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それはまだアラビアンとして生まれる前の神様とのこと。

【神代安、貴女にお願いがあります】

ふよふよと浮く神代安の欠けた魂だけだったとき。本来なら転生するはずが、神様は私だけを転生の輪廻から外した。

【神の代行者としての特別な魂を持つ貴女だからこそできることです。転生を拒み下界へ逃げた魂がいます。まだ幼い魂のせいで魂の力が有り余ってるのもあり、自分の転生先を理解したとたん輪廻から外れ、さらに厄介な時期の世界へと行ったようで……あれが一緒になると後が大変です。すぐに逃げ出した魂を回収しなくてはなりません。それを貴女に頼みたいのです】

もちろん急に言われたことに私は戸惑った。特別な魂と言われても魂だけとなる前の私は、平凡な一般人だったから。死に方も納得いかない死に方だったし。特別を感じる部分がない。

そんな私の気持ちを感じ取ってか、神様はくすりと笑った。笑うところはなかったはずだが。

【生まれてすぐ、あなたがママとパパねと初めての言葉を言って周囲を驚かせ、ハイハイから掴まり立ちから歩きを覚える速度が早いかと思えば、宙返り、側転まで教えずとも覚えた天才幼児。その後、絵から、習字からあらゆるものに受賞し、天才小学生と言われ、中学では画期的な医薬を作り、またしても話題に。まあ他にも色々ありますが、正直誰も貴女を平凡とは言わないでしょう】

ちょっと有名になった自覚はあるけど、贅沢とかはしなかったし、芸人になったわけでもないし、美人というわけでもないし、普通だと思うのだけど。

【まあとにかく貴女は普通ではありません】

納得いかない私に言い聞かせるように神様が言った。

【そういうわけで魂の回収をお願いします】

そう言われたとたん、魂にふつふつと力がわいてきた。その神様の言葉に反応するように。そして何を勝手なと思いながらもその力がわきあがってきたとたん、ああ、これは私の使命、全うしなければ。

そんな風に気がつけば思っていた。神様が何かをしたというより魂に刻まれた何かが反応し、復活したような、忘れられた忠誠心を思い出した感覚。

【いい子ですね。ちゃんと主を思い出せてよかったです】

神様に褒められ、喜ぶ自分の魂。ああ、私はこの方の願いをすぐにでも叶えたい。そんな気分にさせられた。

【急ぎではありますが、準備はなさい。時間はまだあります。まずは下界に慣れ、回収の時を待つのです。本来回収すべき魂と融合するはずだった魂と、転生するはずだった身体を使えば、自然と幼き魂は引き寄せられるでしょう。この子はアラビアン、貴女とは魂の質が違うので人格形成がひとつの身体にふたつとなるかと思いますが、どちらも半分の魂なのでどちらかが追い出される心配はありません。うまくやるのですよ】

そうして私は神様によりアラビアンと互いを補うあう魂となり、今の世界に転生を果たした。


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