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第367話 馬のエサ

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 帰り道、来た時とは違う道を通った。
 視界の一面は緑、牧場の牧草だ。

 馬、牛、豚を中心に扱ってるようだ。
 牧草地の牧場で豚は珍しい気がする。

 少し異臭のする馬小屋に差し掛かった時だ。

 ──!!

 ────!!

「ユキマサ君、どうしたの?」

(あれは──間違いない!)

 少しばかり目を見開く俺は見逃さなかった。
 日本人なら誰もが知るあの存在を。

じゃんッ!!」

 気づくと俺は藁に包まれた馬のエサにダイブを決め込んでしまっていた。

「うぉ、納豆だ! 納豆があるぞ!」

 この匂いと粘りけ、間違いない納豆だ。
 俺は少しばかり馬から納豆を拝借し口に運ぶ。

 うん、納豆。醤油とからしが欲しいぜ!
 ちなみに醤油では無く青じそドレッシングをかけて食べるのが俺と親父のお勧めの食べ方だったりする。

(いやー、馬のエサ、盲点だったな!)

 良く覚えてないが、確か──今は昔、馬のエサを藁で包んで偶然にできたのが納豆じゃなかったか?

 馬のエサにダイブし、馬からエサを強奪して食って喜んでいる俺に女子二人の反応はと言うと──

「「……」」

 ドン引きであった。

「ユキマサ君、何やってるの?」
「ユキマサさん、馬のエサは私でも食べませんよ」

 それでもクレハは『何か理由があるのかな?』みたいな聞き方で、対するシナノはドン引き、ひたすらに引いていた。クレハの優しさが目に染みるぜ。

「う……私にはお肉を奢ってくれ、自分は馬のエサを食べるなんて、スゴいです。人間の鏡、いえ神様ですか? 感激しました。私、感無量です……!」

 結構ガチにシナノは泣きはじめる。
 いや、そういうワケじゃないんだ。
 あと、神様はアルテナだ。俺じゃない。

「て、美味いんだよ。これ! 納豆! 発酵食品なの。白米やパスタにかけたりして食べるんだよ!」

「「……」」

「論より証拠だ、食ってみろ!「」」
「え?」
「えー……」

 小皿に更に納豆を拝借し、クレハとシナノに〝アイテムストレージ〟から取り出した醤油を適量かけて納豆と何かの為にストックしてた炊いたごはんを渡す。

 本当に〝アイテムストレージ〟便利だな。
 こんな道端でも納豆ごはんが作れるんだから。
 食器も仕舞ってあるから、そこら辺も困らないし。

「は、白米様になんて事を……」
「私、食べてみる」
「流石はクレハだ。あ、不味い時は不味いって言ってくれよ? 好き嫌いが別れやすい食べ物だからな。あ、よく混ぜろよ? その方が美味いから」

 そして、いざ、実食! と、ばかりにクレハは覚悟を決め、一口をゆっくりと食べる。

「──!! あ、美味しい……! でも、粘いかも」
「まあ、粘りが醍醐味だからな。納豆は」
「でも、美味しいよ。私、これならまた食べたい」
「お、嬉しいこと言ってくれるな。じゃあ今度探して朝食でみそ汁と一緒に食おうぜ?」
「うん、楽しみ!」

「あのー、バカップルさん? 私まだ食べてないんですけど? 話、終わらさないで貰えますか?」

 冷ややかなシナノの声が俺達を直撃した。
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