【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝

文字の大きさ
17 / 25

第十七話(クラリス視点)

しおりを挟む

「クラリス、最近のお前はどうしたというのだ? 結界を雑に張って回っているというではないか。先週張った結界がもう壊れていると苦情が来たぞ」

 ジークフリート・マーティラス伯爵――つまり、私のお父様は厳しい顔つきで説教をしてくる。
 私が必死になって張って回っている結界がどういう訳か魔物に破壊され続けているからだ。

 メリッサの馬鹿のせいで毎日仕事に行かされているのに、結界だってちゃんと張ってるのに……それなのに魔物が入ってくるのは明らかに異常事態。
 魔周期によって想定以上に魔物が増えているのだ。だから、私が悪いんじゃない。時期が悪いんだ。

 私はお父様にそう訴えた。サボりはしたけど、最近はちゃんと仕事をしていると。
 それどころか以前よりも仕事に打ち込んでいるって。

 
 それなのに――。



「嘘を言うでない! 半月以上前の結界がきれいに残ってたりするのだぞ。結界が破壊された場所よりも遥かに危険な地区で……! お前が何を不貞腐れているか知らんが手を抜くのが悪いに決まっておる!」

 私は手抜きをしていると決めつけられている。

 原因はエミリアの結界だ……。

 あいつの結界がアホみたいに頑丈に出来ていて年月が経っても壊れないせいで、それよりも新しい私の結界が脆くみえるのだ。

 だから、いくら本気で結界を張っても前の方が丈夫だという事実を突きつけられて……手抜きの疑いを晴らすことが出来ない……。

 私は高貴な血筋であるマーティラス家の聖女であり、この国で最も尊敬を集めるべき存在なのに……最近じゃ疫病神扱いされることも少なくない。

 これも全部エミリアのせいだ。あいつが硬い結界なんて張るから……。メリッサはあいつが生きているとか抜かしてたけど、それを想像するだけでムカムカする。殺してやりたいくらい……。

 気晴らしに、ネルシュタイン家の連中を潰してやろうかしら……。

 いや、今そんなことをしたらお父様を余計に怒らせるだけね……。メリッサも監視しているし、あいつはあいつで変な証拠を握ってるってチクチク嫌がらせしてくるし……。


「マーティラス家が何故にこれ程までに繁栄し、国王陛下から絶大な信頼を得ているのか忘れてはいまいな?」

「もちろんですわ。お父様……。聖女が国防の要を担っていたからです」

「お前は何だ?」

「聖女です」

「そうだ。聖女が使命を果たせぬとなると、我が家の没落は必至。私もお前も……路頭に迷うことになるだろう。ならば、お前のすることは分かるな?」

「聖女として国の治安を回復させること……」

「うむ。分かってるなら、よろしい……」

 私の評価が下がると、マーティラス家の名誉も危ういとお父様が脅してくる。
 陛下も私に不信感を持っているし、メリッサが何を言い出すか分からない。

 ――エミリアにもう一度結界を張らせる? あいつの家族を人質にして……。

 でも、あいつは追放されてるから呼び戻すことは出来ないし……。


「エミリアさんに、土下座する気になりましたか?」

「め、メリッサ! あ、あんたいつの間に!?」

「掃除しながら、立ち聞きしていただけです。悪しからず」

 この女……私が追い詰められているのを知ってほくそ笑んでいるのね。最低な女よ。本当に……。

 エミリアに土下座はしないけど、あいつを見つけて連れてくることくらいはしなきゃいけないわ。

 そうよ。いつだって私が上であの子が下なんだから……頭を下げるなんてあり得ないんだから――。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

日向はび
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。  リバコーン公爵家の長女ソフィアは、全貴族令嬢10人の1人の聖獣持ちに選ばれたが、その聖獣がこれまで誰も持ったことのない小さく弱々しいトカゲでしかなかった。それに比べて側室から生まれた妹は有名な聖獣スフィンクスが従魔となった。他にもグリフォンやペガサス、ワイバーンなどの実力も名声もある従魔を従える聖女がいた。リバコーン公爵家の名誉を重んじる父親は、ソフィアを正室の領地に追いやり第13王子との婚約も辞退しようとしたのだが……  王立聖女学園、そこは爵位を無視した弱肉強食の競争社会。だがどれだけ努力しようとも神の気紛れで全てが決められてしまう。まず従魔が得られるかどうかで貴族令嬢に残れるかどうかが決まってしまう。

罰として醜い辺境伯との婚約を命じられましたが、むしろ望むところです! ~私が聖女と同じ力があるからと復縁を迫っても、もう遅い~

上下左右
恋愛
「貴様のような疫病神との婚約は破棄させてもらう!」  触れた魔道具を壊す体質のせいで、三度の婚約破棄を経験した公爵令嬢エリス。家族からも見限られ、罰として鬼将軍クラウス辺境伯への嫁入りを命じられてしまう。  しかしエリスは周囲の評価など意にも介さない。 「顔なんて目と鼻と口がついていれば十分」だと縁談を受け入れる。  だが実際に嫁いでみると、鬼将軍の顔は認識阻害の魔術によって醜くなっていただけで、魔術無力化の特性を持つエリスは、彼が本当は美しい青年だと見抜いていた。  一方、エリスの特異な体質に、元婚約者の伯爵が気づく。それは伝説の聖女と同じ力で、領地の繁栄を約束するものだった。  伯爵は自分から婚約を破棄したにも関わらず、その決定を覆すために復縁するための画策を始めるのだが・・・後悔してももう遅いと、ざまぁな展開に発展していくのだった  本作は不遇だった令嬢が、最恐将軍に溺愛されて、幸せになるまでのハッピーエンドの物語である ※※小説家になろうでも連載中※※

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。

「醜い」と婚約破棄された銀鱗の令嬢、氷の悪竜辺境伯に嫁いだら、呪いを癒やす聖女として溺愛されました

黒崎隼人
恋愛
「醜い銀の鱗を持つ呪われた女など、王妃にはふさわしくない!」 衆人環視の夜会で、婚約者の王太子にそう罵られ、アナベルは捨てられた。 実家である公爵家からも疎まれ、孤独に生きてきた彼女に下されたのは、「氷の悪竜」と恐れられる辺境伯・レオニールのもとへ嫁げという非情な王命だった。 彼の体に触れた者は黒い呪いに蝕まれ、死に至るという。それは事実上の死刑宣告。 全てを諦め、死に場所を求めて辺境の地へと赴いたアナベルだったが、そこで待っていたのは冷徹な魔王――ではなく、不器用で誠実な、ひとりの青年だった。 さらに、アナベルが忌み嫌っていた「銀の鱗」には、レオニールの呪いを癒やす聖なる力が秘められていて……?

のんびり新妻は旦那様に好かれたいようです

nionea
恋愛
 のんびりした性格で家族からも疎まれているミスティは、やけに忙しいエットと結婚した。  お見合いからずっとすれ違っているような二人の新婚生活は、当然まともにはいかない。  心強い付き人のエリィネと共にやってきた新しい家。  優しく迎えてくれた侍女頭のドナや使用人女性達。  だけど、旦那様だけは、何だか様子がおかしいようで…  恋心は後からやってきた系夫婦の問題解決まで。  ※異世界ファンタジー、だけど、魔法はない

【完結】捨てられた聖女は王子の愛鳥を無自覚な聖なる力で助けました〜ごはんを貰ったら聖なる力が覚醒。私を捨てた方は聖女の仕組みを知らないようで

よどら文鳥
恋愛
 ルリナは物心からついたころから公爵邸の庭、主にゴミ捨て場で生活させられていた。  ルリナを産んだと同時に公爵夫人は息絶えてしまったため、公爵は別の女と再婚した。  再婚相手との間に産まれたシャインを公爵令嬢の長女にしたかったがため、公爵はルリナのことが邪魔で追放させたかったのだ。  そのために姑息な手段を使ってルリナをハメていた。  だが、ルリナには聖女としての力が眠っている可能性があった。  その可能性のためにかろうじて生かしていたが、十四歳になっても聖女の力を確認できず。  ついに公爵家から追放させる最終段階に入った。  それは交流会でルリナが大恥をかいて貴族界からもルリナは貴族として人としてダメ人間だと思わせること。  公爵の思惑通りに進んだかのように見えたが、ルリナは交流会の途中で庭にある森の中へ逃げてから自体が変わる。  気絶していた白文鳥を発見。  ルリナが白文鳥を心配していたところにニルワーム第三王子がやってきて……。

【完結】アラフォー聖女、辺境で愛されます。~用済みと追放されましたが私はここで充実しています~

猫燕
恋愛
聖女エレナは、20年間教会で酷使された末、若い新聖女に取って代わられ冷淡に追放される。「私の人生、何だったの?」と疲れ果てた彼女が流れ着いたのは、魔物の呪いに苦しむ辺境の村。咄嗟に使った治癒魔法で村人を救うと、村の若者たちに「聖女様!」とチヤホヤされる。エレナの力はまだ輝いていた――。追放されたアラフォー聖女が、新たな居場所で自信と愛を取り戻す、癒やしと逆転の物語。

処理中です...