連絡した時には既に処理済み。
 反逆罪として騎士団長が動いてうちの所もあの時間に居た奴ら全員しょっ引かれて行ったしな」
「騎士団長が……」
「ああ、騎士団長自ら動いた事に驚いて様子を見に行った時に顔を合わせた折にヴォーグの辞表が少し前に届いていた事を教えられて見に行けと言われてきたんだが……」
「因みにギルドは半年間無断でギルドで依頼を受けてないと自動に除名だ。
 放って置けばわざわざ除名する挨拶も要らないんだが……」

 机の上に一枚のカードを置いた。

「ヴォーグのギルド発行の身分証明書だ。
 これでこの国での身分は無くなってヴォーグ・ミューラと言う人物はいなくなったわけだ」

 まるで遺品のように机に置かれたカードを見てヴォーグが居た証はどこにもなくなってしまい、誰もが口を開けないまま時間だけが過ぎて行った。
 そして良くない事が重なる時はとことん重なる。

 遠くから扉を叩く音が聞こえた。
 アレクが窓からひょいと顔を出せば

「レドフォードか?」

 体を乗り出して声を掛ければ

「隊長は見えますか?!」
 
 室内にも聞こえるような大きな声に

「今立て込んでるから上まで上がってこい」
「了解しました!」

 とてもじゃないが玄関まで行って対応が出来ないと呼び寄せればラビ同様階段を一気に駆け上がる足音に誰もが冷や汗を流しながら今度は何だというように視線をドアへと向ければ

「失礼します!」

 そう言ってドアを開けたレドフォードはラビのようにそのまま飛び込んでくる事無く黙ってドアを閉めたのだった。












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