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9.帝国とバファル国
この国に母のレベッカ皇女が嫁いできたのは特殊な事情があった。
帝国とは比べ物にならない小国。
潰しても構わないものであったが、
バファル国を境に反対側には敵国のタイカン国が存在した。
先の皇帝はタイカン国から攻められることを考え、
バファル国に帝国の軍事拠点を置くことにした。
それでも、バファル国を帝国に組み込むのは帝国貴族からの反対が多かった。
それほど身分差がひどかったからだ。
小国の貴族をそのまま帝国の貴族にするのは嫌だったのだろう。
そこで皇帝が考えたのは末娘の王女を嫁がせて属国化することだった。
産まれつき足が不自由だったレベッカ皇女は旅がしたい、
異国に行ってみたいという気持ちが強く、
見たことも聞いたこともない小国のバファル国へ嫁ぐことを承諾する。
この時、バファル国では王太子が暴れていた。
もうすでに恋人と結婚寸前で別れるつもりがなく、
レベッカ皇女を正妃にすることを嫌がったのだ。
バファル国に着いたレベッカ皇女は嫌がる王太子に驚いたが、
王太子の容姿にも才能にも言動にも惚れる要素が一つも無かったため、
代案として示された公爵家の嫡男と結婚することを選んだ。
予定外の行動に皇帝は難を示したが、
結局は娘の「王太子とだけは嫌です。」の一言で公爵家に嫁ぐことを認める。
ただし、属国にするのが目的の婚姻だ。
レベッカ皇女の身分は皇女のままとされ、
公爵家夫人でありながらレベッカ皇女がバファル国で一番の身分となった。
この婚姻とレベッカ皇女の存在のおかげか、
危機感を感じたタイカン国は帝国に同盟を申し込んでくる。
帝国に有利な条件での同盟はすぐさま結ばれることになった。
レベッカ皇女は陛下になった王太子ではなく、結婚相手の公爵でもなく、
カインの父親の宰相と手を組んでバファル国の王政を担った。
もともと小国なうえに腐った王族しかいないバファル国は、
レベッカ皇女と宰相でなんとか国として保っていた。
それが5年前レベッカ皇女の死で少しずつ崩壊を始める。
レベッカ皇女が亡くなったことで、
バファル国は王族を廃し、帝国に組み込まれることになった。
それを必死で止めたのは宰相で、ミルティアとフォレッド王子を婚約させ、
将来的にはミルティアを女王とする契約を結ぶことでバファル国の存続を願い出た。
ミルティアは想い合っていたカインとの婚約解消に嫌がったが、
カインのいる国を守るためだと説得され、泣く泣く承諾することにした。
確かにミルティアが帝国に帰ってしまえば、
バファル国は王族以外の貴族もすべて廃されてしまうだろう。
小国の貴族にすぎないカインを帝国に連れて行くのも難しい話だった。
契約を承諾した帝国も、少なくともミルティアが女王になるのだから、
立場もあり大事にされていると考えていた。
しかし、皇女亡き後ただ一人で王政を担っていた宰相が過労で急死したことで、
愚かな王族に歯止めをかけるものがいなくなった。
それにあわせるように公爵もつけあがり、愛人だった女と再婚し、
レミアを公爵家の養女にしたのだ。
最初から何も知らされていないフォレッド王子とレミアが暴走し始めるのには、
そう時間はかからなかった。
そしてあの夜会の事件が起きたのだが…
「まぁ、それもそうか。騎士団長を置いていくから、そのうち綺麗になるだろう。
それで、どうする?ミルティア、この国の女王になるか?」
「嫌です。こんな国いりません。お義兄様と一緒に帝国に帰ります。
しばらくは皇女でいなければいけないでしょうけど、
将来的には伯父様の跡を継ごうかと思ってます。」
「ああ、ナジェール公爵家か。そういえば後継ぎいなかったな。
わかった。じゃあ、もう少し騎士団長に指示したら一緒に帰るか。」
「はい。」
「お義姉様!では私も一緒に連れて帰ってください!」
帝国とは比べ物にならない小国。
潰しても構わないものであったが、
バファル国を境に反対側には敵国のタイカン国が存在した。
先の皇帝はタイカン国から攻められることを考え、
バファル国に帝国の軍事拠点を置くことにした。
それでも、バファル国を帝国に組み込むのは帝国貴族からの反対が多かった。
それほど身分差がひどかったからだ。
小国の貴族をそのまま帝国の貴族にするのは嫌だったのだろう。
そこで皇帝が考えたのは末娘の王女を嫁がせて属国化することだった。
産まれつき足が不自由だったレベッカ皇女は旅がしたい、
異国に行ってみたいという気持ちが強く、
見たことも聞いたこともない小国のバファル国へ嫁ぐことを承諾する。
この時、バファル国では王太子が暴れていた。
もうすでに恋人と結婚寸前で別れるつもりがなく、
レベッカ皇女を正妃にすることを嫌がったのだ。
バファル国に着いたレベッカ皇女は嫌がる王太子に驚いたが、
王太子の容姿にも才能にも言動にも惚れる要素が一つも無かったため、
代案として示された公爵家の嫡男と結婚することを選んだ。
予定外の行動に皇帝は難を示したが、
結局は娘の「王太子とだけは嫌です。」の一言で公爵家に嫁ぐことを認める。
ただし、属国にするのが目的の婚姻だ。
レベッカ皇女の身分は皇女のままとされ、
公爵家夫人でありながらレベッカ皇女がバファル国で一番の身分となった。
この婚姻とレベッカ皇女の存在のおかげか、
危機感を感じたタイカン国は帝国に同盟を申し込んでくる。
帝国に有利な条件での同盟はすぐさま結ばれることになった。
レベッカ皇女は陛下になった王太子ではなく、結婚相手の公爵でもなく、
カインの父親の宰相と手を組んでバファル国の王政を担った。
もともと小国なうえに腐った王族しかいないバファル国は、
レベッカ皇女と宰相でなんとか国として保っていた。
それが5年前レベッカ皇女の死で少しずつ崩壊を始める。
レベッカ皇女が亡くなったことで、
バファル国は王族を廃し、帝国に組み込まれることになった。
それを必死で止めたのは宰相で、ミルティアとフォレッド王子を婚約させ、
将来的にはミルティアを女王とする契約を結ぶことでバファル国の存続を願い出た。
ミルティアは想い合っていたカインとの婚約解消に嫌がったが、
カインのいる国を守るためだと説得され、泣く泣く承諾することにした。
確かにミルティアが帝国に帰ってしまえば、
バファル国は王族以外の貴族もすべて廃されてしまうだろう。
小国の貴族にすぎないカインを帝国に連れて行くのも難しい話だった。
契約を承諾した帝国も、少なくともミルティアが女王になるのだから、
立場もあり大事にされていると考えていた。
しかし、皇女亡き後ただ一人で王政を担っていた宰相が過労で急死したことで、
愚かな王族に歯止めをかけるものがいなくなった。
それにあわせるように公爵もつけあがり、愛人だった女と再婚し、
レミアを公爵家の養女にしたのだ。
最初から何も知らされていないフォレッド王子とレミアが暴走し始めるのには、
そう時間はかからなかった。
そしてあの夜会の事件が起きたのだが…
「まぁ、それもそうか。騎士団長を置いていくから、そのうち綺麗になるだろう。
それで、どうする?ミルティア、この国の女王になるか?」
「嫌です。こんな国いりません。お義兄様と一緒に帝国に帰ります。
しばらくは皇女でいなければいけないでしょうけど、
将来的には伯父様の跡を継ごうかと思ってます。」
「ああ、ナジェール公爵家か。そういえば後継ぎいなかったな。
わかった。じゃあ、もう少し騎士団長に指示したら一緒に帰るか。」
「はい。」
「お義姉様!では私も一緒に連れて帰ってください!」
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