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第1話
しおりを挟む「アイーダ、ちょっと話があるんだけど」
カリス家存続350周年を記念した式典。その最中、現当主で私の婚約者でもあるライル=カリス様は、こそこそと私を会場の外へ呼び出しました。
「何でしょう」
そう言いながら、私は心のどこかで、これから云われるであろう話の内容を判っていたような気がします。
ここ最近の彼の態度や、彼の周りにまとわりつくあの女の影。そして、今彼の表情が訴えかけている、少しの憂いと多くのわずらわしさ。
それらが、次の一言を、これでもかというくらい私に想像させます。
「君との婚約を、破棄したいんだ。君の妹、メイと私が添い遂げるために」
ああ。
やはり、そういうことでしたか。
判っています。
メイに、妹に、悪意なんてこれっぽっちもない。むしろ悪意があったなら、心おきなく彼女を糾弾できる分、少しはましだったでしょう。
ただ、彼女のやることは、求めるものは、必ず他の誰かの路の邪魔をする。特に彼女の姉として生まれてきた、私の路の。
これまで、私はずっと辛抱してきました。この世でたった一人の妹なのですから、大切にしなくては、と。
けれど、今回のこれは、あまりにもひどい。
「......わかりました。私たちはこれから、赤の他人。そういうことでいいですか?」
「済まない。しばらくは大変だと思うが、耐えて欲しい。メイのためを思って」
ライル様。
悪いのは、あなたです。
裕福で権力をほしいままにするあなたを求めるメイの気持ちは、確かにひどい我儘ではありますが、人としては自然なこと。
あなたが、自分の欲望に負け、自制を振り切ってメイの気持ちに応えてしまったこと。それが、問題なのです。
私はもう疲れました。
せいぜい妹と、幸せになれるよう努力してください。
きっとそのうちに、この決断が間違いだと気づくでしょうが——。
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