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第一章 レイン=カラーの怠惰な一日

第九話 ほらあん

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 木陰で目を閉じていると誰かが近付いてくる足音。そしてそばにかがむ気配。

「さっきのケンカって、リーグ君のこと?」

 降ってきた声はトパの声だった。

「…………」
「返事してくれないなら、みんなにパンツ覗かれたって言いふらしちゃうぞー」
「いまジャージ履いてんだろうが」
「あ、バレた?」
「アホか」

 そもそもさっきから普通に履いてただろうが。

「で、リーグ君のことだったんでしょ?」
「さあな」
「あの二人を殴り合わせたのも、レインでしょ?」
「知らねえな」
「痛いのは嫌だもんねえ。素直に殴られたくないもんねえ」
「誰だってそうだろ」
「あの状況なら、殴られたほうが被害者面出来ただろうけどねえ」
「……おまえ、結構性格悪いよな。腹黒か」
「違うよー、酷いなー」
「白々しい」

 あはは、とトパが笑う。
 トパの友達だろう、グラウンドの向こうからトパを呼ぶ声が聞こえてくる。

「呼ばれてるぞ。あっちに行け」
「えー」
「いいからさっさと行け」
「ちぇー」

 タタタとトパが声のほうへと駆けていく音。彼女を心配するような友達の声。

「大丈夫だったトパ?」
「なにかされなかった?」
「なんであんな奴に話しかけてんの?」
「えー? レインはいい奴だよー」
「「「…………」」」

 顔を見合わせる友達の気配。それからトパへと。

「「「悪いこと言わないから、あいつだけはやめときな」」」
「えー?」

 声を合わせるな、声を。


 その後、三限目と四限目、昼休みを挟んで五限目と六限目……と、特に何事もなく一日は過ぎていった。
 怪我をしたラルドも三限目の半ばくらいには回復して、追加のちょっかいをかけられることもなく授業を受けていた。

「レインにお仕置きされて懲りたんじゃないのー」
「…………」

 昼休みの時にトパがそう言ってきたが、無視してパンを口に運んでいく。

「っていうか昼食がパン二個って少なくない? あたしの卵焼きあげるよ、ほらあーん」
「するかボケ」
「あー、ボケって言ったなー」
「さっきからうるせえ」
「ひどーい」

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