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エピローグ①/後始末

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 戦いは終わった。
 『愚者』アルベロ・ラッシュアウトが『魔帝』シン・アースガルズを討伐。討伐と同時に全ての魔獣の洗脳が解け、残った魔獣が一斉に逃げ出した。
 その数、実に数万……これにより、アースガルズ王国及び周辺各国では、大量の魔獣に悩まされることになる。
 
 二十一人の英雄たちは、王族並び国民を守り抜いた。
 英雄たちには再び『封印』が施され、アースガルズ王国内でしか召喚獣を使用できなくなった。だが、ヨルハが国王ゼノベクトと『約束』をしたらしく、数年後には『封印』が解除されるそうだ。

 この『魔帝大戦』では、大勢の英雄が生まれた。
 その筆頭は、諸悪の根源であるシン・アースガルズを討伐したS級召喚士アルベロ・ラッシュアウト。その戦いは壮絶で、シン・アースガルズは骨も残らなかった・・・・・・・・そうだ・・・
 
 そして、その姉であり『女教皇』の称号を持つエステリーゼ。
 彼女は、召喚士たちを率い、最前線で魔獣を食い止めた英雄としてその名が知れ渡った。
 様々な勲章が授与され、その功績によりラッシュアウト家の爵位が上がり、アースガルズ王国に仕える公爵家としてその名を知らしめた。
 エステリーゼは、史上初の女性貴族として、ラッシュアウト公爵としてその名を轟かせた。

 だが、いいことばかりではない。
 魔帝大戦の隙を狙ったクーデターが勃発した。
 これに加担した王族のヒルクライム、ユウグレナは絞首刑となり、クーデターの首謀者にして『審判』の称号を持つ英雄ガブリエルは、特製の『召喚封じ』を嵌められ、永久幽閉となった。
 このクーデターを解決した王族のヨルハは、功績を認められた。
 そして、兄サンバルトは王位継承権を返上。いち兵士からやり直すと言って訓練に励み、国王ゼノベクトもヨルハに頭が上がらないのか、今や引退間近という。
 ヨルハは、アースガルズ王国の次期女王としての地位を獲得していた。
 ちなみに……ヨルハが女王になった時。英雄たちの『封印』を解くと言ったそうだが、英雄たちはヨルハを支えると全員が頭を垂れたそうだ。

 魔帝シン・アースガルズとの戦いは、人間の勝利で終わった。
 傷ついた召喚士も多く、命を落とした者も多い。だが、終わってみると、あっけなく日常が戻ってくる。
 アースガルズ召喚学園の生徒は、誰一人死ぬことなく生き延びた。
 学園は一週間の休みとなり、なんの問題もなく再開された。
 何人かの女子生徒は、校長のメテオールに熱い視線を送っていたとも……。

 そして、S級召喚士たちも、日常を取り戻していた。

 ◇◇◇◇◇◇

 S級召喚士の校舎では、いつも通り授業が行われていた。
 教師はグレイ。先の大戦では、アースガルズ王国を丸ごと召喚獣『オリハルコン』で覆い、国民たちを守った英雄の一人だ。

「では、ここまで。宿題をちゃーんとやってくるように」
「起立! お疲れ様でした!」

 アーシェの号令で、全員が起立して礼をする。
 ラピスは教科書をしまいながら言った。

「今日はこれからどうしますか?」
「あ、そういえばさ、新しいカフェが地下にできたみたいなの。みんなで行かない?」
「いいね。アタシ、甘いの食べたい」
「甘いのと聞いたら、わたしも参加しないとね」

 アーシェが提案、リデルとヨルハが食いついた。
 すると、リデルの足に小さな赤毛のトラがすり寄る。

『うちも行くぞ! 腹へったー!』
「はいはい。よっと……このモフモフめ」

 レイヴィニアは、人型に戻らず、子犬サイズの赤毛トラとして飼われていた。
 同様に、灰毛のナマケモノことニスロクもだ。ニスロクは椅子の上にクッションを置いてスヤスヤ寝ている……この姿になってから、本当に怠けまくっていた。
 アーシェがニスロクを抱っこする。

「ん~……かわいい。もふもふだねぇ」
『んん~……くぁぁ、眠いぃぃ』
「寝てていいわよ。その代わりモフるから!」
「ふふ。アーシェってばモフモフ大好きです」

 ラピスはクスっと笑い……カバンに教科書を詰めるアルベロを見た。

「アルベロ、一緒にカフェに行きませんか?」
「ん、あー……悪いな。今日はキッドと飲みに行くんだ。あまり甘い物入れておくと」
「むぅ……私ももうすぐ十六歳です。その時は一緒に行きますからね!」
「あ、あたしも!」
「アタシも。ね、キッド」

 リデルが言うと、ぺらっぺらの何も入っていないカバンを肩掛けしたキッドが言う。会話に加わる気がないのか、さっさと立ち上がり教室を出ようとしていた。

「だったら、リデルは来いよ。このお子ちゃまと一緒に、酒の飲み方を教えてやる」
「おいこら、誰がお子ちゃまだ誰が」
「は、テキーラの一杯で失神するガキは誰だったかな?」
「……っぐ」

 アルベロは、十六歳になり飲酒できる年齢になった。
 キッドに連れられ、大人のバーで酒を飲んだのだが……初めて飲んだ酒は度数の高いテキーラで、キッドに挑発され一気飲みして失神したのだ。同席していたアルノーに背負われ、寮まで運んでもらったことはつい最近のように感じる。
 
「アタシは遠慮しとく。それとアルベロ、飲むなら度数の低いフルーツ系のカクテルにすること!」
「はいよ。そうするわ」
「ッチ……今日もこいつの醜態を見れると思ったんだがな」

 キッドはニヤリと笑って教室を出ようとして、アルベロに言った。

「おい。婚約者様・・・・のお誘いのが大事だろ。今日はそっちに付き合いな」

 そう言って、キッドは教室を出て行った。恐らく、アルノーを誘って飲むのだろう。最近はここにヴィーナス、ダモクレスなどがよく混ざっているようだ。
 婚約者と言われ、アルベロとラピスは赤面した。

 ◇◇◇◇◇◇

 アルベロは、ラピスと婚約した。
 この世界を救った英雄であるアルベロ。公爵家の令嬢が嫁ぐのにこれ以上ない相手だった。
 さらに、アルベロが治める『イザヴェル領地』に、移住希望が殺到しているらしい。まだアルベロは何もしていないのに、バーソロミューとユイシスから愚痴のような手紙が届いた。

「ふふ、アルベロってば照れてるし。それと、ラピスだけじゃないからね」
「わ、わかってるよ」

 アーシェが、アルベロの腕に抱きついた。
 そう。アーシェもアルベロと婚約した。
 体裁面でラピスが正妻という扱いになっている。ラピスが正妻、アーシェが側室という立場だが、二人にとってそんな些細なことはどうでもよかった。
 さらに、ヨルハ。

「アルベロ、わたしとの約束も果たしてもらうわよ」
「お前が一番生々しいんだよな……」

 ヨルハは、アルベロと子供を作る約束をした(ほぼ一方的だったが)
 サンバルトが王位継承権を放棄したおかげで、アースガルズ王国次期女王の座は確定したヨルハ。
 ヨルハが王位を継ぐのは二十歳。現在十六歳なので、四年後だ。
 その四年の間に、ヨルハはアルベロと子を作り産む。
 ヨルハは、女王として即位した場合、伴侶は取らず養子を取ることにしている。その養子に、アルベロとヨルハの子を指名するつもりだった。
 表向きは生涯独身。だが、実際には愛する男との子を作る。
 平穏な暮らしを求めるアルベロには、王族のしきたりや面倒ごとに関わってほしくない。それに、生涯独身といった方がヨルハ的にも楽だ。
 行為こそまだしていないが、ヨルハはすでに準備完了・・・・している。そうアルベロに伝えていた。
 アルベロは、カバンを持って立ち上がる。

「さーて。それじゃ、うまいケーキでも食べに行くか!」

 S級召喚士たちの学園生活は、続いていく。
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