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聖女の旅立ち

3.馬車の中

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真っ白な馬車のドアを隊員が開けてくれ、キリルの手を借りて中へと乗り込む。
大きな馬車だとは思っていたけど、中はそれ以上に広く感じた。

「広いね!!馬車の中って普通はこうじゃないよね?」

「うん、普通の馬車とは違うね。
 この馬車は特別に作ってあるものだから。」

馬車の床はふかふかの絨毯が敷かれ、
広い車内の後方に三人掛けのゆったりとしたソファが置かれている。
その手前にはテーブルが備え付けられていた。
天井には小さなシャンデリア、窓際にはランプが並ぶように備え付けられている。

「すごい豪華だね。
 あ、ソファが三人掛けだから美里たちとは別の馬車なの?」

「いや。ソファは置こうと思ったらもっと置けるよ。
 それとは別な理由だね。」

「そうなの?」

馬車の中を見ても二台にしたもう一つの理由はわからないままだった。
とりあえずソファに座ろうとしたら、キリルに止められる。

「まずは、こっちのドアを開けてくれる?」

「ん?ドア?」

入ってきたのとは反対側にあるドアを開けるように言われ、首をかしげてしまった。
さっき馬車に乗ったばかりなのに、一度降りるのだろうか?
疑問だらけだったけれど、私が開けるのをキリルが待っているのがわかり、
仕方なくそのドアを開ける。

開けた先には…馬車の外ではなく、広い部屋があった。

「へ?」

「さ、中に入って。」

後ろからキリルに押され、その部屋に入ると、
そこは王宮の私室と変わらない広さの部屋だった。
三人掛けのソファが向かい合わせで置いてあり、真ん中には大きなテーブル。
壁際にはダイニングテーブルとイスも四脚置かれている。
それでも床は広く、ダンスの練習もできそうな気がするほどだ。

「ええぇぇ!どういうこと!?
 え?馬車の隣が部屋?なんでこうなってるの!?」

「これは馬車の中に異空間の部屋をつけてあるんだ。
 あ、ミサトたちも来たよ。」

「え?」

見てみると私たちが入ってきた扉とは別の扉から、
美里とカインさんが入ってくるところだった。

「うわぁぁ!何これ!!すごい!なんで部屋があるの!?」

やっぱり美里も同じように驚いて、カインさんに説明されていた。
まだ私も驚いているけれど、美里が驚いているのを見てちょっとだけ冷静になる。

「美里~なんだかよくわからないけど、すぐに会えたね。」

「ホントだね。あれ?じゃあ、旅行中はこの部屋で過ごすの?」

この部屋で過ごす?ここにいたままで移動できるの?


「うん、移動中は休憩で止まることも無く進むから。
 なるべく早く瘴気の発生場所に行かなきゃいけないからね。
 この部屋付き馬車で行けば、寝るところも浴室もトイレもある。
 キッチンもあるから、普通に生活していても移動できる。」

「そういうために作られたんだ。
 じゃあ、隊員さんたちの馬車もそうなの?」

「隊員用の馬車はこれほど広くはないけどね。
 休憩室と浴室トイレくらいはついている。
 隊員たちも交代で休みながら移動できるようになっているよ。」

「なるほど~。すごいね、この馬車。」

思ってもいなかった旅の仕方になるらしい。
途中休憩が無いのは少し残念だけど、
この部屋でみんな一緒に過ごしている間に移動できるのなら楽しそう。

「部屋の中、二人で見てきたら?
 他の部屋とかも気になるでしょ。
 俺とキリルで朝ごはんの用意しているよ。」

「「はーい。」」



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