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Chapter.3 分かっているつもり
Act.3-01
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駅を出てから十分以上歩くと、いわゆる飲み屋街が見えてくる。そこにはチェーン店から個人経営している居酒屋まであり、ちょっとした軽食店やラーメン屋もある。
そんな数ある居酒屋の中で、高遠さんは個人経営の居酒屋を選んだ。私が七緒や佳奈子と飲みに出ると必ずチェーン店になるから、個人のお店は初めてでちょっと緊張する。
中に入ると、外とは対照的な熱気がムンと伝わってくる。外観が渋めだったから客層は年配の人が多いのでは、なんて思って身構えたけれど、意外と私と同世代と思われる人もいて、内心ホッとした。
高遠さんは慣れた感じで、奥の方まで歩いてゆく。そして、目的のテーブルに着くと、私に座るように促してきた。
私はコートを脱ぎ、隣の空いている椅子にコートをかけてバッグを置く。
高遠さんも同様にコートを脱いで、隣にかけていた。
「ここ、魚がウリの店なんだけど、大丈夫?」
落ち着くなり、高遠さんが私に訊ねてきた。さっき、魚は好きだと言ったけれど、それでも心配なようだ。
当然、私は、「はい」と頷いた。
「お魚なら何でも食べれます。光ものも平気ですから大丈夫ですよ?」
「そっか。じゃあ、俺が適当に注文しても大丈夫かな?」
「大丈夫です。高遠さんにお任せします」
「分かった」
高遠さんは頷き、目が合った若い男性店員さんを呼んだ。
「ビールの大瓶ひとつ。それから刺身の三種盛りとトマトサラダ。あと、今日のお勧めとかあるかな?」
高遠さんに訊かれた若い店員さんは、伝票とペンを握り締めながら、「そうですねえ」と少し考え込む。私とトシがそれほど変わらない人にそれは無理難題では、と思ったけれど、店員さんはわりとすぐに答えてきた。
「今日はいいブリが入っています。お刺身でもいいですし、ブリしゃぶも美味しいと思います。ブリ大根も味が染みてていいですよ」
高遠さんは店員さんから私に視線を移してきた。
「どうする? ブリ食べたい?」
私に判断を委ねてくる。さすがにここで、何でもいい、なんて失礼なことは言ってはいけない気がする。
「ブリ大根、気になります」
正直に告げた。ブリの刺身もしゃぶしゃぶもいいけれど、味が染みているというブリ大根が一番魅力的に感じた。
高遠さんは笑顔で頷き、「じゃあ、ブリ大根も」と店員さんに伝えた。
「とりあえず、それだけお願いするよ」
「ありがとうございます。お待ち下さい!」
若い店員さんは威勢のいい挨拶をすると、すぐに踵を返して注文を伝えに行った。
それからほどなくして、先にビールとコップをふたつ持って来た。
「ビール大です。お待たせしました!」
若い店員さんは私達の前で瓶ビールの栓を抜くと、それぞれのコップに注いでくれた。相当練習したのか、泡と琥珀色の液体の割合がちょうど良く入れられている。
「では、ごゆっくりどうぞ」
また、そそくさと持ち場へと戻ってゆくも、別の所からも呼ばれ、本当に忙しそうだ。
そんな数ある居酒屋の中で、高遠さんは個人経営の居酒屋を選んだ。私が七緒や佳奈子と飲みに出ると必ずチェーン店になるから、個人のお店は初めてでちょっと緊張する。
中に入ると、外とは対照的な熱気がムンと伝わってくる。外観が渋めだったから客層は年配の人が多いのでは、なんて思って身構えたけれど、意外と私と同世代と思われる人もいて、内心ホッとした。
高遠さんは慣れた感じで、奥の方まで歩いてゆく。そして、目的のテーブルに着くと、私に座るように促してきた。
私はコートを脱ぎ、隣の空いている椅子にコートをかけてバッグを置く。
高遠さんも同様にコートを脱いで、隣にかけていた。
「ここ、魚がウリの店なんだけど、大丈夫?」
落ち着くなり、高遠さんが私に訊ねてきた。さっき、魚は好きだと言ったけれど、それでも心配なようだ。
当然、私は、「はい」と頷いた。
「お魚なら何でも食べれます。光ものも平気ですから大丈夫ですよ?」
「そっか。じゃあ、俺が適当に注文しても大丈夫かな?」
「大丈夫です。高遠さんにお任せします」
「分かった」
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「ビールの大瓶ひとつ。それから刺身の三種盛りとトマトサラダ。あと、今日のお勧めとかあるかな?」
高遠さんに訊かれた若い店員さんは、伝票とペンを握り締めながら、「そうですねえ」と少し考え込む。私とトシがそれほど変わらない人にそれは無理難題では、と思ったけれど、店員さんはわりとすぐに答えてきた。
「今日はいいブリが入っています。お刺身でもいいですし、ブリしゃぶも美味しいと思います。ブリ大根も味が染みてていいですよ」
高遠さんは店員さんから私に視線を移してきた。
「どうする? ブリ食べたい?」
私に判断を委ねてくる。さすがにここで、何でもいい、なんて失礼なことは言ってはいけない気がする。
「ブリ大根、気になります」
正直に告げた。ブリの刺身もしゃぶしゃぶもいいけれど、味が染みているというブリ大根が一番魅力的に感じた。
高遠さんは笑顔で頷き、「じゃあ、ブリ大根も」と店員さんに伝えた。
「とりあえず、それだけお願いするよ」
「ありがとうございます。お待ち下さい!」
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