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3.食いしん坊な本の虫
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「先生、どうして魔石に比べて魔木は魔力量が極端に少ないのでしょうか。魔木は薬草よりも大きいのに魔力量が低いこともあるなんて変だと思いません?それに、魔木の枝はほとんど使われることなく破棄されますし」
「魔木の魔力というのは、サービエの実やティクチョルの葉など、木の果実、葉などから取れる魔力のことよね?体積から考えると、確かに魔力量が少なく感じるけれど、魔力を、枝や幹の成長に使っていると考えたら、どうかしら?それに、葉や実の数は、一つの薬草から取れる葉や実よりも数が多いでしょう。総数では、」
この言葉を待っていたとばかりに、シエルは、胸元から一枚の紙を引っ張り出して、机に叩きつけた。
「えぇ、先生。その、総数でも、なんです。私の実験結果と、」
最後に見つけた本を捲り、表を指で示す。
「この本の、ここの表を見てください。これは病気になった薬草と魔木の治療における経過観察の一環として魔力量を計測したものです。例えば薬草の中でも魔力量が多いシルフィウムは、魔力量500。対して、葉の数が多い魔木のトラーニは、葉の部分が1で枚数が約200、つまり200、葉以外の部分は、枝と幹が約100、根は約50、総魔力量は、350。少なすぎません?葉の枚数が時期によって増えて250としても、100の開きがあるんですよ」
「そうねぇ、あなたの実験は、まず、魔石、薬草、魔木を同じ量用意して、魔力量を測ったものね。魔木は、各部位だけの実験結果もある・・・・・・。ふむ、次の、魔力使用効率っていうのは?」
カレーム先生の表情は、変化はほとんど無いが、微かに眉間にシワが寄っている。
「魔力使用効率というのは、薬草、魔石、魔木から魔力を使う時の使いやすさです。薬草は魔力を流すことも使うことも容易です。魔石は一般的に魔力を取り出して使いますが、魔力を流すことも出来ますよね?一方、魔木はーー特に枝は、適切に採取して処理しないと魔力を取り出せない上に、なぜか魔力が流れにくいんです」
じっと紙を見つめていたカレーム先生が、シエルに手で待つよう合図した。
カレーム先生が考えをまとめてる間に、シエルはダリオルのおかわりを頂くことにした。
家では甘い物なんて滅多に食べれないので、貴重な甘味を堪能できるなんて本当に幸せで、ついつい手が伸びてしまう。
しかも、私の好みに合わせたほろ苦いカカオ生地にスイートチョコレートのクリームのダリオルもあって、もう誘惑に完敗である。
(うぅ、なんて美味しいのでしょう。)
四つめのダリオルに手を伸ばした所で、カレーム先生が一瞥をくれる。
「シエル、がっつき過ぎよ。サミュエルと変わらない品の無さよ」
「み、見てたんですね・・・・・・。サミュエルと!?そこまではしたなかったとは」
育ち盛りの男の子と同程度と評されては、さすがに貴族女性としての矜持が傷つく。
慌てて手を引っ込め背筋をピシッと伸ばし姿勢を整える。おそらく頃合だ。
カレーム先生は緩慢な動作で紙を机に置いて、私の目を見つめた。
「シエル、貴方の考えはよく分かったわ。でも、何のために魔木と魔石の魔力量の差を調べたのかしら?」
空間魔術は諦めたのかと挑むような表情を浮かべる先生は、どこか悲しげだった。
「魔木の魔力というのは、サービエの実やティクチョルの葉など、木の果実、葉などから取れる魔力のことよね?体積から考えると、確かに魔力量が少なく感じるけれど、魔力を、枝や幹の成長に使っていると考えたら、どうかしら?それに、葉や実の数は、一つの薬草から取れる葉や実よりも数が多いでしょう。総数では、」
この言葉を待っていたとばかりに、シエルは、胸元から一枚の紙を引っ張り出して、机に叩きつけた。
「えぇ、先生。その、総数でも、なんです。私の実験結果と、」
最後に見つけた本を捲り、表を指で示す。
「この本の、ここの表を見てください。これは病気になった薬草と魔木の治療における経過観察の一環として魔力量を計測したものです。例えば薬草の中でも魔力量が多いシルフィウムは、魔力量500。対して、葉の数が多い魔木のトラーニは、葉の部分が1で枚数が約200、つまり200、葉以外の部分は、枝と幹が約100、根は約50、総魔力量は、350。少なすぎません?葉の枚数が時期によって増えて250としても、100の開きがあるんですよ」
「そうねぇ、あなたの実験は、まず、魔石、薬草、魔木を同じ量用意して、魔力量を測ったものね。魔木は、各部位だけの実験結果もある・・・・・・。ふむ、次の、魔力使用効率っていうのは?」
カレーム先生の表情は、変化はほとんど無いが、微かに眉間にシワが寄っている。
「魔力使用効率というのは、薬草、魔石、魔木から魔力を使う時の使いやすさです。薬草は魔力を流すことも使うことも容易です。魔石は一般的に魔力を取り出して使いますが、魔力を流すことも出来ますよね?一方、魔木はーー特に枝は、適切に採取して処理しないと魔力を取り出せない上に、なぜか魔力が流れにくいんです」
じっと紙を見つめていたカレーム先生が、シエルに手で待つよう合図した。
カレーム先生が考えをまとめてる間に、シエルはダリオルのおかわりを頂くことにした。
家では甘い物なんて滅多に食べれないので、貴重な甘味を堪能できるなんて本当に幸せで、ついつい手が伸びてしまう。
しかも、私の好みに合わせたほろ苦いカカオ生地にスイートチョコレートのクリームのダリオルもあって、もう誘惑に完敗である。
(うぅ、なんて美味しいのでしょう。)
四つめのダリオルに手を伸ばした所で、カレーム先生が一瞥をくれる。
「シエル、がっつき過ぎよ。サミュエルと変わらない品の無さよ」
「み、見てたんですね・・・・・・。サミュエルと!?そこまではしたなかったとは」
育ち盛りの男の子と同程度と評されては、さすがに貴族女性としての矜持が傷つく。
慌てて手を引っ込め背筋をピシッと伸ばし姿勢を整える。おそらく頃合だ。
カレーム先生は緩慢な動作で紙を机に置いて、私の目を見つめた。
「シエル、貴方の考えはよく分かったわ。でも、何のために魔木と魔石の魔力量の差を調べたのかしら?」
空間魔術は諦めたのかと挑むような表情を浮かべる先生は、どこか悲しげだった。
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