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うちの隊長は貴族感覚になんて一生慣れる事はないと言う事だけは判りました

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 あれから王宮の屋敷でラグナーと軽食を食べていた。
 陛下に会う直前までホルガー達と話をしたり髪の毛をセットしてもらったりでほぼ何も食べていないから仕方がない。
 当然騎士団でラグナーと別れた後王都不在時の情報をワイズから受け取って早急の仕事をさせられながら王都の状況の説明を受けていたので食べる暇もなかった。
 いや、軽食は用意されていたが食欲が失せたと言うのが正解だ。
 弟が学園でしでかした数々の事、婚約者の王女を蔑にして平民の女の子とよろしくしている事。
 父も仕事で頭を抱えたくなるような不始末をしてくれて窓際に飛ばされた事。
 いっそ左遷でもしてくれればいいのにと思うも俺の名前を使って王都にかじりついたらしい。
 母は現在進行形で旅行先で詐欺にあっているらしい。
 何でも若い男に金をむしり取られているとか……
 俺と同じぐらいの男にちやほやされて……
 久しぶりに姿を見たけど隣に居たのは父ではなく……

「なんというか……
 息子と同じ年の男にのぼせる親って……」
「旦那様、気を確かにお持ちください」

 最後まで言わせてくれなかったワイズに感謝しながらも一番の痛手は弟の問題。
 学費、生活費と賄う為の商会を潰してしまったのだ。
 おばあ様から譲り受けたこの国内では留まらないくらいに人気のある上級貴族が誰もが所持するぐらいの有名陶磁器メーカーを財源にするようにと製造販売を手掛けていた。
 陶工もそれに携わる販売員も放っておいてもプライドを持ってきちりと運営するはずなのに、俺もカップの口当たりの良さにこの屋敷の食器を買い替えたぐらいだが

「で、今はどうなってる?」
「一応ルード様名義で別の商会を立ち上げて私が代理で買い取りましたが、いかがいたしましょう?」

 さすがと思うも

「陶工達は?販売員は?」
「一応そのまま雇っておりますが、まだこちらの事が不明瞭な事もあり疑心暗鬼な状況ですね」
「判った。近いうちに正式に俺が会いに行くが、そもそも何でこんな事に?」

 差し出された書類を見ても経営状態は悪くはないと思ったが、ある一点、春ぐらいから半年も持たないくらいに急激に売り上げを落していた。
 もう急激何て生易しい物ではない。
 不買活動が起きたのではないかと言うくらいの営業不振だった。

「その、イザムバード様のご友人のリクエストのお品があまりに不評で……」
「まて、陶工達を無視して友人の意見を優先したのか?」
「女性の視点からの方が良いに決まっているとの一点張りで……」
「何を作ったらそんな事になる……」

 頭を抱えればワイズが空間からいくつかのカップやソーサー、花瓶などを机の上に並べてくれた。
 それはどれもこれも

「なんという視覚の暴力だ?」

 今まで黙ってやり取りも見守っていた俺でさえ口を挟まずにはいられない美的感覚にヴォーグもワイズも思わずと言う様に頷いていた。
 原色と原色が織り成す闘いは見る者すべてを不快にさせる色合いだ。

「艶やかで華やかな花の共演と言う暴力だそうで」
「この赤とピンクとオレンジ時々混ざる緑が葉っぱか?
 確かにそのような花もあるが、それを平面で見せられるとは斬新を通り越した不快だな」
「はい、今年の春の新作以降すべてこちらのシリーズに切り替わりましたので」
「新人陶芸家がノミ市に出す品じゃないんだぞ?
 ちなみに値段は?」
「こちらのカップで金貨5枚ほど」

 銀貨一枚がこの国での食堂などで食べる一食分の目安の価値を考えればヴォーグは思わずと言う様にそのカップを窓から外に投げつけようとするのを

「気持ちはわかるが落ち着け!」

 ヴォーグが本気で投げれば正面の城の壁に穴位は開けてしまうだろう。
 何やら先程から喜びに満ちた声が響いている所を見ると後継者問題を発表したのだろう。
 そんな城に向かってたかだかカップ一個で水を差すわけにはいかないく 

「本当に投げつけたい相手と言う的を絞れ」
「ああ、ラグナーごめん。 
 思わず理性が切れてしまったよ……」

 いくらなんでも切れるわなと珍しい姿に驚きとそして同情にワイズですら致し方ありませんと頷いていた。
 俺はそのまま精神の安定と言う様にヴォーグの膝の上に乗せられて抱きかかえられてしまうもワイズも何も言わずに話を続けていた。
 とりあえず背後でスーハ―スーハと俺の匂いを嗅ぎながら深呼吸するヴォーグからこの視覚の暴力の話をそらすように話しを突き詰めて行こうと言う様に誘導をしなくてはとラグナーは無理やり話に割り込んで

「だけど収入が入らないだけで潰れるほど柔な地盤じゃないだろ?」
「その、ご友人改めて彼女様の生まれの村に産業をと言って陶芸用の土の調査をしたり領主に融通をしたりなどありまして……」
「開発費用か?」

 すっかり話はもう聞きたくないと言う状態のヴォーグは俺の背中に額や頬をこすり付ける様にすりすりとしているのを好きにさせながら俺とワイズで話しを進める。

「陶器に向く土壌ではない揚句に開発用にと山を幾つか先に買い取ってしまいました」
「ふ、太っ腹だな……」
「さらに調査の結果を待たず見込みでその土の運搬用に道路整備をしたり、短期工事を目指して整備する者を大量に雇ったりと……」
「人件費程ぼろもうけな費用はないな。
 騎士団の要求すれば一般の半額まではいかないのだが……で?」
「その結果いくつかの美術商を手放す事になりました」
「ワイズ、それはもちろん……」
「美術商の方から連絡を頂いて先ほど立ち上げたと言った商会の方で買い取りました。
 バックストロム国の歴史と言うべき国宝をやすやす手放すわけにはまいりません」
「ヴェナブルズの横の連携が上手くいっていて金銭的な流出よりも財産を守れてよかったじゃないかと言うべきか」

 既に俺には想像もつかない金額なだけにヴェナブルズの金庫は大丈夫かと思うも

「とりあえず俺の個人資産で補填する。
 俺の商会の奴らに負わせるものではない。
 区別して取り計らう様に」
「承りました」

 言いながらヴォーグは冒険者時代に作った貯金だろうかそれをポンとワイズに渡す。
 無防備だなと思うもそれだけの信頼が彼らにはあるのだろう。
 そしてチラリと見えた未知の金額に

「これで足りるか?」
「十分でございます」

 足りなかったらまだあるぞ?いえいえ、イザム様が資産価値を落としてくれたのでこれで十分ですと通帳を眺めながらの会話に俺は耳を疑った。
 改めて冒険者時代何をやっていたのかもう一度問いたださなくてはと思った俺の心の中が原色の視覚攻撃を越えた本日一番の修羅場だった。











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