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「ああああの、私、殿下と結婚は無理です!」

とにかく驚いている場合でもないと思いきって本題に戻って断ってみればさっきまで笑みを見せていた第二王子殿下が噂通りの無表情となり、不動の王子となっていた。怒らせただろうかと自分の手が震えるのがわかる。

ちなみに残念ながら逃げられない。彼はここに来ても私の手を離さず隣に座っているから。それでも話がズレてきてこれ以上そのまま話していればいらぬことを知り逃げられない気がして思いきってみたのだけど………まずかったかもしれない。

「む、無理か……しかし、私たち王族の教訓は惚れたものを逃がさないとある」

「へ?」

と思ったのに意外に怒った口調ではないことにほっとするのも束の間、おかしな教訓にぽかんと間抜け面になる。何その恐ろしい教訓。

「だから既に結婚の手続きは信用できるものに任せて私たちは籍を既に入れている。それにその指輪は生涯外せないしな」

まさかのもう既に逃げ道は断たれていた。いや、でも本当に指輪は外せないのか……会場でも聞いたとはいえ、冗談だとばかり……うん、冗談だと思いたかっただけかもしれない。いや、それよりも籍入れはいつの間に?第二王子殿下が何かを指示する素振りはなかったけど……。

ただでさえ婚約破棄されそうになったというか、結局私からしたことになったみたいだけど、それは今日のことだというのに。

「いつ、手続きを?」

「貴女に惚れた三年前からだな」

三年前の私何したんだろう……。というか、まだ婚約してたときに手続きは通るものなんだろうか?

「いや、普通手続き申請できませんよね?」

「ああ、だからユリの婚約が白紙になったときにはすぐに私にユリの籍を入れるように王命で指示してあった。後はそれを如何に早く伝えるかだけだったから問題はない」

「………そうですか」

問題しかないの間違いじゃないだろうか。王命だなんてどのみち私の意見は通されなかったわけである。救いなのは私への好意がダメンズと違い一途なことだろうか。

非常に重いけれど。なんならダメンズとは真逆すぎる。二人足して二で割ればいい感じじゃないかな、うん。

「あの、せめて少し考える時間を……」

「? 大丈夫だ。ユリは何も考えなくていい。ただ私の隣にいて幸せであればいいのだから考えるのは疲れるだろう?ユリを支えると決めた。考えれば疲れるだけ……ならばユリの代わりに私がいくらでも頭を使おう」

「え、いや……」

貴方の頭は色んな意味で不安で仕方ないです……とは口が裂けても言えるはずがなかった。もはや思考すら封じようとする殿下に私はどうすればいいですか?
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